きょうだいが遠方で支援できない|役割分担と連絡ルールを“家族会議”で決めた事例

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きょうだいが遠方で支援できない|役割分担と連絡ルールを“家族会議”で決めた事例

「きょうだいは悪気がない。でも遠方で、日常の支援は無理」——親亡き後の準備でよく起きる現実です。
ここで詰まる原因は、助ける気持ちの有無ではなく、“役割と連絡のルールが未設計”であることがほとんど。
逆に言えば、家族会議で「できる範囲の協力」を形にしておくと、遠方でも支援は回りやすくなります。

最初に結論
遠方きょうだい問題は、“人を増やす”より“ルールを作る”方が解決が早いです。
役割を「日常/お金/緊急/手続き」に分ける
連絡ルールを「平時/緊急/重大決定」で分ける
決めた内容を“議事録(合意メモ)”として残す(後で揉めない)

※本記事はモデル事例です。障害特性、家族関係、地域資源の状況により最適解は変わります。

0. 遠方きょうだいがいても支援が回る家・回らない家の違い

遠方きょうだいがいる家庭で、支援が回らない原因はだいたい次の3つです。

  • “連絡の入口”がない:誰に言えばいいか分からず、結局親(同居側)に集中する
  • お金が曖昧:立替・精算・負担割合が不透明で、不公平感が増える
  • 重大決定の手順がない:入所・転居・後見・相続などで意見が割れて揉める

逆に回る家は、遠方きょうだいが「現場に来る」代わりに、“決める・支える・確認する”役割を担っています。

1. 解決事例:家族会議で役割分担と連絡ルールを決め、支援が安定

個人が特定されないよう調整したモデル事例です。遠方きょうだいが「支援できない」ではなく、「支援の形が決まっていない」状態でした。

状況

  • 本人:知的障害(+精神症状の波)で、生活は親中心で回っている
  • 親:高齢化。通院・手続き・お金の管理が重荷
  • きょうだい:遠方(仕事・子育て)で頻繁に帰省できない
  • 課題:親が倒れた時の代替がない/支払い・連絡が混乱する恐れ

家族会議で決めたこと(核心)

  1. 役割分担:同居側=日常対応、遠方きょうだい=「お金・手続き・重大決定」の担当
  2. 連絡ルール:平時は週1共有、緊急は即時電話、重大決定はオンライン会議で合意
  3. 資料の整備:支援者ノート(連絡先・服薬・支払い)を共有フォルダに格納
  4. 地域資源との接続:相談支援専門員を“窓口”にし、家族だけで抱えない
  5. 議事録(合意メモ):決めた内容を文書で残し、後日更新する運用に

結果:同居側の負担が“孤独な負担”から“チームの負担”に変わり、遠方きょうだいも「何をすれば役に立つか」が明確になりました。

2. まず整理:支援を「4つの役割」に分ける(遠方でもできる領域)

役割を分けると、遠方でも支援できる範囲が増えます。まずはこの4分類で考えます。

役割 具体例 遠方でも可能?
日常 通院同行、買い物、見守り、事業所対応 △(頻度は難しい)
お金 固定費の把握、支払い設計、立替精算ルール、口座管理の方針
緊急 緊急連絡の一次/二次、救急時の意思決定補助、入院時の段取り (ルール次第)
手続き 障害福祉・年金・更新、後見/任意後見、相続、契約の判断

コツ
遠方きょうだいは「現場に来る代わりに、判断と仕組みづくりを担う」と、負担のバランスが取りやすいです。

3. 連絡ルールの作り方(平時/緊急/重大決定)

連絡が混乱する家は、「全部が緊急」「全部を全員に連絡」になりがちです。
連絡ルールは3段階に分けると回ります。

連絡ルール(テンプレ)

平時 緊急 重大決定
区分 いつ 連絡手段 誰に 目的
平時 週1回(または月2回) LINE/メールで要点共有 家族+必要なら相談支援専門員 情報の蓄積・不安の先取り
緊急 救急搬送、行方不明、強い不穏等 電話(つながらなければ次へ) 一次連絡→二次連絡の順番を決める 即時対応・判断の補助
重大決定 入所/転居、後見・信託、相続、契約等 オンライン会議(30〜60分) 決定権に関わる家族+支援者 合意形成・議事録作成

ルールは“守れる現実”が大事です。週1が無理なら隔週でもOK。緊急は「順番」だけでも決めると効果が出ます。

4. チェックリスト:家族会議で決めるべき議題30

家族会議は「何を話すか」が9割です。遠方きょうだいがいる場合の“実務版”の議題です。

(1)役割分担(10)

  • 日常対応:同居側/近居側/支援者で何を担う?
  • 通院・服薬:誰が情報を把握し、誰が更新する?
  • 福祉サービスの窓口:相談支援専門員の担当は誰?
  • 金銭:固定費の把握担当、支払い担当、チェック担当
  • 書類:更新(年金・受給者証など)の担当
  • 緊急時:一次連絡・二次連絡・現地対応の担当
  • 入院時:荷物・病院連絡・支払いの担当
  • 住まい:見学・申込み・短期入所の準備担当
  • 将来の手続き:後見/任意後見/信託/遺言の検討担当
  • 議事録・更新:誰が書いて、どこに保管する?

