【初心者向け】福祉型信託とは?親なき後の「お金の仕組み」で、障害のある子の暮らしを守る制度
目次
なぜ今「福祉型信託」が注目されているのか
福祉型信託とは?まずは全体像をイメージしよう
信託の基本:商事信託と民事信託の違い
福祉型信託でできること・守れること
成年後見制度との違いと、うまい使い分け方
親なき後問題と福祉型信託の関係
どんな人に福祉型信託が向いている?具体的なケース
仕組みのイメージ:登場人物とお金の流れ
福祉型信託を検討するときの注意点・よくある誤解
まとめ──「制度を知っているかどうか」が将来の安心を分ける
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1. なぜ今「福祉型信託」が注目されているのか
現代の日本では、障害のあるお子さんや、判断能力が不安定なご家族の生活を
ほとんど親・家族が“丸抱え”で支えている のが実情です。
ところが、
親が病気で入院した
認知症が進んでしまった
急な事故で亡くなってしまった
こうした事態になると、
支援そのものだけでなく「お金をどう管理するか」も大きな問題になります。
「生活費や医療費は用意してある。でも、子どものために確実に使ってもらえるのか不安」
この“不安の部分”を制度でカバーするために使える選択肢の一つが 福祉型信託 です。
2. 福祉型信託とは?まずは全体像をイメージしよう
福祉型信託を一言でいうと、
高齢者や障害のある人のために、生活費や医療費などを
「信頼できる人」に預けて管理してもらう仕組み
です。
ポイントは次の3つです。
「この財産は、この人の生活のために使う」と目的を決めておく
その目的のためだけに、お金を管理・支出してもらう
親が亡くなったり認知症になっても、仕組み自体は続く
成年後見制度が「今ある財産を減らさないように守る」イメージなのに対して、
福祉型信託は 「必要な人のために、必要な場面で、計画的に使う」 仕組みです。
3. 信託の基本:商事信託と民事信託の違い
福祉型信託を理解する前に、
「そもそも信託とは?」をシンプルに押さえましょう。
信託とは、
委託者(お金の持ち主)が、受託者(信頼できる人・機関)に財産を預け
その財産を、決められた目的のために管理・運用してもらう仕組み
です。
信託には大きく2種類あります。
① 商事信託(信託銀行・信託会社が受託者)
受託者:信託銀行・信託会社など
目的:営利(信託報酬が発生)
特徴:
専門家が管理するため安心感が高い
長期の運用にも耐えられる
一定以上の財産がないと受けてもらえない場合がある
② 民事信託(家族信託など)
受託者:家族・親族・知人など
目的:営利ではなく、生活や相続のための財産管理
特徴:
利用しやすく、柔軟な設計が可能
報酬を支払わない形も設計できる
その分、受託者の責任も重く、信頼関係が重要
福祉型信託は、この「民事信託(家族信託)」の一種 と考えるとイメージしやすくなります。
4. 福祉型信託でできること・守れること
福祉型信託でできることを、具体的に整理してみます。
●(1)生活費・医療費を計画的に確保できる
毎月の生活費
介護サービス・日中活動の利用料
通院・入院費用
施設入所費用
など、将来必要になりそうなお金を、あらかじめ“目的別の財布”として信託に入れておく イメージです。
●(2)財産を「使えないまま眠らせない」
成年後見人制度だけを使うと、
家庭裁判所の監督もあり、財産を動かすこと自体が慎重になりがちです。
福祉型信託では、
信託契約で「この用途のためなら使ってよい」と決めておく
受託者は、その範囲で柔軟に支出できる
ため、必要なときに必要なお金を使いやすい のが大きなメリットです。
●(3)親の希望や子の特性を細かく反映できる
例えば、
「Aという事業所は子どもが落ち着いて通えるので優先利用してほしい」
「食事は嚥下の状態に合わせたものを」
「医療は〇〇病院を主治医に」
など、生活の“質”に関わる希望を契約の中に落とし込む ことができます。
5. 成年後見制度との違いと、うまい使い分け方
福祉型信託は、成年後見制度と対立するものではなく、
「足りない部分を補い合う関係」 にあります。
◆ 成年後見制度の特徴(ざっくり)
本人の判断能力が低下したときに使う制度
家庭裁判所が後見人を監督
本人の財産は本人名義のまま
原則として「本人の財産を守る」のが目的
→ 積極的な財産活用には向きにくい
◆ 福祉型信託の特徴
親が元気なうちから準備できる
財産は「信託財産」として切り分けられる
使い道(目的)を柔軟に設計できる
親の意向や家族の希望を細かく反映しやすい
◆ 組み合わせるとどうなるか?
