障害のある子の「受給の取りこぼし」防止|申請しないと貰えない制度チェック

障害のある子の「受給の取りこぼし」防止|申請しないと貰えない制度チェック【保存版】

障害のある子の「受給の取りこぼし」防止|申請しないと貰えない制度チェック

障害のある子の将来を考えるとき、多くのご家庭が気にするのは「いくら残すか」「どこに住むか」「誰が支えるか」です。もちろん、どれも大切です。ですが実務では、それと同じくらい大きいのが 制度の取りこぼし です。

本来は受けられるのに、存在を知らなかった。知っていたけれど、申請の時期を逃した。親が全部管理していて、親が倒れたら止まった。障害年金だけ見て、手当や医療費軽減を見ていなかった。こうしたことは珍しくありません。

結論からいうと、障害のある子の制度は、「自動でもらえるもの」より「自分で請求・申請・申告しないと始まらないもの」の方が多いです。しかも、現金で入る制度だけでなく、医療費が軽くなる制度、生活に必要な用具の費用が出る制度、税金が軽くなる制度、障害福祉サービスを使うための制度まで含めて見ないと、本当の意味での取りこぼし防止にはなりません。

この記事の結論

  • 取りこぼし防止は、「制度名を知ること」より「申請が必要な制度を一覧にして管理すること」が大切です。
  • 特に見落としやすいのは、障害年金年金生活者支援給付金特別児童扶養手当特別障害者手当・障害児福祉手当自立支援医療障害福祉サービス受給者証補装具費・日常生活用具です。
  • 心身障害者扶養共済は、親が元気なうちにしか検討しにくい代表的な「将来準備型」の制度です。
  • 生活保護の障害者加算や、障害者控除など、「条件に当てはまっていても自動では反映されない制度」もあります。
  • 親亡き後に止まりやすいのは、更新・変更がある制度と、親しか資料の置き場所を知らない制度です。
  • 制度は単発で覚えるより、生活の節目ごとのチェックリストにすると漏れにくくなります。

1|なぜ「受給の取りこぼし」が起きるのか

取りこぼしが起きる理由は、「制度が難しいから」だけではありません。実際には、次の3つが重なって起きることが多いです。

  • 制度が バラバラの窓口 に分かれている
  • 現金給付・医療費軽減・サービス利用・税控除が 別物として管理されている
  • 親が全部分かっていて、本人やきょうだい、支援者が 全体像を知らない

たとえば、障害年金は年金事務所、自立支援医療は自治体、障害福祉サービスは市区町村の障害福祉窓口、税の障害者控除は勤務先や確定申告、補装具費や日常生活用具は市区町村、というように、窓口が分かれています。そのため、一つの制度を使っていても、別の制度は未申請のままになりやすいです。

取りこぼしの典型例

  • 障害年金は請求したが、年金生活者支援給付金は請求していない
  • 特別児童扶養手当は受けていたが、20歳以降の特別障害者手当を見ていない
  • 自立支援医療は使っているが、障害福祉サービス受給者証の変更をしていない
  • 手帳はあるが、税の障害者控除を年末調整や確定申告で使っていない
  • 補装具費は知っているが、日常生活用具給付を見ていない

2|まず全体像|制度は5つに分けると見落としにくい

制度は一つひとつ覚えるより、まず5つに分けると整理しやすいです。

分野 代表的な制度 家計への効き方
① 所得を支える制度 障害年金、年金生活者支援給付金、特別児童扶養手当、特別障害者手当、障害児福祉手当 現金収入が増える
② 医療費を軽くする制度 自立支援医療、自治体の医療費助成 毎月の医療支出が減る
③ 生活を支える制度 障害福祉サービス受給者証、補装具費、日常生活用具給付等 支援や用具が使える
④ 将来に備える制度 心身障害者扶養共済 親亡き後の継続収入につながる
⑤ 税・減免 障害者控除、医療費控除 など 税金や家計負担が軽くなる

