家族信託の費用はいくら?|設計・契約・登記・税金まで総額の目安

家族信託の費用は「どの段階で」かかるか

家族信託(民事信託)を設計・開始する際には、複数の段階でそれぞれ異なる費用が発生します。「設計の専門家費用」「公証人手数料」「不動産の信託登記費用」「税務申告費用」——これらを合計した「総額」を把握しないまま手続きを進めると、想定外の出費になることがあります。

費用は大きく分けて「初期費用(一度だけかかるもの)」と「ランニングコスト(継続的にかかるもの)」の2種類に分類されます。この記事では、それぞれの費用の内訳・目安・節約のポイントを整理します。

💡 この記事でわかること:
専門家費用・公正証書作成費用・信託登記費用・信託口口座の費用・税金の問題・ランニングコスト、そして財産規模別のシミュレーション・任意後見・遺言書との比較まで網羅しています。

費用の全体像:総額の目安

家族信託の初期費用の総額目安は、財産規模によって大きく異なります。以下は概算の目安です。

家族信託の初期費用(総額)目安
50万円〜150万円程度
信託財産の規模・不動産の有無・専門家の報酬設定により大きく変わります
不動産なし・比較的シンプルなケースで50〜80万円前後が目安
① 専門家費用 設計・コンサル・書類作成
最も大きな費用項目 30〜100万円程度 財産規模・複雑さによる
② 公証人手数料 公正証書作成
信託財産額で算出 3〜10万円程度 法定の料金表あり
③ 登記費用 信託登記・不動産
不動産がある場合のみ 5〜30万円程度 固定資産税評価額による
④ その他 口座・税務・実費
信託口口座・戸籍等 1〜5万円程度 金融機関による
費用項目 目安金額 必要なケース
専門家費用
(コンサル・書類作成)
30〜100万円 ほぼ全てのケース(専門家に依頼する場合)
公正証書作成
(公証人手数料)
3〜10万円 公正証書にする場合(強く推奨)
信託登記費用
(司法書士報酬+登録免許税)
10〜30万円 不動産を信託財産にする場合
信託口口座開設 無料〜数万円 金銭を信託財産にする場合
税務申告費用
(税理士)
3〜15万円/年 信託財産から収益が発生する場合(毎年)
実費(戸籍・住民票等) 数千〜数万円 書類収集のための費用

①専門家(設計・コンサルティング)費用

家族信託の費用の中で最も高額になるのが専門家への報酬です。信託契約書の設計・作成から公証人との調整・金融機関との折衝まで、幅広い業務を担います。

依頼できる専門家の種類

専門家の種類 主な業務範囲 報酬の目安
行政書士 信託契約書の設計・作成、コンサルティング、公正証書手続きの補助 30〜70万円程度
(財産規模・複雑さによる)
司法書士 信託契約書の作成+信託登記(不動産)。登記まで一括依頼できる 40〜100万円程度
(登記費用含む)
弁護士 紛争リスクが高い・複雑な家族関係のケースに対応 50〜150万円程度
税理士 節税面の設計・信託税務の確認(税務申告を含む継続的な関与) 設計費+毎年の申告費用

報酬の計算方式

専門家の報酬には主に2種類の計算方式があります。

📊 信託財産額の一定割合(定率制):
信託財産(現金・不動産等の評価額合計)の0.5〜1.0%程度を報酬とする方式。財産が多いほど高額になる。例:信託財産5,000万円 × 1% = 50万円

📋 業務内容による固定額(定額制):
契約書作成・コンサルティング・公証人対応などの業務ごとに固定額で設定する方式。財産規模に関わらず一定額。例:基本報酬30万円+不動産対応10万円など
⚠️ 「格安」をうたう事務所には注意が必要です。
家族信託は設計が複雑で、不完全な契約書は後日深刻なトラブルの原因になります。費用だけで選ばず、「家族信託の実績が豊富か」「税理士・司法書士と連携しているか」を確認することが重要です。

②公正証書作成費用(公証人手数料)

