障害のある子の“日常の困りごと”を言語化する|支援に繋がる伝え方と記録テンプレ

障害のある子の“日常の困りごと”を言語化する|支援に繋がる伝え方と記録テンプレ【保存版】

障害のある子の“日常の困りごと”を言語化する|支援に繋がる伝え方と記録テンプレ

障害のある子の親御さんから、よくこんな声を聞きます。「毎日大変なのに、うまく説明できない」「病院や相談支援で話しても、深刻さが伝わらない」「困っていることは山ほどあるのに、面談になると何を言えばいいか分からなくなる」――これは、とても自然なことです。

実際、日常の困りごとは細かく、繰り返し起きていて、しかもその場では必死に対応しているため、あとから整理して言葉にするのが難しいからです。ですが、支援につながるかどうかは、困りごとの大きさだけではなく、どう伝わるかにも左右されます。

結論からいうと、困りごとは 「感想」 ではなく 「場面」「困った結果」 で伝えると支援につながりやすくなります。さらに、いつ・どこで・何が起きて・どう対応し・何がうまくいったかまで短く残すだけで、相談支援、病院、施設、家族会議の精度が大きく変わります。

この記事の結論

  • 「困っています」だけでは、支援の具体化が難しいことがあります。場面・頻度・困る結果・有効だった対応を入れると伝わりやすくなります。
  • “わがまま”“こだわりが強い”のような評価語だけではなく、実際の行動や状況に言い換えるのがコツです。
  • 記録は長文でなくて大丈夫です。同じ型で短く残す方が、支援会議や受診時には使いやすいです。
  • 困りごとの記録は、相談支援専門員の計画見直し、医療機関への説明、施設やグループホームへの引き継ぎ、家族会議に役立ちます。
  • 親亡き後を見据えるなら、本人の困りごと・安心する関わり・避けたい対応を、第三者が読んで分かる形にしておくことが重要です。

1|なぜ「困りごと」を言語化する必要があるのか

困りごとを言語化する目的は、単にメモをきれいに残すことではありません。いちばんの目的は、必要な支援につなげることです。

たとえば、相談支援専門員に「最近たいへんです」とだけ伝えても、どこを優先して支援計画に反映するかは見えにくいです。病院で「家で荒れます」とだけ言っても、薬の問題なのか、環境調整の問題なのか、伝わりきらないことがあります。グループホームや施設の見学時に「うちの子はこだわりが強いです」と言っても、受け入れ側は何に配慮すればよいか分からないままです。

言語化すると何が変わるか

  • 相談支援で、サービス等利用計画や支援方針に反映しやすくなる
  • 受診時に、生活面の困りごとを医師へ伝えやすくなる
  • 家族会議で、感情論ではなく具体論で話しやすくなる
  • 引き継ぎ時に、支援者が変わっても支援の質が落ちにくくなる
  • 親亡き後に、第三者が読んでも本人の困りごとが分かる資料になる

厚労省の意思決定支援ガイドラインは、本人中心で、家族や成年後見人等、医療・福祉関係者などが関わりながら支援を考える枠組みを示しています。だからこそ、親だけが分かっている困りごとを、関係者で共有できる言葉に変えることが大切です。 :contentReference[oaicite:1]{index=1}

2|支援につながる伝え方の基本|感想ではなく場面で伝える

支援につながる伝え方のコツは、評価語を減らして、場面を増やすことです。

たとえば、「わがままです」「だらしないです」「気分屋です」「すぐパニックになります」という言い方は、気持ちは伝わりますが、支援の糸口が見えにくいです。一方で、「予定変更があると、玄関から出られなくなることが週2回ある」「買い物で会計が長引くと、店内で座り込んでしまう」といった言い方だと、配慮や対策を考えやすくなります。

伝え方の基本

「この子はこういう人です」ではなく、「こういう場面で、こういうことが起きて、こう困ります」に変えると、支援者が動きやすくなります。

3|まず覚えたい6要素|何を書けば伝わるのか

困りごとを言語化するときは、次の6要素を意識するとまとまりやすいです。

要素 書く内容
いつ 時間帯、曜日、どんな日か 月曜の朝、通所前、受診日の前日
どこで 場所、誰といたか 自宅、スーパー、待合室、グループホーム
何が起きたか 見たままの行動 玄関で止まる、大声を出す、財布を何度も開ける
どのくらい 頻度、長さ、程度 週3回、20分、ここ1か月で増えた
何が困るか 本人や周囲への影響 通所に遅れる、薬が飲めない、家賃支払いが遅れる
何をしたらどうなったか 対応と結果 前日に紙で予定を見せると落ち着く

