行方不明の相続人がいて手続き停止|不在者財産管理人で解決した事例

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行方不明の相続人がいて手続き停止|不在者財産管理人で解決した事例

相続手続きが止まる典型パターンのひとつが、「相続人の一部と連絡が取れない」ケースです。
遺産分割協議は原則として相続人全員の合意が必要なため、行方不明の相続人がいると、預金解約・不動産名義変更・売却などが前に進みません。

最初に結論(迷ったらここだけ)
① “探した証拠”を揃える(これが申立ての土台)
② 家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる
③ 遺産分割は、管理人の関与+必要に応じて「権限外行為許可」で前に進める
これが、現場で一番再現性の高い解決ルートです。

※本記事はモデル事例です。行方不明の期間・財産内容・相続人関係で最適な手段(失踪宣告等)に変わることがあります。

0. そもそも何が起きる?行方不明の相続人がいると止まる手続き

遺言がない場合の遺産分割協議は、原則として相続人全員の合意が必要です。
そのため、行方不明の相続人が1人いるだけで、次のような手続きが“止まりやすい”です。

  • 預貯金の解約・払い戻し(遺産分割協議書や全員の署名押印が求められる)
  • 不動産の名義変更(相続登記)(協議書の成立が前提になりやすい)
  • 不動産売却・賃貸(名義・同意が揃わないと契約が進まない)
  • 相続税申告の整理(財産の確定や分け方が固まらない)

重要
「連絡が取れないから、とりあえず他の相続人だけで決める」は危険です。
後から無効・やり直しになったり、売却後に揉めたりして、コストも関係も壊れやすいです。

1. 解決事例:捜索→不在者財産管理人→遺産分割を成立させた

個人が特定されないよう調整したモデルケースです。
ポイントは「探す努力」を丁寧に残し、裁判所に“必要性”を伝えられる状態にしてから申立てをしたことです。

状況

  • 被相続人:親(遺言なし)
  • 相続人:きょうだい数名+代襲の甥姪が一部(人数が多い)
  • 相続人のうち1人が長年音信不通。戸籍上は相続人だが、連絡先不明
  • 遺産:不動産(売却予定)+預貯金

困っていたこと

  • 不動産を売って分けたいが、相続人全員の合意が必要で止まる
  • 預金も解約できず、固定資産税・管理費を誰かが立替えている

解決までの流れ(ざっくり)

  1. 音信不通の相続人を探した記録を作る(郵送、親族照会、住民票・附票の確認など)
  2. 家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立て
  3. 管理人が選任された後、遺産分割の方針を固め、必要に応じて権限外行為許可も活用
  4. 結果:不動産売却・預金解約の道筋が立ち、手続きが再稼働

2. まずやること:不在者を“探した証拠”チェックリスト

不在者財産管理人の申立ては、「行方不明です」と言うだけでは弱く、“探したが見つからない”の裏付けが重要です。ここを丁寧にやると、申立てが通りやすく、後の揉めも減ります。

  • 戸籍・附票で住所履歴を確認(最後の住所を特定する)
  • 最後の住所へ郵送(特定記録・簡易書留など):送付日・宛先・結果(転送・不達)を保存
  • 親族・知人への照会:誰にいつ聞いたかメモ(電話でも可)
  • 勤務先・関係先の手がかり:名刺、郵便物、SNS等(無理のない範囲で)
  • 住民票の追跡(取得可否含む):自治体の運用により取れる範囲が変わる
  • 「探索経過書」を作る:何をいつやったか、結果はどうだったかを1枚にまとめる

やりがちな落とし穴
「探すのが面倒だから管理人で」だと、裁判所に必要性が伝わりにくいです。
逆に、上のチェックを埋めていけば、“手続きが止まっている理由”が明確になり、次の一手が出しやすくなります。

3. 不在者財産管理人とは?できること/できないこと

不在者財産管理人は、行方不明の人(不在者)の財産を保全・管理するために、家庭裁判所が選任する人です。
相続の場面では、行方不明の相続人が関係する手続きが止まるため、その人の立場に立って「必要な管理行為」を行い、相続手続きを前に進める役割を担います。

項目 内容 実務の注意
できること 不在者の財産の管理・保全(必要な範囲の行為) 「何のために必要か」を説明できると動きやすい
できない/制限 重大な処分行為(例:不動産売却など)は原則として裁判所の許可が必要になり得る 権限外行為許可の出番が多い
目的 不在者の利益を守りつつ、全体の手続き停止を解除する 「他の相続人の都合」だけだと弱い。双方の合理性が必要