信託契約書を公正証書として作成することを強く推奨します。費用はかかりますが、後日「契約が無効」とされるリスクを大幅に低減できます。

公証人手数料の計算方法

公証人手数料は信託財産の評価額に応じて法令で定められています。

信託財産の評価額 公証人手数料の目安
〜100万円以下 5,000円
100万円超〜200万円以下 7,000円
200万円超〜500万円以下 11,000円
500万円超〜1,000万円以下 17,000円
1,000万円超〜3,000万円以下 23,000円
3,000万円超〜5,000万円以下 29,000円
5,000万円超〜1億円以下 43,000円
1億円超〜3億円以下 43,000円+超過分5,000万円ごとに13,000円加算
実際の費用の目安(その他の加算あり):
上記の基本手数料に加え、公正証書の枚数に応じた加算(1枚250円)・正本謄本の作成費用等が加わります。一般的な家族信託の公正証書作成にかかる総額は3〜10万円程度が目安です。
なぜ公正証書が推奨されるのか:
公正証書にすることで、①公証人による本人確認・意思確認の記録が残る、②成立の証明力が高く後日「無効」を主張されにくい、③原本が公証役場に保管され紛失リスクなし、という3つの大きなメリットがあります。数万円のコストで将来のトラブルリスクを大幅に下げられます。

③不動産がある場合の登記費用

信託財産に不動産(自宅・収益物件等)が含まれる場合、信託登記が必要です。これにより登記費用が大きく膨らみます。

信託登記にかかる費用の内訳

費用の種類 計算方法・目安
登録免許税
(所有権移転)
固定資産税評価額 × 0.4%
(信託による所有権移転は通常の2%より低い税率)
例:評価額2,000万円 × 0.4% = 8万円
登録免許税
(信託の登記)
土地:固定資産税評価額 × 0.3%
建物:固定資産税評価額 × 0.4%
(令和8年3月31日まで土地は0.3%の軽減税率)
司法書士報酬 信託登記の申請代行費用。5〜20万円程度(物件数・評価額・複雑さによる)
💡 登記費用の具体例:
固定資産税評価額3,000万円の自宅1棟を信託した場合の登録免許税の概算:
所有権移転:3,000万円 × 0.4% = 12万円
信託登記(建物):3,000万円 × 0.4% = 12万円
司法書士報酬:10〜15万円程度
合計:34〜39万円程度(不動産の評価額・件数により大きく変動)
⚠️ 信託終了時にも登記費用がかかります。
家族信託が終了する際(委託者の死亡等)には、帰属権利者への所有権移転登記が必要になります。終了時の登録免許税は通常の相続と同様に固定資産税評価額の0.4%です。設計時に終了後の登記コストも含めて総合的に検討してください。

④信託口口座の開設費用

金銭(預貯金)を信託財産として管理するためには、「信託口口座」(しんたくぐちこうざ)の開設が必要です。受託者名義ではなく「○○信託口」という形で管理されるため、受託者の個人財産と明確に分別できます。

信託口口座とは:
正式名称は「委託者○○ 受託者△△ 信託口」という形の口座。受託者の個人財産と分別して管理でき、受託者が破産しても信託財産が守られるという重要な機能があります。

費用の目安:
・開設費用:多くの金融機関で無料(一部で数万円かかるケースあり)
・維持費用:通常の口座管理料と同等(月数百円程度、または無料)
・ただし信託口口座を取り扱う金融機関は限られており、事前に取引銀行が対応しているか確認が必要
⚠️ 「信託専用口座」と「信託口口座」は別物です。
一部の銀行では「信託専用口座」として受託者の名義口座を別に作るだけの対応をしています。これは法的な「信託口口座」とは異なり、分別管理の保護が受けられない可能性があります。専門家に対応可能な金融機関を確認してもらうことが重要です。