ここでいう「受給」は、現金だけを意味していません。申請しないと生活費の持ち出しが増えたままになる制度も、広い意味での取りこぼしです。

3|申請しないと始まらない制度チェック表

まずは、代表的な制度を一覧で確認します。全部が全員向けではありませんが、「うちは関係ない」と決める前に一度見ることに意味があります。

制度 主な対象の目安 何がもらえる・軽くなるか 最初に確認したいこと
障害年金 障害の状態が年金基準に当てはまる人 生活を支える年金 初診日、保険料要件、20歳前障害かどうか
障害年金生活者支援給付金 障害年金受給者で所得基準に当てはまる人 年金への上乗せ 給付金の請求をしているか
特別児童扶養手当 20歳未満の障害児を家庭で監護している人 家庭向けの手当 年齢、所得制限、施設入所の有無
障害児福祉手当 20歳未満の在宅の重度障害児 本人向けの手当 在宅要件、重度要件、所得制限
特別障害者手当 20歳以上の在宅の重度障害者 本人向けの手当 在宅要件、重度要件、所得制限
自立支援医療 精神通院など継続治療が必要な人 医療費自己負担の軽減 対象医療機関、薬局、更新管理
障害福祉サービス受給者証 ヘルパー、通所、短期入所、GH等を使いたい人 サービス利用の入口 支給決定、更新、変更、相談支援
補装具費 補装具が必要な障害者・障害児 購入・修理費の支給 事前申請が必要か、判定が必要か
日常生活用具給付等 市町村事業の対象に当てはまる人 日常生活用具の給付・貸与など 市町村ごとの対象品目・基準
心身障害者扶養共済 親など保護者が将来に備えたい場合 保護者死亡後の終身年金 加入年齢、掛金、今から加入できるか
生活保護の障害者加算等 生活保護利用世帯で要件に当てはまる場合 保護費の加算 等級・年齢・世帯状況
障害者控除・医療費控除 税申告・年末調整がある人 税負担の軽減 勤務先申告、確定申告の有無

※自治体独自の医療費助成、交通費助成、住宅関連補助などは地域差が大きいので、住んでいる自治体の障害福祉窓口で必ず確認してください。

4|特に取りこぼしやすいタイミング|20歳前後・就労・親亡き後

制度の取りこぼしは、普段よりも 生活の節目 で起きやすいです。

① 20歳前後

20歳前障害の障害年金の請求、特別児童扶養手当から別制度への見直し、障害児福祉手当から成人後の制度確認など、年齢で制度が切り替わる時期です。

② 就労開始・就労変化

働き始めると、年金や手当を「もう関係ない」と思ってしまうことがあります。ですが、就労していても障害年金や自立支援医療が関係する場合がありますし、税の障害者控除も見落としやすくなります。

③ 親の高齢化・親亡き後

一番危ないのはここです。親が元気なうちは、親が申請書類、診断書、通帳、更新時期、窓口を全部分かっていることがあります。ところが、親が亡くなる、入院する、認知機能が落ちると、制度ごと止まりやすくなります。

節目で必ず見直したいこと

  • 年齢が変わったことで使える制度・使えなくなる制度はないか
  • 就労や収入変化で、止まる制度・新たに見られる制度はないか
  • 親亡き後、更新や申請を誰が担うのか決まっているか

