親亡き後、支援者がいない|地域資源(基幹相談支援等)とつないで体制を作った事例
親亡き後、支援者がいない|地域資源(基幹相談支援等)とつないで体制を作った事例
「きょうだいが頼れない」「親戚もいない」「支援者の名前が思い浮かばない」——親亡き後の不安で、いちばん重いのは“お金”よりも相談できる人がいないことだったりします。
でも、ここで大切なのは“特別な支援者”を探すことではありません。地域には、本人と家族を支えるための仕組み(相談支援・基幹相談支援など)があり、つながり方さえ分かれば体制は作れます。
最初に結論
支援者がいないときは、「人」ではなく「仕組み」につながるのが最短ルートです。
① 入口:相談支援事業所(相談支援専門員)に“担当”を持つ
② 困難:基幹相談支援センター等に“地域の調整役”として入ってもらう
③ 継続:担当者会議+支援者ノート(情報共有)で、親以外が回せる体制にする
※本記事はモデル事例です。自治体・地域の運用、障害福祉サービスの利用状況により具体的な手順は変わります。
0. 「支援者がいない」とは何が足りない状態?(3つの不足)
まず前提として、支援者が“ゼロ”というより、実務では次のどれか(または複数)が欠けています。
-
不足①:窓口(担当)がいない
困ったときに「まず誰に連絡すればいいか」が決まっていない状態。 -
不足②:連携(会議体)がない
相談先はあるが、医療・福祉・家族・本人の情報がつながっておらず、支援が点で止まる状態。 -
不足③:情報(引き継ぎ資料)がない
親しか知らない情報が多く、親が倒れると生活が止まる状態(服薬、支払い、連絡先、本人のこだわり等)。
この記事は「誰かいい人を探す」ではなく、不足①〜③を埋める“体制づくり”の手順を、事例ベースで説明します。
1. 解決事例:基幹相談支援等とつないで“親以外でも回る体制”を作った
個人が特定されないよう調整したモデル事例です。ポイントは「親が頑張る」から「地域の仕組みが回る」に切り替えたことでした。
状況(困っていたこと)
- 子:知的障害・精神障害(併存も含む)。生活は親がほぼ一人で回していた
- 親:高齢化・持病。急変時の入院や介護も現実的
- 家族:きょうだいは遠方/関係が薄い。親戚も頼れない
- 支援:福祉サービスは部分的に利用しているが、“担当者”が固定されておらず相談先迷子
- リスク:親が倒れた瞬間に「誰も連絡できない」「何から手続きするか分からない」
やったこと(体制づくりの中身)
- 相談支援事業所につなぎ、相談支援専門員を“担当”として固定
- 基幹相談支援センター等に“困難事例・地域連携”として入ってもらい、関係機関を整理
- 担当者会議を開催(福祉・医療・家族・必要なら行政)し、役割分担を明文化
- 支援者ノート(引き継ぎ資料)を作成:連絡先、服薬、こだわり、金銭・契約の要点
- 緊急時フローを作成:救急搬送時・親の入院時に誰が動くか
結果:親が不在でも、まず相談支援専門員へ連絡→必要に応じて基幹相談支援等が調整→支援者が動ける、というルートができ、生活が止まりにくくなりました。
2. 地域資源の地図:相談支援・基幹相談支援・行政の役割を整理
ここが分かると、電話する先が迷いません。ざっくり整理すると、次のイメージです(※自治体で名称が違うことがあります)。
| 機関 | 主な役割 | こんな時に強い |
|---|---|---|
| 相談支援事業所 (相談支援専門員) |
本人・家族の相談、福祉サービス利用の調整、計画(サービス等利用計画)の作成・モニタリング | “担当”として継続支援、担当者会議の開催、生活課題の整理 |
| 基幹相談支援センター等 | 地域の相談支援の中核、困難事例支援、関係機関の連携促進、支援者支援 | 支援が詰まった時の調整役、複数機関が絡むケースの交通整理 |
| 行政(障害福祉課等) | 支給決定(サービス量)、手当・制度案内、事務手続き | 申請手続き、支給量見直し、緊急性の判断に関わる場面 |
| 地域の支援機関 (生活支援センター等) |
