【専門家が徹底解説】障害者扶養信託(特定贈与信託)とは?仕組み・メリット・税制優遇・注意点まで完全ガイド

【目次】

  1. はじめに|なぜ障害者扶養信託が必要なのか

  2. 障害者扶養信託(特定贈与信託)とは?

  3. どんな人が利用できるのか(対象者の範囲)

  4. 誰が拠出できる?

  5. 障害者扶養信託の“仕組み”をわかりやすく図解的に説明

  6. 受託者(信託銀行など)が行うこと

  7. どのように給付が行われるのか(生活費・医療費など)

  8. 税制上の大きなメリット(相続税・贈与税の優遇)

  9. 他の制度との違い(成年後見・家族信託との比較)

  10. なぜ“親亡き後”対策として評価が高いのか

  11. 利用時の注意点

  12. 障害者扶養信託が向いている家庭・向いていない家庭

  13. 利用までの流れ(手続きのステップ)

  14. よくある質問(Q&A)

  15. まとめ

  16. お問い合わせ


1|はじめに|なぜ障害者扶養信託が必要なのか

障害のある子をもつ親が抱える不安――
それは、
「自分がいなくなった後、この子の生活を誰が守ってくれるのか?」
という点に尽きます。

特に、

  • 金銭管理が難しい

  • 詐欺や悪質商法のターゲットになりやすい

  • 将来の生活費が継続的に必要

といった状況では、単に財産を相続させるだけでは不安が残ります。

そこで注目されているのが、
障害者扶養信託(特定贈与信託)
という仕組みです。

これは、
「障害のある子のためだけに、確実に使われる資金」
を準備できる、国が用意した制度です。


2|障害者扶養信託(特定贈与信託)とは?

障害者の生活を長期的に支えるための、特別な信託制度です。

親や祖父母などが信託銀行にまとまった金額を預け、
その財産を“障害のある子の生活費・医療・介護”のために計画的に給付してもらう仕組みです。

特徴は次の3つ:

  1. 目的が「障害者の生活支援」に特化している

  2. 信託銀行などが専門的に財産管理を行うため安全性が高い

  3. 税制上の大きな優遇措置がある(後述)

「親亡き後」への備えとして、非常に実用性の高い制度です。


3|どんな人が利用できるのか(対象者の範囲)

障害者扶養信託を受けられるのは、法律上以下のいずれかに該当する人です。

  • 特別障害者
     ⇒ 身体障害1・2級、精神障害1級、重度知的障害など

  • 一般障害者
     ⇒ 身体障害3〜6級、精神障害2・3級など

また、
20歳未満でも障害区分に該当すれば利用できます。

※障害者控除の区分と類似していますが完全に一致するものではありません。


4|誰が拠出できる?

主に以下の人が財産を拠出できます。

  • 祖父母

  • 兄弟姉妹

  • 親族

  • (例外的に)第三者も可能

拠出=贈与になりますが、
税制優遇があるため通常の贈与より負担が大きく軽減されます。


5|障害者扶養信託の“仕組み”をわかりやすく説明

とてもシンプルです。

  1. 親などが信託銀行に財産(現金など)を拠出

  2. 銀行がその財産を管理・運用

  3. 必要に応じて、障害者本人へ定期的・計画的に給付

  4. 本人が亡くなったら、残余財産は指定された人へ戻る

※「何に使うか」は信託契約で細かく決められます。


6|受託者(信託銀行など)が行うこと

  • 財産の管理

  • 資産の安全な運用

  • 定期的な給付

  • 本人の状況に応じた支出調整

  • ご家族への報告

“専門家としての管理体制”が最大の魅力です。


7|どのように給付が行われるのか

給付(支払い)は以下のような目的で行われます:

  • 生活費(食費・衣類・日用品など)

  • 医療費・通院費

  • 介護サービス利用料

  • グループホーム利用料

  • 福祉サービスの自己負担

  • 入院時の費用

  • 生活支援に必要な物品購入

信託契約時に「何に使えるか」指定できます。
本人が無駄遣いする心配がありません。


8|税制上の大きなメリット(相続税・贈与税)