⑤税金・課税の問題

家族信託を設定する際には、いくつかの税金上の論点を事前に確認しておく必要があります。設計を誤ると予期しない課税が発生することがあります。

信託設定時の課税

課税の種類 内容・注意点
贈与税
(受益権の移転)
委託者≠受益者の場合(例:親が信託し、子が受益者となる場合)、受益権の価値に対して贈与税が課税される可能性がある。親が委託者かつ受益者であれば課税は生じない
不動産取得税 信託のための所有権移転は原則として非課税(委託者が受益者の場合)。信託終了時の帰属も要件次第で非課税になるケースがある
登録免許税 Section 4の通り。信託登記には通常より低い税率が適用される場合がある

信託継続中・終了時の課税

場面 税務上の取り扱い
信託財産から
収益が発生した場合
受益者が所得として申告する必要がある(不動産収益・利子等)。受益者が申告できない場合(高齢・認知症等)でも、代理申告または税理士への委任が必要
委託者(受益者)
の死亡時
信託財産は受益者の相続財産として扱われ、相続税の課税対象となる。信託を使っても相続税は原則として回避できない
帰属権利者への
財産移転時
遺言代用信託の場合、帰属権利者への財産移転は相続税または遺贈として課税される(みなし相続財産)
💡 「家族信託で相続税が減る」は原則誤りです:
家族信託は財産の「管理・承継の方法」を決める仕組みであり、相続税の節税手段ではありません。相続税の課税ベースは原則として変わりません。節税目的で家族信託を勧められた場合は、税理士に必ず確認してください。

⑥信託継続中にかかるランニングコスト

家族信託は初期費用だけでなく、信託が継続している間にも費用が発生する場合があります。特に不動産からの収益がある場合は税務上の申告が毎年必要です。

費用の種類 目安 発生するケース
税理士への税務申告費用 年間3〜15万円程度 信託財産から収益が発生している場合(不動産賃貸等)。毎年確定申告が必要
信託監督人・
受益者代理人への報酬
月1〜3万円程度(専門家の場合) 受益者の判断能力が低下した際などに専門家を選任する場合
信託口口座の
維持管理費用
月数百円〜無料 金融機関による(ほぼ発生しない)
信託変更・
終了時の専門家費用
5〜30万円程度 信託内容を変更する場合・信託を終了させる場合
受託者(家族)に報酬が発生する場合もあります:
信託契約で受託者の報酬を定めることができます。ただし受託者(子等)が親族であれば無報酬とすることが多く、その場合はランニングコストを大幅に抑えられます。受託者報酬を設定する場合は、課税関係(所得税等)についても専門家に確認してください。

ケース別:総費用のシミュレーション

実際の費用感をつかんでもらうために、代表的な3つのケースでシミュレーションを示します。

📋 ケースA:現金のみを信託(シンプルなケース) 目安:40〜60万円

信託財産:現金2,000万円のみ。不動産なし。家族関係がシンプル(配偶者+子1〜2人)

費用項目 目安金額
専門家費用(行政書士・コンサル) 30〜40万円
公正証書作成(公証人手数料) 3〜5万円
信託口口座開設 ほぼ無料
実費(戸籍・住民票等) 1〜2万円
初期費用合計(目安) 34〜47万円程度
📋 ケースB:自宅不動産+現金を信託(標準的なケース) 目安:70〜120万円

信託財産:自宅(固定資産税評価額2,000万円)+現金1,000万円。委託者は親、受託者は子。

費用項目 目安金額
専門家費用(行政書士+司法書士連携) 50〜70万円
公正証書作成 3〜5万円
信託登記(登録免許税) 約12万円(評価額2,000万×0.4%×土地建物)
信託登記(司法書士報酬) 8〜15万円
実費・その他 1〜3万円
初期費用合計(目安) 74〜105万円程度
📋 ケースC:収益不動産複数棟+現金を信託(大規模なケース) 目安:150万円〜

信託財産:収益不動産2棟(評価額合計8,000万円)+現金3,000万円。複雑な家族関係あり。

費用項目 目安金額
専門家費用(行政書士・税理士・司法書士) 80〜120万円
公正証書作成 5〜8万円
信託登記(登録免許税) 約32万円(8,000万×0.4%)
信託登記(司法書士報酬) 15〜25万円
税理士:税務設計・申告 設計10〜20万円+年間申告費用
初期費用合計(目安) 142〜205万円程度