日常生活の相談、居場所、地域支援、同行など(地域差あり) | 孤立防止、日常の見守り、生活リズムの支え |
| 社協等 | 日常生活の支援、権利擁護、地域ネットワーク(地域差あり) | 金銭管理の支援につながることも(利用要件あり) |
実務の鉄則
「まず相談支援専門員(担当)を持つ」→「詰まったら基幹相談支援等に調整を頼む」。
これで、支援が“点”から“線”になります。
3. 今日からできるチェックリスト(連絡先・情報・会議体)
体制づくりは、難しい書類よりも「情報を揃える」ほうが先です。まずはここからでOKです。
(A)連絡先:最低限これだけは確保
- 相談支援専門員(担当):名前・電話・事業所名(平日連絡先/緊急時の扱い)
- 基幹相談支援センター等:地域の中核(困難時の相談先)
- 主治医・通院先:診療科・電話・受診間隔・服薬情報
- 福祉サービス事業所:生活介護、就労、居宅、短期入所など(担当者名)
- 緊急連絡の“第二候補”:親が動けない時の連絡先(親族でなくても可)
(B)引き継ぎ情報:親しか知らない情報を減らす
引き継ぎ資料(支援者ノート)は、立派である必要はありません。「困るところだけ先に」埋めます。
- 本人の基本:住所・生年月日・障害特性・配慮事項(苦手、パニックのサイン、落ち着く方法)
- 医療:服薬、アレルギー、既往歴、主治医、入院歴、同意が難しいポイント
- 生活:食事、睡眠、ルーティン、金銭の扱い、スマホ・SNSの注意点
- 制度:障害年金・手当、受給状況、受給口座、更新時期の目安
- 支払い:家賃、公共料金、携帯、保険、施設費など「止まると困る支払い」
(C)会議体:担当者会議を“親亡き後仕様”にする
担当者会議は「現状共有」で終わると効果が薄いです。親亡き後の備えとしては、次を決めるのが目的です。
- 誰が窓口になるか:困ったら最初に連絡する“担当”を固定
- 緊急時の役割分担:救急搬送・親の入院・住まいのトラブル時に誰が何をするか
- 住まいの候補:現状維持/グループホーム/施設/短期入所のバックアップ
- お金の管理:本人ができる範囲、支援で補う範囲、法的支援の要否
4. 手続きの流れ:誰が・いつ・どこで・何を・どの書類で
「体制づくり」は、やることが多く見えますが、順番を守るとスムーズです。
-
STEP 1
入口を決める(相談支援専門員を“担当”に)
誰が:親(または本人)
どこで:地域の相談支援事業所(自治体窓口から紹介を受けることも)
何を:「親亡き後が不安。担当を持ちたい」と伝える -
STEP 2
現状の整理(困りごとの棚卸し)
何を:医療・生活・お金・住まい・支援の利用状況を整理
書類:受給者証、障害者手帳、年金関係、通院情報(あれば) -
STEP 3
詰まりポイントがあれば基幹相談支援等へ(調整役)
いつ:「どこも受けてくれない」「複数機関が絡んでまとまらない」など困難時
何を:地域資源の調整、困難事例としての支援者支援 -
STEP 4
担当者会議を開く(役割分担を決める)
誰が:相談支援専門員が主催することが多い
何を:窓口・緊急時対応・住まい・支払いの最低ラインを決める -
STEP 5
引き継ぎ資料を作る(支援者ノート)
何を:連絡先・服薬・支払い・本人の特性を1か所にまとめる
ポイント:完璧を目指さず、更新できる形で -
STEP 6
不足を補う(住まい・お金・法的支援につなぐ)
必要に応じて、短期入所・グループホーム見学、金銭管理支援、後見・任意後見・信託・遺言などを検討します。
5. 実務のコツ:担当者会議を“親亡き後仕様”にする方法
ここが体制づくりの要です。会議で決めるべきことを、現場で使える形に落とし込みます。
会議で決める「4つの成果物」
| 成果物 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ①窓口表 | 困ったら最初に連絡する人(担当)/不在時の代替連絡先 | 迷わないことが最優先 |
| ②緊急時ルール | 救急時・親が入院した時・行方不明時などの連絡順 | 夜間・休日の現実も踏まえる |