障害者扶養信託が最も注目される理由が税制優遇です。

① 贈与税が大幅に軽減

拠出した財産のうち、
最大6,000万円まで(特別障害者:特例額20,000万円)贈与税がかからない
という特別ルールがあります。

これは通常の贈与では絶対にありえない優遇措置です。

② 相続税対策としても効果

親(拠出者)が亡くなると、信託契約に基づいて財産が管理されます。
“信託財産”として扱われるため、相続財産としての計算も変わります。

③ 本人(障害者)に税負担が発生しない

給付されるお金は原則として“非課税扱い”。
生活に支障が出ないように配慮されています。


9|成年後見・家族信託との違い

仕組み理由・目的財産管理の主体給付の仕組み成年後見判断能力不足の補助・代理後見人本人の利益の範囲で支払い家族信託家族間の柔軟な財産管理受託者(家族)契約に従うが裁判所監督なし障害者扶養信託障害者の生活費確保(国の制度)信託銀行長期にわたり安定給付(税制優遇あり)

特に大きいのは、
専門家による管理+税制優遇がセットになっている点です。


10|なぜ“親亡き後”対策として評価が高いのか

ポイントは3つ:

(1)子が自分で管理しなくて良い

金銭管理が難しい障害のある方にとって、
「管理しないで済む」ことそのものが大きな支援です。

(2)お金が確実に生活費として使われる

浪費・トラブル・詐欺などの被害リスクが極めて低くなります。

(3)親族間の負担やトラブルを防げる

「誰が管理するか」という問題がなくなり、
きょうだいの負担も軽減します。


11|利用時の注意点

  • 信託銀行ごとに最低金額がある(300万円〜1,000万円程度)

  • 給付額を柔軟に変えるには契約の工夫が必要

  • 信託財産は原則として“本人のためだけ”に使う

  • 手数料が一定程度かかる(管理料・運用料など)

  • 家族信託や後見制度と併用する方が望ましい場合がある


12|向いている家庭/向いていない家庭

●向いている家庭

  • 子の金銭管理が難しい

  • 親族に負担をかけたくない

  • 長期的に生活費を確保したい

  • まとまった資産を残せる

  • 安全性を最優先したい

  • 税制優遇を適切に利用したい

●向いていないケース

  • 数十万円程度しか準備できない

  • 柔軟な財産運用を家族内で行いたい(家族信託が向く)

  • 親族が完全に管理し続けても問題ない


13|利用までの流れ(手続き)

  1. 相談(信託銀行・専門家)

  2. 対象者・拠出者の確認

  3. 財産の内容確認

  4. 信託契約の設計(給付方法・金額など)

  5. 信託契約の締結

  6. 信託財産の拠出

  7. 給付開始

※実際には、
「成年後見」「家族信託」「遺言」「死後事務委任契約」と併用する家庭が多いです。


14|よくある質問(Q&A)

Q1:給付額はあとから変更できる?

→ 信託契約の内容次第で調整可。

Q2:障害者本人が亡くなった後の財産は?

→ 契約で指定した家族へ戻ります。

Q3:途中で信託をやめられる?

→ 原則不可。本人保護のため。

Q4:贈与税は本当に0円になるの?

→ 上限額まで非課税。ただし制度要件あり。

Q5:成年後見制度と併用できる?

→ もちろん可能。併用する方が多い。


15|まとめ

  • 障害者扶養信託(特定贈与信託)は「障害のある子のための国の制度」

  • 専門家(信託銀行)が財産管理を行うから安全

  • 生活費・医療・介護費を継続的に給付できる

  • 最大6,000万円(特別障害者はさらに優遇)まで贈与税が非課税

  • 親亡き後の最大の不安である“お金の管理”を根本的に解決

  • 成年後見制度・家族信託・遺言と組み合わせるとより安心

「子の将来のために、確実で安全な資金管理をしたい」と考える家庭にとって、
最も強力な選択肢の一つです。


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