【初心者向け】相続財産が不動産だけの人へ― 知っておきたい「代償分割」という解決法をやさしく解説

【目次】

  1. はじめに:不動産しかない相続はなぜトラブルになりやすい?

  2. 相続の基本:不動産は「分けにくい」財産

  3. 代償分割とは?初心者でもわかるシンプル解説

  4. 代償分割が選ばれる典型的ケース

  5. 代償分割のメリット

  6. デメリット・注意点

  7. 代償分割に必要な手続き

  8. 税金はどうなる?(代償金を払う側/受け取る側)

  9. 不動産評価をどう決める?(トラブルを避けるコツ)

  10. 遺言書があれば、もっとスムーズ

  11. 実際の事例で理解する代償分割

  12. まとめ:不動産相続は「代償分割」で公平に

  13. 📞ご相談はこちら


1|はじめに:不動産しかない相続はなぜトラブルになりやすい?

相続相談の中で最も多いのが、

「財産のほとんどが不動産しかない」
「預貯金で調整できず、兄弟間で分けられない」

というケースです。

不動産は預金のように数字でスパッと分けられず、
「誰が住む?」「売る?」「名義は?」など話し合うべき点が多く、
相続人同士の意見が食い違いやすいためです。

そんなときに解決策となるのが 「代償分割」 です。


2|相続の基本:不動産は「分けにくい」財産

相続は大きく3つの方法で分けることができます。

① 現物分割(そのまま分ける)

→ 不動産・預金・株などを現物のままそれぞれが取得

② 換価分割(売って分ける)

→ 不動産を売却し、代金を分ける

③ 代償分割

→ 不動産を1人が取得し、他の相続人に“代わりのお金”を支払う

不動産は丸ごと一人にまとめないといけないことが多く、
現物分割が難しいため、②か③が選ばれます。

しかし、 売却したくない ケース(自宅や先祖代々の土地など)では、
代償分割が最も有効です。


3|代償分割とは?初心者でもわかるシンプル解説

不動産を相続する人が、他の相続人に“公平を保つためのお金(代償金)”を支払う方法です。

<例>

相続財産:不動産3,000万円のみ
相続人:長男・次男(2人)

長男が不動産を取得する代わりに、
次男へ 1,500万円 を支払う。

これが代償分割です。


4|代償分割が選ばれる典型的ケース

  • 実家に住んでいる子が家を引き継ぎたい

  • 遠方の相続人は不動産を持っても管理できない

  • 土地が広く分筆できない

  • 建物が古く、共有してもメリットがない

  • 「将来売却したときのトラブル」が怖い

  • 共有状態にすると修繕費・固定資産税の負担が複雑になる

不動産は共有にしたときの後々のトラブルがとても多いため、
専門家は代償分割を推奨するケースが多くあります。


5|代償分割のメリット

① 不動産を売らずに済む

自宅を守りたい家族にとって大きなメリット。

② 相続人同士の公平性が保てる

代償金の支払いにより、不公平感を軽減。

③ 共有状態を避けられる

共有は「売却」「建て替え」「解体」で必ず揉めます。

④ 相続手続きがスムーズになる

「売る/売らない」「価格の合意」といった衝突を回避。


6|デメリット・注意点

① 代償金を準備する必要がある

銀行借入を使う場合も。

② 不動産の価値評価で揉めやすい

「3,000万じゃなくて2,000万だろ」といった争いが多い。

③ 納税資金の問題(相続税がかかる人)

不動産を相続した側は納税資金の準備が必要になる場合がある。

④ 遺産分割協議書の作成が複雑

一般的な遺産分割とは書き方が異なる。


7|代償分割に必要な手続き

① 不動産の評価

必ず行うべき。争いを避けるため。

・固定資産税評価額
・路線価評価
・不動産会社による査定
・不動産鑑定士の評価(最も正確)

② 遺産分割協議書の作成

代償金の金額・支払時期・方法を明確に記載。

③ 名義変更(相続登記)

2024年から義務化。

④ 代償金の支払い

・銀行振込
・一括払い
・分割払い(合意があれば可能)


8|税金はどうなる?(国税庁の最新基準)

参照:国税庁(代償分割と税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4173.htm

■【不動産を取得する人】

不動産を取得しただけで 追加の相続税は原則なし

ただし、
不動産の評価額より“高額すぎる代償金”を払った場合、
一部が贈与扱いになることがあります。

■【代償金を受け取る人】

代償金は 相続による取得 のため 非課税(所得税・贈与税なし)。


9|不動産評価をどう決める?(トラブルを避けるコツ)

1. 3つ以上の査定を取る

不動産会社によって査定額はバラつきます。

2. 路線価で基準値を作る

税務署も判断する最も客観的な指標。

3. 不動産鑑定士に依頼(争いの芽を摘む)

相続人同士の“感情トラブル”を事前に回避できます。


10|遺言書があれば、もっとスムーズ

被相続人が生前に

「長男に自宅を相続させ、長男は次男へ代償金1,500万円を支払う」

と明記した遺言書を作っておけば、相続は大きく簡略化。

  • 争いを防ぐ

  • 手続きが早い

  • 代償金のトラブルが減る

生前の準備は非常に大切です。

【専門家解説】認知症や障がいのある人の遺言は有効?条件・手続き・実務上のポイント


11|実際の事例で理解する代償分割

■事例1:実家を守りたい長男

相続財産:実家(路線価評価3,200万円)
相続人:長男・次男

長男が相続し、
次男へ 1,600万円 の代償金を支払う。

→ 円満に終了。
→ 次男も納得感がある。

■事例2:評価額で争ったケース

長女:「自宅は5,000万円の価値がある」
長男:「いや、3,000万円だ」

鑑定士に依頼し 3,800万円 で合意。
→ 代償分割が成立。

専門的な評価がトラブルを解決。


12|まとめ:不動産相続は「代償分割」で公平に

  • 不動産しかない相続ではトラブルが起きやすい

  • “代償分割”という方法なら不動産を守りつつ公平に分けられる

  • 代償金で相続人全員の納得感が増す

  • 税金面でも有利なことが多い

  • 不動産の評価が最重要ポイント

  • 遺言書があればトラブルはさらに減る

不動産相続の悩みは、
代償分割を知っているかどうかで大きく変わります。


📞 ご相談はこちら

「うちの場合、どんな備えをすればいいのか知りたい」

障害を持つ子どもの将来設計について相談したい方は、お気軽にご相談ください。

障害を持つ子どもの親亡き後を支える会

〒103-0013
東京都中央区日本橋人形町3-3-5 6階605

〒231-0032
神奈川県横浜市中区不老町1-6-9 第一HBビル8階A

0120-905-336

お子さまの将来に安心をつくるための制度設計を、専門家と一緒に検討してみませんか?

Previous
Previous

【初心者向け】はじめての児童手当ガイド― 0歳から高校生まで、家計を支える大切な制度をわかりやすく解説

Next
Next

【専門家がわかりやすく解説】医療費控除と重度障害者医療費助成のすべて