| ③住まいのバックアップ | 短期入所の利用、候補GH/施設の情報、見学・申込みの予定 | “平時に動く”が効く |
| ④お金の管理方針 | 本人の管理範囲/支援で補う範囲/法的支援の要否 | 「今はできる」が将来は変わる前提で |
会議がうまく回る言い方(親の負担を減らす)
「親がいなくなった後に困らないために、“担当”と“連絡ルート”だけ先に決めたい」
こう言うと、焦点がぶれにくく、関係機関も動きやすくなります。
6. 注意点:制度の限界と、法的支援(後見・信託等)との接続
地域資源で体制は作れますが、万能ではありません。特に「契約」「財産管理」「相続」は、法的な枠組みが必要になる場面があります。
地域資源だけでは詰まりやすい場面(例)
- 本人が契約できない:施設入所の契約、賃貸契約、重要な同意が必要な場面
- お金の管理が崩れる:未払い、浪費、詐欺被害、口座管理ができない
- 相続が発生:遺産分割協議や名義変更など“法律行為”が必要
接続する選択肢(極端な断定はしません)
- 成年後見:意思能力が低下している場合に現実的なことが多い(裁判所の枠組み)
- 任意後見:契約できるうちに“将来の代理”を予約する(家族会議との相性が良い)
- 家族信託:財産管理を“目的型”で設計(向き不向きあり)
- 遺言:相続時の揉め・停滞を減らす(遺留分等も含めて設計)
実務では「地域資源で体制を作る」→「詰まる論点だけ法的支援で補う」という順番が、負担が少なく進みやすいです。
7. よくある失敗(相談先迷子/丸投げ/情報が散らばる)
- 失敗① 相談先迷子:役所・病院・事業所を転々として“担当”が決まらない
- 失敗② 丸投げ:「どこかが何とかしてくれる」と思い、情報提供が不足して支援が進まない
- 失敗③ 会議なし:個別に相談して終わり、関係機関がつながらず支援が点で止まる
- 失敗④ 情報が散らばる:服薬・支払い・連絡先がバラバラで、緊急時に混乱する
- 失敗⑤ 住まいの先送り:必要になってから探して空きがなく詰む(短期入所も含めて早めが有利)
現実的な一手
失敗①〜⑤をまとめて減らすのが、「担当を固定」→「担当者会議」→「支援者ノート」の3点セットです。
8. Q&A(どこに電話?費用は?本人が拒否したら?)
Q1. まず、どこに連絡すればいいですか?
いちばん現実的なのは、相談支援事業所(相談支援専門員)につながって担当を持つことです。
すでに利用している福祉サービスがあるなら、その事業所に「相談支援につなぎたい」と相談するのも近道です。
複数機関の調整が必要・困難が大きい場合は、基幹相談支援センター等が助けになります。
Q2. 「基幹相談支援センター」って、本人が直接利用する場所ですか?
地域によりますが、基幹相談支援は「地域の支援体制づくり」「困難事例の支援」「支援者支援」に強い機関です。
本人・家族の直接相談の入口になることもありますが、実務では“調整役として入ってもらう”と効果が出やすいです。
Q3. 本人が「相談されたくない」「会議が嫌」と言います。どうすれば?
無理に進めると関係が崩れることがあります。まずは目的を「管理」ではなく、本人が困らないための段取りとして共有するのがコツです。
例:「親が倒れた時に、君が困らないように“連絡先だけ”決めたい」
小さく始めて、成功体験を積むのが現実的です。
Q4. 体制づくりにお金はかかりますか?
相談支援や基幹相談支援につながること自体は、制度の枠組みで進むことが多いです(自治体・利用状況による)。
一方で、後見・任意後見・信託・遺言などの法的支援を組み合わせる場合は費用が発生します。
まずは地域資源で体制を作り、必要な論点だけ法的支援で補うと、無駄が少なくなります。
Q5. きょうだいが非協力的でも進められますか?
進められることが多いです。体制づくりは「家族が全員一致」よりも、窓口(担当)と連絡ルートを作るほうが先です。
ただし、相続や大きな財産管理が絡む場合は、後で法的論点が出やすいので、早めに専門家に整理してもらうと安全です。
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