費用を抑えるためのポイント

家族信託の費用は抑えすぎると設計品質が下がるリスクがありますが、無駄なコストを省く工夫はできます。

  • 行政書士+司法書士が連携している事務所を選ぶ:設計から登記まで一括依頼することで、別々に依頼するより割安になる場合がある
  • 信託財産の範囲を必要最小限に絞る:全財産を信託する必要はなく、管理が必要な財産のみを信託することで費用を抑えられる
  • シンプルな信託設計にする:受益者連続型・信託監督人の設置等、複雑な設計は費用を押し上げる。必要性を専門家と丁寧に検討する
  • 受託者報酬は無報酬(または最小限)に設定する:家族が受託者の場合は無報酬とすることで毎年のランニングコストをゼロにできる
  • 早めに始める:委託者の判断能力が低下してからでは設計できない。元気なうちに動くことで選択肢が広がり、焦った費用支出を避けられる
⚠️ 「自分で作れる」という情報に注意:
インターネット上には「信託契約書のひな形」が公開されていますが、家族の状況・財産の種類・税務上の論点を考慮せずに作成した信託契約書は機能しない・無効になるリスクがあります。初期費用を節約しようとして後から大きな損失を招くケースもあるため、必ず専門家に相談することをおすすめします。

家族信託と任意後見・遺言書との費用比較

「家族信託と任意後見・遺言書、どれを選ぶべきか」という問いには、費用だけでなく目的・機能の違いで判断する必要があります。

手続き 初期費用目安 ランニングコスト 主な目的
家族信託 50〜150万円以上 税務申告:年3〜15万円
(収益がある場合)
認知症対策・財産管理の継続・柔軟な資産承継
任意後見契約 15〜25万円程度 後見人報酬:月1〜5万円
(後見開始後)
認知症後の身上監護・意思決定支援
公正証書遺言 10〜30万円程度 ほぼなし 死亡後の財産承継の指定
三点セット
(信託+後見+遺言)
80〜200万円程度 後見人報酬・税務申告 生前〜死後まで一貫した備え
💡 家族信託・任意後見・遺言書は「代替」ではなく「組み合わせ」で考えることが多い:
家族信託は財産の「管理・運用」に特化しますが、医療・介護の意思決定(身上監護)には任意後見が必要です。また、死亡後の財産承継を明確にするには遺言書も有効です。どれか一つで全てをカバーすることは難しく、組み合わせることで「生前〜死後」の備えを完成させるのが一般的です。

よくある疑問(Q&A)

Q. 家族信託は「始めてからやめる」ことはできますか?
できます。信託契約に終了事由を定めておくことで、委託者・受益者の合意等により途中で信託を終了させることが可能です。ただし終了時にも専門家費用・不動産の登記費用が発生します。「始めやすく、やめにくい」という側面もあるため、設計段階でしっかり検討することが重要です。
Q. 費用はいつ支払うのですか?
事務所によって異なりますが、一般的には①着手金(契約締結時)+②残金(公正証書完成・登記完了時)という2段階払いが多いです。見積もりを確認する際に支払いスケジュールも確認しておきましょう。
Q. 家族信託の費用は相続税の計算上、控除されますか?
原則として控除されません。家族信託の設計・設定費用は、相続税の計算における債務控除の対象にはなりません。ただし葬儀費用・債務等は別途控除できます。
Q. 親が認知症になってからでも家族信託を始められますか?
原則としてできません。家族信託は委託者(親)に判断能力(意思能力)があることが前提です。認知症が進んで判断能力がなくなった後では、家族信託の契約を締結することができません。「認知症になる前に始める」ことが家族信託の最重要前提です。
Q. 相見積もりは取った方がいいですか?
積極的にお勧めします。専門家費用は事務所によって大きく異なります。ただし費用だけでなく「家族信託の実績・経験」「税理士・司法書士との連携体制」「相談のしやすさ」も重要な選択基準です。2〜3社に相談して総合的に判断することをおすすめします。

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