親亡き後の支援をどう設計するか
――「制度」で守る未来の安心設計――
「自分がいなくなったあと、この子はどうやって暮らしていけるのか」
障がいのあるお子さんを持つ親御さんの多くが、いつか直面する大きな不安です。
頼れる親族が少ない、福祉の仕組みが複雑で分かりづらい――そんな声を多く耳にします。
しかし、実はこの“親亡き後”の不安には、制度による備えが存在します。
それが「成年後見制度」「遺言」「民事信託(福祉型信託)」の三本柱です。
これらを正しく組み合わせることで、親御さんの思いを形にし、子の生活と権利を長期的に守ることができます。
「親亡き後」に起こりやすいトラブル
親が亡くなった直後、次のような問題が発生しやすくなります。
預貯金や年金の手続きが本人ではできない
財産が一括で相続され、誤って使い込まれてしまう
契約や施設入所の更新ができず、支援が途切れる
善意の家族や知人が支えようとしても、法的な代理権がないため動けないケースがほとんどです。
その結果、せっかく親が残した財産が十分に活かされず、生活が不安定になってしまうことがあります。
制度で支える3つの柱
① 成年後見制度 ― 判断力を補う仕組み
成年後見制度は、判断能力が低下した人を法的に支援する制度です。
家庭裁判所が選任する「成年後見人」が、財産管理や契約手続きなどを代わりに行います。
また有効なのが、「任意後見契約」です。
判断能力が完全に失われていると実現は難しいですが、障がいのある子が成人となり、
これは親が元気なうちに、「自分の子の後見を誰に頼みたいか」「どんな支援をしてほしいか」を候補者と障がいのある子との間で契約書で残しておくもの。
公正証書で作成することで、後に裁判所の監督のもとで確実に実行されます。
② 遺言書 ― 親の意思を法的に残す
次に重要なのが遺言です。
遺言があることで、亡くなった後の財産の行き先や管理方法を明確にできます。
特に、障がいのある子が相続人に含まれる場合、どの財産をどのように使ってもらうかを指定しておくことが大切です。
たとえば、
「長男を成年後見人候補とし、財産の管理は○○信託を通じて行う」
というように、後見制度や信託と連動させた設計が可能です。
公正証書遺言で作成すれば、形式の不備で無効になるリスクもなく、確実に執行されます。
③ 民事信託(福祉型信託) ― 財産を「託して」使ってもらう仕組み
民事信託とは、親(委託者)が自分の財産を、信頼できる家族や第三者(受託者)に託し、
その管理や運用方法を「契約」で決めておく制度です。
親が亡くなった後でも、契約に従って定期的に生活費を渡したり、必要な支出を行うことができます。
例えば、
「毎月10万円を生活費として支給する」
「医療費や施設費用は信託財産から支出する」
といった指定も可能です。
信託は、相続後も柔軟に運用できる点が大きな特徴です。
成年後見制度と組み合わせることで、生活支援と財産管理の両立が実現します。
支援ネットワークをどう作るか
「制度を組み合わせる」だけでは十分ではありません。
実際の運用を支えるのは、地域の支援ネットワークです。
地域包括支援センター・相談支援専門員
福祉サービス事業所(グループホーム、就労支援施設など)
専門職(行政書士、司法書士、社会福祉士)
親が元気なうちから、これらの関係者と連携し、“橋渡し”の仕組みを作っておくことが重要です。
専門家(行政書士)にできるサポート
行政書士は、法律と福祉の中間に立つ専門職として、以下のようなサポートを行います。
任意後見契約書・民事信託契約書の作成支援
公正証書遺言の原案作成と公証役場での手続き同行
各種制度の設計と、福祉機関・支援者との連携調整
「親亡き後プラン」の総合設計・相談
複数の制度を一貫して設計することで、親の思いを確実に実現できる形に整えます。
まとめ ― 今だからこそできる「制度設計」を
親亡き後の安心は、制度を理解し、早めに準備することで初めて実現します。
成年後見・遺言・信託はそれぞれ単独でも有効ですが、組み合わせることでより確かな安心が生まれます。
「うちの場合はどんな制度が合うのか?」
そんな疑問を感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
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