5|制度別の落とし穴|何を見れば漏れにくいか

障害年金の落とし穴

「手帳がないともらえない」「働いているともらえない」と決めつけることです。大事なのは、初診日・障害状態・保険料要件・20歳前障害かどうかです。

年金生活者支援給付金の落とし穴

障害年金を受けていれば自動で上乗せされると思い込むことです。実際には、請求手続きを見落としているケースがあります。

特別児童扶養手当・障害児福祉手当・特別障害者手当の落とし穴

「年金をもらっているから無理」「手当は一つしか無理」と決めつけることです。実際には、制度ごとに対象・在宅要件・所得制限が違います。

自立支援医療の落とし穴

最初の申請だけして安心し、更新保険変更病院や薬局の変更を見落とすことです。

障害福祉サービスの落とし穴

サービス自体は知っていても、受給者証の更新・変更を軽く見てしまうことです。今の支給量で足りていないのに、相談支援へ十分伝えていないケースもあります。

補装具費・日常生活用具の落とし穴

買ってから相談することです。制度によっては 事前申請や判定 が前提なので、先に動かないと対象外になりやすいです。

税の障害者控除の落とし穴

手帳があっても、勤務先の年末調整や確定申告で 申告しなければ反映されない ことです。

共通するコツ

制度ごとに違いはありますが、取りこぼしを防ぐ共通点は同じです。「対象かどうか」「いつ・どこへ・何を出すか」 を一度表にしておくと、かなり漏れにくくなります。

6|まず誰が・いつ・どこで動くのか|実務の順番

制度は多いですが、動き方はある程度共通しています。迷ったときは、この順番で整理すると動きやすいです。

STEP1|今使っている制度を全部書き出す
年金、手当、自立支援医療、手帳、受給者証、税控除、用具関係を一覧にします。

STEP2|まだ見ていない制度を洗い出す
20歳前後、在宅か入所か、就労状況、通院状況から、漏れていそうな制度を確認します。

STEP3|窓口を分ける
年金事務所、市区町村障害福祉窓口、主治医、相談支援専門員、勤務先・税務手続の窓口に分けます。

STEP4|更新がある制度を先に管理する
自立支援医療、手帳、受給者証など、期限で止まりやすい制度から管理表を作ります。

STEP5|親だけが持っている情報を分散する
書類の保管場所、窓口、更新月、主治医名、申請履歴を、家族や支援者が分かる形にします。

最初の相談先

まずは 市区町村の障害福祉窓口 を起点にし、必要に応じて 年金事務所主治医相談支援専門員勤務先・税理士・税務署 へつなぐのが実務的です。

7|親亡き後に止まりやすい制度と、その防ぎ方

親亡き後に特に止まりやすいのは、更新が必要な制度と、親しか書類の場所を知らない制度です。

止まりやすい制度 なぜ止まりやすいか 今やること
自立支援医療 更新・変更が多い 更新月と必要書類を共有する
障害福祉サービス受給者証 更新・変更・モニタリングがある 相談支援専門員と家族が一緒に管理する
精神障害者保健福祉手帳 有効期限がある 有効期限を紙とスマホで管理する
税の手続き 年末調整や確定申告が毎年必要 勤務先提出物・確定申告要否を共有する
扶養共済・保険類 加入情報や請求先が分かりにくい 契約書・加入証書の保管場所を共有する

親亡き後に強い家族は、制度をたくさん知っている家族ではなく、誰が見ても分かる一覧表を持っている家族です。

8|そのまま使える制度チェックテンプレ

受給の取りこぼし防止シート

本人氏名:

生年月日:

現在使っている制度:

・障害年金:

・年金生活者支援給付金:

・特別児童扶養手当/障害児福祉手当/特別障害者手当:

・自立支援医療:

・精神障害者保健福祉手帳:

・障害福祉サービス受給者証:

・補装具費/日常生活用具:

・心身障害者扶養共済:

・税の障害者控除:

まだ確認していない制度:

更新がある制度と期限:

窓口一覧:

市区町村窓口:

年金事務所:

主治医:

相談支援専門員:

税の窓口:

書類の保管場所:

一次確認者:

二次確認者:

支援者共有先:

このシートは、完璧に埋めなくて大丈夫です。むしろ、空欄が「まだ確認していない制度」です。そこから一つずつ埋めるだけでも、取りこぼし防止には大きな意味があります。

9|よくある失敗10選

失敗1|障害年金だけ見て安心する

年金以外の手当や給付金、医療費軽減、税控除を見落としやすいです。

失敗2|「うちは働いているから無理」と決めつける

就労していても関係する制度はあります。

失敗3|手当は一つしか受けられないと思い込む

制度ごとに対象と併給関係が違います。

失敗4|自立支援医療を初回申請だけで終わりにする

更新・変更が止まりやすい制度です。

失敗5|補装具や用具を買ってから相談する

事前申請が必要な制度では対象外になりやすいです。

失敗6|税の障害者控除を申告していない

手帳があっても自動反映されるとは限りません。

失敗7|親だけが加入証書や申請書類の場所を知っている

親亡き後に一番止まりやすい形です。

失敗8|更新月だけ覚えていて、窓口や必要書類を記録していない

毎回ゼロから調べ直すことになります。

失敗9|自治体独自制度を一度も確認していない

医療費助成や交通関係などで差が出ることがあります。

失敗10|制度を「その時考える」ことにする

親亡き後に困る制度ほど、親が元気なうちの整理が重要です。

10|Q&A

Q1|障害のある子の制度は、自動でもらえるものが多いですか?

A|多くは自動では始まりません。障害年金、各種手当、自立支援医療、障害福祉サービス、補装具費、税控除などは、原則として請求・申請・申告が必要です。

Q2|一番取りこぼしやすい制度は何ですか?

A|家庭によって違いますが、障害年金、特別児童扶養手当、特別障害者手当・障害児福祉手当、自立支援医療、障害福祉サービス受給者証、補装具費、税の障害者控除は特に取りこぼしやすいです。

Q3|親亡き後に特に止まりやすい制度は何ですか?

A|自立支援医療の更新、障害福祉サービス受給者証の更新・変更、手帳更新、医療費助成、税の手続きなどは、親が全部管理していると止まりやすいです。

Q4|最初にどこへ相談すればいいですか?

A|まずは市区町村の障害福祉窓口を起点にし、制度ごとに年金事務所、主治医、相談支援専門員、税務手続なら勤務先や税理士・税務署へつなぐ形が実務的です。

Q5|全部を一度に確認できません。何から始めればいいですか?

A|最初は、①今使っている制度を書き出す、②更新がある制度の期限を控える、③まだ確認していない制度を3つだけ選んで窓口へ聞く、の順番で十分です。

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