【初心者向け】もう110万円を戻さなくてもいい? 相続時精算課税の仕組みと注意点をやさしく解説
—「贈与の110万円控除が使える」改正で何が変わったのか?—
【目次】
相続時精算課税とは?
なぜ最近話題になっているのか(税制改正のポイント)
「110万円を戻さなくてもいい」とはどういう意味?
相続時精算課税のメリット
相続時精算課税のデメリット
2024年以降の新制度で変わったこと
相続時精算課税が向いている人・向いていない人
利用する前に確認すべき注意点
手続きの流れ(申告・必要書類)
よくある質問Q&A
まとめ
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1|相続時精算課税とは?
相続時精算課税は、
親(60歳以上)から子(20歳以上)へ贈与するときに利用できる制度で、
2,500万円までの贈与が非課税になる
という大きな特徴を持っています。
ただし、
●贈与時は非課税
↓
●相続が発生したときにすべての贈与額を相続財産に“加算”し、まとめて相続税を計算する
という仕組みで、「課税を先送りする制度」と理解するとわかりやすいです。
制度のポイントは、
今すぐ多額の贈与をしたい
不動産を早めに子へ移したい
資産を動かしたい事情がある
こういったケースで検討される制度です。
2|なぜ最近話題になっているのか?(税制改正のポイント)
2024年(令和6年)の税制改正により、
相続時精算課税でも毎年110万円の基礎控除が使えるようになった
ことが大きなニュースになりました。
以前の制度は非常に厳しく、
一度選択すると「110万円の贈与」といった小さな贈与をした場合でも
申告が必要になり、少しでも超過すれば課税されるため使いづらい制度でした。
しかし改正により、
■相続時精算課税でも“年間110万円までは”申告不要
■110万円を超える金額だけ申告すればよい
この変更により、
相続時精算課税のデメリットが大幅に軽減され、
利用しやすい制度へと変わりました。
相続時精算課税制度の改正点
3|「110万円を戻さなくてもいい」とはどういう意味?
よく目にする「110万円を戻さなくてもいい」という表現は、
●相続時精算課税を選んでも
“毎年110万円以内なら贈与税がかからず、相続時に加算されない”
という制度改正のことを指します。
以前は:
贈与額のすべてが相続時に加算される → 総額が大きくなる
これがネックでした。
改正後:
年間110万円までは相続財産に加算しなくてよい
つまり、
「少額の贈与を続けたいが、相続時精算課税を選ぶと不利になる」
という問題が解消されたのです。
4|相続時精算課税のメリット
制度改正でメリットがさらに広がっています。
① 今すぐ大きな財産を移動できる
不動産や株式など、価値の大きい財産を早めに子に移すことが可能です。
② 2,500万円までの贈与は非課税
まとまった資金を移しても贈与税がかからないのは大きな利点。
③ 生前贈与で「資産を早めに整理」できる
空き家対策
不動産運用
資産管理の一本化
など、相続トラブルの予防にもつながります。
④ 年110万円の基礎控除が使えるようになった(改正後)
利用者にとってもっとも大きな改善点です。
5|相続時精算課税のデメリット(注意点)
便利な制度ですが、絶対に知っておくべき落とし穴もあります。
① 一度選択すると“原則取り消し不可”
暦年贈与(毎年110万円の贈与)へ戻れません。
② 相続税が高くなる可能性がある
贈与した財産のすべてが相続財産に加算されるため、
結果的に相続税が増えることがあります。
③ 不動産の評価が上がると不利に
将来、価値が上がる土地や株を贈与すると、
相続時に不利になることもあります。
④ 書類管理や申告が必要
110万円以内なら申告不要になったとはいえ、
制度を使う以上、記録の管理が必要です。
6|2024年以降の新制度で変わったこと(まとめ)
改正ポイントをわかりやすく整理すると、
●相続時精算課税でも110万円の基礎控除が使える
●110万円以内の贈与なら申告不要
●超えた部分のみ申告すればよい
●少額贈与を行いやすくなった
●制度の使い勝手が大幅に改善
結果として、
“資産が多くない家庭でも活用しやすい制度”
へと変化しています。
7|相続時精算課税が向いている人・向いていない人
【向いている人】
不動産を早めに子へ移したい
生前に資産の整理をしたい
中長期的に相続税が増えそう
親が高齢で、財産を安全に移しておきたい
【向いていない人】
贈与は少額のみで十分
将来の相続税が心配
制度の仕組みが複雑で不安
財産評価の変動リスクを避けたい
暦年課税制度と相続時精算課税制度 比較表
(*1) 2026年12月31日までの住宅取得等資金の場合は贈与者の年齢制限なし
(*2) 基礎控除部分を除く
(*3) 2024年1月1日以降に贈与により取得する財産については、相続財産に加算される期間は、相続開始日が2027年1月以降、段階的に延長され、相続開始日が2031年1月以降は「相続開始前7年以内」となります。
ただし、延長された4年間(相続開始3年超7年以内)に受けた贈与については、合計100万円までは相続財産に加算されません。
(出典:国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」より作成)
8|利用する前に確認すべき注意点
制度を使う前に、以下は必ずチェックしておきましょう。
■「相続税が増えないか?」
贈与財産の合計額によっては相続税が増える可能性があります。
■「自宅や土地など評価変動しやすい財産ではないか?」
将来大きく値上がりする財産は要注意。
■「家族の意向と合っているか?」
事前の共有がトラブルを防ぎます。
■「専門家のシミュレーションは必須」
税額比較をしないまま選択すると、将来後悔することがあります。
9|手続きの流れ(申告・必要書類)
●ステップ1:贈与契約
書面で作成するとより安全。
●ステップ2:贈与後に税務署へ申告
※110万円以内なら申告不要(改正後)
※超える場合は申告が必要
●ステップ3:相続時に加算して相続税計算
贈与の記録を失くさないように保管しておくことが重要です。
10|よくある質問Q&A
Q. 相続時精算課税を選んだら絶対損?
→ そんなことはありません。改正でメリットが大きくなっています。
Q. 不動産の贈与に使ってもいい?
→ よく使われるケースですが、評価額の変動には注意。
Q. 途中で暦年贈与に戻せる?
→ 原則不可。
Q. 110万円の贈与だけ毎年したい場合は?
→ 暦年贈与のままの方がシンプルです。
11|まとめ
相続時精算課税は、
これまで「使いにくい制度」というイメージが強くありました。
しかし2024年の改正により、
110万円の基礎控除が使える
申告が不要なケースが増えた
少額贈与も柔軟にできる
という大きな改善があり、
今後利用者が増えることが予想されています。
ただし、
「相続税がどう変化するか」を事前にシミュレーションすることが重要です。
制度は便利ですが、
使い方によっては損になることもあります。
迷ったら、必ず専門家へ相談してください。
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