(2)連絡ルール(8)

  • 平時共有の頻度(週1/隔週/月2など)
  • 共有フォーマット(例:体調/支払い/予定の3点だけ)
  • 緊急の連絡順(電話がつながらない場合も含む)
  • 夜間・休日の対応(誰が現地に行くか)
  • 重大決定はオンライン会議で合意(出席者・時間)
  • 支援者(相談支援等)への共有範囲
  • 本人に共有する内容・方法(不安を増やさない)
  • 連絡先の更新ルール(年1回見直し)

(3)お金・住まい・法的支援(12)

  • 固定費一覧(家賃・公共料金・携帯・保険・施設費など)
  • 支払い方法(引落中心に寄せる/誰が管理する)
  • 立替精算ルール(領収書・報告頻度・精算タイミング)
  • 障害年金・手当の状況(更新時期の目安)
  • 住まいの候補(GH/施設/在宅支援)と見学計画
  • 短期入所のバックアップ(“空きがない”前提で複線)
  • 身元保証・死後事務の必要性
  • 成年後見が必要になりそうなサイン
  • 任意後見・信託・遺言の優先順位
  • 相続が発生した時の連絡・手続きの窓口
  • 親の財産凍結リスク(認知症)への備え
  • 合意が割れた時の決め方(多数決?第三者同席?)

5. 手続きの流れ:誰が・いつ・どこで・何を・どの書類で

「家族会議」も手続きです。段取りを決めると一度で決まりやすくなります。

  1. STEP 1 事前準備(議題と資料を揃える)
    誰が:主催者(多くは同居側)+遠方きょうだい
    何を:議題リスト、固定費一覧、連絡先一覧、本人の状況メモ
    書類:受給者証、障害者手帳、年金情報、通院・服薬情報(ある範囲で)
  2. STEP 2 会議(60分)で“決める”
    どこで:対面が難しければオンライン(画面共有が便利)
    成果物:役割分担表、連絡ルール、次回までの宿題
  3. STEP 3 議事録(合意メモ)を作成して共有
    誰が:書記(遠方きょうだいが担うと公平感が出やすい)
    どこに:共有フォルダ(家族だけ/支援者も閲覧など範囲を決める)
  4. STEP 4 運用開始(小さく回して調整)
    週1共有を始める、緊急連絡を試す、支援者ノートを更新するなど、実際に回して修正します。
  5. STEP 5 必要なら専門家・地域資源につなぐ
    相談支援専門員との連携、身元保証・死後事務、後見・信託・遺言など、詰まる論点だけ補強します。

6. 注意点:罪悪感・不公平感を増やさない合意形成のコツ

家族会議で一番こじれるのは、「できない」ことへの責め合いです。
合意形成では、次の3つを意識すると空気が変わります。

  • ① できる/できないを先に宣言:遠方きょうだいは「月1帰省は無理」「夜間の現地対応は難しい」など現実を言語化
  • ② 代わりに担う役割を提示:「判断・手続き・お金・議事録」を担うなど、貢献の形を具体化
  • ③ ルール化して公平に:立替精算、決め方、情報共有をルールにし、感情の衝突を減らす

“気持ち”を合わせるより、“手順”を合わせる。これが実務で効く合意形成です。

7. よくある失敗(連絡が混乱/お金が曖昧/議事録がない)

  • 失敗①:緊急時に全員へ一斉連絡→混乱して誰も動けない
  • 失敗②:立替精算が曖昧→不公平感が蓄積して関係が悪化
  • 失敗③:重大決定の手順がなく、入所・後見・相続で揉める
  • 失敗④:議事録がなく「言った言わない」になり、合意が蒸発する
  • 失敗⑤:親が全部抱え続け、突然の入院で支援が止まる

最小セット
まずは「窓口(担当)」「緊急連絡の順番」「固定費の把握」「議事録」の4点だけでも決めると、支援の止まり方が大きく変わります。

8. Q&A(きょうだいが非協力的/決めても守られない/法的手当ては?)

Q1. きょうだいが「関わりたくない」と言います。家族会議は無理ですか?

全員参加が理想ですが、現実には難しいこともあります。
その場合は、まず同居側+支援者(相談支援等)で“体制の骨格”を作るのが先です。
きょうだいには「決めた内容の共有」「必要な時だけの連絡」など、関与のハードルを下げると参加が戻ることがあります。

Q2. 決めても守られません。どうすれば?

ルールが重すぎる可能性があります。まずは「週1共有」など、守れる最小ルールに落とします。
それでも難しい場合は、家族だけで回す前提をやめ、相談支援専門員など地域資源を窓口にして、連絡と調整を仕組みに寄せると安定します。

Q3. お金や契約が絡むと揉めそうです。法的な手当ては必要ですか?

必要になることがあります。特に、本人の意思能力が低下している、財産管理が不安定、相続が近い/発生した、などは要注意です。
実務では「家族会議で方針を固める」→「詰まる論点だけ後見・任意後見・信託・遺言で補強」という順番が負担が少なく進みやすいです。

Q4. 家族会議の議事録は“法的に効きますか”?

議事録は、契約書のように万能ではありませんが、合意の証拠・引き継ぎ資料として非常に効きます。
特に、連絡ルール・役割分担・立替精算のルールが文書化されていると、「言った言わない」や不公平感が大きく減ります。

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