日常的な法的手続き(契約締結・権利の管理)
→ 成年後見人長期にわたる生活費・医療費の確保と運用
→ 福祉型信託
という 役割分担 にすることで、
「守る」と「生かす」の両方から支えることが可能になります。
6. 親なき後問題と福祉型信託の関係
親なき後問題とは、
障害のある子どもを支えている親が、病気・認知症・死亡などにより
「支え手」でいられなくなったとき、誰がどのように生活を支えるのか、
という問題
です。
親なき後問題には、大きく2つの側面があります。
生活の支え手(人)の問題
生活を続けるためのお金の問題
福祉型信託が特に力を発揮するのは、後者の 「お金の問題」 の部分です。
● 親なき後の具体的な不安例
障害のある子の生活費・医療費が将来どれくらい必要か
子どもが「お金の管理」ができない
他のきょうだいに負担や不公平感を与えたくない
親族がいない/頼れる人が少ない
成年後見人だけに全てを任せるのは不安
こうした不安に対し、福祉型信託は、
「この子のための生活費」として信託財産を分けておく
信頼できる人・専門家に管理を託す
支出のルールを事前に決めておく
という形で、お金の面から親なき後問題を軽減する役割 を担います。
7. どんな人に福祉型信託が向いている?具体的なケース
ケース1:障害のあるひとりっ子の親
きょうだいがいない
親族も高齢で頼みにくい
子どもは金銭管理ができない
→ 親亡き後の生活費を信託で確保し、
受託者・実際の世話をする人・見守る人を組み合わせて設計するイメージです。
ケース2:きょうだいに負担をかけすぎたくない家庭
障害のある子と健常なきょうだいがいる
「全部きょうだいに任せる」形にはしたくない
でも、まったく関わらせないのも不安
→ 財産管理は信託(専門家・第三者)で行い、
きょうだいは「見守り役」として関わるなど、
役割を分けて設計できます。
ケース3:相続人のいない高齢者
子どもがおらず、配偶者もいない
自分の財産を、支援してくれた人・団体に有効活用してほしい
→ 自分の老後の生活支援 + 死後の財産の行き先まで
信託で決めておくことができます。
8. 仕組みのイメージ:登場人物とお金の流れ
福祉型信託を「登場人物」で整理すると、以下のようになります。
委託者:親(お金の持ち主)
受託者:信頼できる家族・専門家・法人など(お金の管理を任される人)
受益者:子どもなど、実際に生活支援を受ける人
お金の流れは、
親が、生活費としての財産を受託者に「信託財産」として預ける
受託者は、契約に基づき、毎月の生活費や必要な医療費を支出
本人が亡くなった後の残りの財産を、最終的な受取人(親族・団体・寄付など)に渡す
といったイメージです。
9. 福祉型信託を検討するときの注意点・よくある誤解
●(1)「信託さえ組めば安心」ではない
福祉型信託はあくまで お金の仕組み にすぎません。
実際に生活を支える人・事業所・医療機関との連携もセットで考える必要があります。
●(2)受託者選びが最重要
お金の管理能力
本人への理解
長期的に関わる覚悟
これらが必要になります。安易に選ばず、専門家の助言を受けた方が安全です。
●(3)税務・相続との関係も要チェック
信託は税務上の扱いも特殊です。
相続税・所得税・贈与税などの影響を、事前にシミュレーションしておくことが大切です。
●(4)成年後見との関係を整理しておく
後見人と受託者の役割が重ならないように、
「誰がどこまで担当するか」 を明確にしないと、
現場で混乱を招くことがあります。
10. まとめ──「制度を知っているかどうか」が将来の安心を分ける
福祉型信託は、まだ歴史の浅い制度ですが、
親なき後問題
配偶者亡き後問題
相続人のいない高齢者の生活と財産管理
といった場面で、大きな力を発揮する 新しい“福祉とお金”のインフラ といえます。
「お金は準備している。でも、それを“どう使うか”が決まっていない」
という状態から一歩踏み出し、
「この財産は、この人の生活のために、こういうルールで使う」
と具体的に決めていくことが、安心につながります。
福祉型信託は、そのための有力な選択肢のひとつです。
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