4. 申立ての流れ:誰が・いつ・どこで・何を・どの書類で

初めての方でも迷いにくいように、実務で詰まりやすいポイントを含めて整理します。

  1. STEP 1 相続人を確定し、不在者の位置づけを明確化
    誰が:相続人側の代表(窓口)
    何を:戸籍で相続関係を確定、不在者が相続人であることを示す
  2. STEP 2 探索(探した証拠)を集める
    何を:郵送記録、附票の確認、親族照会のメモ、探索経過書
    ポイント:「最後の住所」「探した方法」「結果」が揃うと強い
  3. STEP 3 家庭裁判所に申立て
    どこで:原則として不在者の住所地を管轄する家庭裁判所(事案により変動あり)
    何を:不在者財産管理人の選任申立て
    書類:申立書、戸籍類、探索経過書、財産資料(不動産・預金等)、収入印紙、郵券など
  4. STEP 4 管理人選任→必要な権限の整理
    何を:遺産分割に関与する範囲、売却等が必要なら許可申立ての準備
  5. STEP 5 遺産分割を成立→実行(登記・預金解約・売却)
    ポイント:「管理人の署名・同意」+必要に応じて許可を組み合わせ、止まっていた実行手続きを再開

申立てで“通りやすくなる”資料のイメージ

  • 探索経過書(時系列:何をいつ誰がやって、結果どうだったか)
  • 不在者が相続人である根拠(相続関係説明図+戸籍)
  • 止まっている手続きの説明(例:不動産売却ができない/預金が凍結されて管理費を立替中)
  • 財産資料(登記簿、固定資産税通知、残高証明の手がかり等)

※裁判所の運用・必要書類は事案で変わります。早めに「必要書類の確定」だけでも専門家に当てると、申立てがスムーズです。

5. 遺産分割を前に進める実務:管理人+権限外行為許可の使いどころ

不在者財産管理人が選任されたら“終わり”ではなく、そこからが本番です。特に不動産の売却などは、管理行為の範囲を超えることがあり、裁判所の許可(権限外行為許可)が必要になる場面が出ます。

実務での基本方針

  • ① まず合意の骨格を作る:誰が何を相続し、どう実行するか(売却なら売却条件の目安)
  • ② 管理人が不在者の利益を害さないことを説明できる形にする(価格の合理性、必要性)
  • ③ 必要なら許可を取りに行く:不動産売却・大きな処分など
場面 なぜ許可が問題に? 準備すると強い資料
不動産売却 不在者の権利を大きく動かす処分行為になりやすい 査定書(複数)、固定費の試算、空き家リスク、売却の必要性
共有解消 持分の移転・代償金などが絡む 分割案、評価資料、代償金の根拠
大きな支出 管理の範囲を超える支出と見られることがある 見積書、緊急性、放置時の損害見込み

よくある誤解
「不在者財産管理人がいれば、何でも勝手に決められる」は誤りです。
管理人はあくまで不在者の利益を守る立場なので、全体の都合だけで進めると許可が下りにくくなります。
逆に、必要性と合理性が資料で示せれば、前に進む可能性が高まります。

6. よくある失敗例(申立てが通らない/時間が伸びる原因)

  • 失敗①:「探していない」状態で申立て→必要性が弱く、追加資料が多くなる
  • 失敗②:探索経過が口頭だけで、証拠(郵送記録等)が残っていない
  • 失敗③:財産資料が薄く、管理人に何をしてほしいのかが曖昧
  • 失敗④:売却条件が雑で、不在者の利益を害する疑いが出る
  • 失敗⑤:相続人間の連絡がバラバラで、管理人・裁判所対応が混乱
  • 失敗⑥:最初から失踪宣告に走る(期間要件があり、時間がかかるケースが多い)

7. Q&A(失踪宣告との違い/障害のある相続人がいる場合/費用・期間)

Q1. 不在者財産管理人と「失踪宣告」はどう違う?

ざっくり言うと、不在者財産管理人=生きている前提で“財産を管理する仕組み”失踪宣告=一定期間の行方不明を前提に“法律上死亡した扱いにする手続き”です。
失踪宣告は要件(期間など)があり時間がかかることが多いので、「相続を止めない」目的なら、まず不在者財産管理人が現実的な選択肢になりやすいです。

Q2. 相続人に知的障害・精神障害の方もいます。不在者財産管理人と合わせて進められる?

進められます。ただし論点が2つ(不在者/意思能力)になるので、先に整理しておくと止まりにくいです。
障害があること自体が問題ではなく、その時点で内容を理解して判断できるか(意思能力)がポイントです。必要に応じて成年後見等も含め、全体の設計を組みます。

Q3. 期間はどれくらい?費用は?

事案の複雑さ・裁判所の運用・必要な追加資料の有無で変わります。
目安としては、探索が整理されていて、申立て資料が揃っているほどスムーズです。
費用も、申立て実費(印紙・郵券等)に加え、管理人の報酬や専門家費用が関わることがあります。「何をどこまで依頼するか」で設計できます。

Q4. 行方不明の相続人の取り分はどうなる?

基本は、不在者の利益を害さないように扱います。
遺産分割で不在者の取り分をゼロにするような設計は難しく、合理性・公平性が求められます。
だからこそ、売却する場合は査定などで価格の妥当性を示し、不在者の取り分が適切に確保される形に整えることが重要です。

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「相続人が行方不明で止まっている」「不動産の管理費が限界」「調停は避けたい」——この状況は、“探した証拠”を揃える→申立ての順で動くと前に進みやすいです。
ご家庭の事情に合わせて、不在者財産管理人/失踪宣告/他の選択肢も含めて整理します。

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