この6要素のうち、全部が埋まらなくても大丈夫です。大事なのは、「困っている」という気持ちだけで終わらないことです。

4|悪い例と良い例|“わがまま”をどう言い換えるか

よくある言い方 支援につながる言い換え
わがままです 予定変更があると混乱しやすく、外出の5〜10分前に変わると玄関で動けなくなることがあります
お金にだらしないです 現金を持つと1日で使い切ってしまうことが月3〜4回あり、家賃や食費が不足しやすいです
人付き合いが苦手です 初対面の人に質問が続くと黙り込みやすく、返事ができなくなります
薬をちゃんと飲めません 夜の薬を週2〜3回忘れやすく、本人は飲んだつもりになっていることがあります
こだわりが強いです いつもと違う道順や店だと不安が強くなり、外出を取りやめることがあります

ここでのポイントは、人格評価をやめて、行動・場面・結果に置き換えることです。そうすると、支援者は「その人の性格」として諦めるのではなく、「環境調整」や「支援方法」で考えられるようになります。

5|困りごとを言語化しやすい分野|外出・お金・通院・対人・家事

困りごとは全部を一度に書こうとすると大変です。まずは分野で分けると整理しやすくなります。

① 外出

  • 一人でどこまで行けるか
  • 道に迷いやすい場面
  • 電車・バス・買い物で困ること

② お金

  • 現金管理、カード、スマホ決済で起きること
  • 支払い忘れ、使いすぎ、詐欺や勧誘への弱さ

③ 通院・服薬

  • 予約、同行、待ち時間、薬の飲み忘れ、残薬

④ 対人関係

  • 苦手な話し方、安心する人、トラブルになりやすい場面

⑤ 家事・生活

  • 食事、洗濯、入浴、ゴミ出し、時間管理

コツ

困りごとを書くときは、「できないこと一覧」にしない方が続きます。「何ならできるか」「どうするとできるか」を一緒に書くと、支援方針につながりやすくなります。

6|相談支援・病院・施設で伝えるときのコツ

同じ困りごとでも、相手によって伝え方を少し変えると伝わりやすくなります。

伝える相手 特に重視したい点
相談支援専門員 生活全体への影響、頻度、どんな支援があると回るか
主治医・病院 体調・服薬・生活変化・受診や治療に影響する具体的事実
薬局 飲み忘れ、残薬、副作用らしい変化、本人の服薬のクセ
施設・グループホーム 日中・夜間の困りごと、安心する対応、避けたい対応
家族会議 感情論ではなく、生活上どこが回っていないか

相談支援業務の手引きでは、サービス担当者会議やモニタリングの機会を活用して、関係者間で支援の視点を確認していくことが示されています。だからこそ、親の感覚だけで抱えず、共有しやすい記録を持っておく意味があります。 :contentReference[oaicite:2]{index=2}

7|記録テンプレ①|日常メモ

毎日の様子をざっくり残すためのテンプレです。毎日全部書かなくて大丈夫です。変化があった日だけでも十分役立ちます。

日常メモ テンプレ

日付:

今日はどんな1日だったか:

うまくいったこと:

困ったこと:

本人の様子(気分・睡眠・食事・服薬など):

気になった変化:

明日気をつけたいこと:

この日常メモは、診断のための記録というより、「いつもと違う」を見つけるための土台です。

8|記録テンプレ②|困りごと発生記録

困った場面が起きたときに使うテンプレです。短く、同じ型で残すのがコツです。

困りごと発生記録 テンプレ

① いつ:

② どこで:

③ 誰といたか:

④ 何が起きたか(見たまま):

⑤ 何が困ったか:

⑥ 何をしたか:

⑦ 結果どうなったか:

⑧ 次に同じことが起きたらどうしたいか:

この型で数件たまると、「どの場面で困りやすいか」「何をすると悪化するか」「何が効くか」が見えやすくなります。

9|記録テンプレ③|引き継ぎ用まとめシート

親亡き後や支援者交代に備えるなら、単発記録だけでなく、まとめシートもあると役立ちます。

引き継ぎ用まとめシート テンプレ

本人が困りやすい場面 ベスト3:

本人が安心しやすい対応:

避けた方がよい対応:

通院・服薬で気をつけること:

お金で気をつけること:

外出・対人関係で気をつけること:

緊急時の連絡先:

更新日:

ここでは細かい全履歴より、第三者が最初に知るべき核心を残すのがポイントです。

10|親亡き後に役立つ残し方|第三者が読んでも分かる形にする

親亡き後に本当に役立つ記録は、親だけが読んで分かるものではなく、第三者が読んでも状況が分かるものです。

残し方のコツ

  • 主観だけでなく、具体例を入れる
  • 「昔からそう」ではなく、最近の傾向を書く
  • 一番困ることを先に書く
  • 医療・お金・住まい・対人の入口を分ける
  • 更新日を書く

共同生活援助のガイドライン案でも、本人や家族、医療機関、他の支援事業者などと連携しながら継続的にアセスメントし、共有していくことが重要とされています。つまり、困りごとの言語化は一度作って終わりではなく、支援の中で育てていく記録です。 :contentReference[oaicite:3]{index=3}

11|よくある失敗10選

失敗1|「たいへんです」で終わる

気持ちは伝わりますが、支援の具体化が難しくなります。

失敗2|“わがまま”“だらしない”だけで書く

評価語だけでは、支援者が動きにくいです。

失敗3|長文すぎて要点が分からない

困りごとの核が埋もれやすくなります。

失敗4|全部を一度に書こうとする

続かなくなる原因になります。

失敗5|うまくいった対応を書かない

支援者が同じ失敗を繰り返しやすくなります。

失敗6|本人の安心材料を書いていない

引き継ぎ時に対応の質が落ちやすくなります。

失敗7|医療・お金・住まいが混ざっている

誰に伝えるべき内容か分かりにくくなります。

失敗8|更新しない

古い情報が残ると、かえって危険です。

失敗9|親だけが持っている

親が急に動けなくなると情報ごと止まります。

失敗10|本人の視点がない

“周囲が困ること”だけだと、本人中心の支援につながりにくくなります。

12|すぐ使えるチェックリスト

  • 困りごとを「いつ・どこで・何が起きたか」で書ける
  • 頻度や長さを書ける
  • 何が困る結果になるかを書ける
  • 何をすると落ち着くかを書ける
  • 相談支援や病院に見せられる記録がある
  • 本人が安心する対応が分かる
  • 避けたい対応が分かる
  • 医療・お金・住まい・対人の困りごとを分けて考えられる
  • 親亡き後に第三者へ渡せるまとめシートがある
  • 更新日が入っている

13|Q&A

Q1|困りごとを伝えるとき、何を書けば支援につながりますか?

A|少なくとも、いつ・どこで・何が起きたか、どのくらいの頻度か、本人がどう困ったか、周囲が何をしたか、その結果どうだったか、を入れると伝わりやすくなります。

Q2|「わがまま」「こだわりが強い」と書いてもいいですか?

A|避けた方が安全です。主観的な評価だけでは支援につながりにくいため、実際の行動、起きた場面、困った結果、うまくいった対応を具体的に書く方が有効です。

Q3|記録は毎日細かく書かないと意味がありませんか?

A|いいえ。毎日完璧に書くより、困った場面が起きたときに短く同じ型で残す方が続きやすく、支援会議や受診時にも使いやすいです。

Q4|誰に見せる前提で作ればいいですか?

A|家族だけでなく、相談支援専門員、通院先、薬局、グループホームや施設、通所先、必要に応じて成年後見人や専門家にも共有しやすい形にしておくと、親亡き後の引き継ぎで役立ちます。

Q5|本人が自分でうまく説明できない場合でも、記録を作る意味はありますか?

A|あります。むしろその場合ほど、周囲が本人の困りごとを“本人の代わりに決めつける”のではなく、“場面と事実”で残すことに意味があります。

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