遺言がなく相続人が多すぎる|戸籍収集→相続関係説明図→調停回避でまとめた事例
遺言がなく相続人が多すぎる|戸籍収集→相続関係説明図→調停回避でまとめた事例
相続人が多い相続は、「誰が相続人か」の確認だけで時間がかかり、話し合いも“声の大きい人”に引っ張られて崩れやすいです。
でも、最初の段取りを間違えなければ、家庭裁判所の調停まで行かずにまとまるケースは十分あります。
最初に結論(この記事で持ち帰る3点)
① 戸籍収集のゴールは「相続人の確定」ではなく「全員が納得する見える化」(相続関係説明図)
② 先に“争点”を作らず、手順を決める(議題・期限・役割・連絡ルール)
③ 合意形成は「一発の会議」より「個別ヒアリング→全体合意」の2段階が強い
※本記事はモデル事例です。実際は家族関係・財産内容で最適解が変わります。揉めが深い場合は、早めに専門家を挟む方が“結果的に疲れません”。
0. なぜ「相続人が多い」と揉めやすいのか(原因3つ)
-
原因①:情報が散らばり、疑心暗鬼が生まれる
「誰が何を知っているか」がバラバラだと、悪意がなくても「隠してる?」が発生します。 -
原因②:合意の人数が増えるほど“決めない理由”が増える
1人が保留すると全体が止まります。だからこそ、最初に期限と決め方を決める必要があります。 -
原因③:財産より「感情」が論点になりやすい
介護・同居・親族関係の歴史が出やすく、話が過去に戻ってまとまりにくいです。ここは、会議の設計で整えます。
1. 解決事例:戸籍収集→相続関係説明図→調停回避で合意できた
個人が特定されないよう調整したモデルケースです。ポイントは「法律論で勝つ」ではなく、“全員が同じ地図を見て話せる状態”を先に作ったことです。
状況
- 遺言なしで相続発生
- 相続人が多数(きょうだい+代襲相続で甥姪も含む)
- 遠方の相続人も多く、連絡が取りづらい
- 遺産に不動産があり、売る/持つで意見が割れそう
つまずきの芽(このままだと調停に行きやすい)
- 「誰が相続人か」がはっきりせず、話し合いの参加者が定まらない
- 戸籍を取る人が複数いて、重複・抜け・不信感が出る
- いきなり“分け方”を話し始め、感情が爆発しそう
やったこと(順番を固定して“揉めの火種”を消した)
- 窓口(代表)を1人に固定し、連絡・収集・共有を一本化
- 戸籍収集を完了し、相続人を確定(抜け漏れ防止)
- 相続関係説明図を作成し、全員に同じ資料を事前共有
- 財産一覧(不動産・預金など)を“同じフォーマット”で見える化
- 家族会議は、「結論を出す会」ではなく「決め方を決める会」→「合意を作る会」の2回に分けた
- 結果:全員の署名押印まで到達し、調停に進まず遺産分割協議が成立
2. 最初の7日チェックリスト(止まる前にやること)
相続人が多いほど、「最初にやること」を外すと、後半で倍の労力になります。ここは“行動”に落とし込みます。
- 窓口(代表)を1人決める:連絡・書類・共有の責任者を固定(“全員でやる”は破綻しやすい)
- 連絡手段を決める:メール/LINE/郵送。混在させない。全員に同じ情報が届く仕組み
- 遺言の有無を確認:公正証書・自筆・保管制度の可能性も含めて確認
- “争点禁止”を宣言:最初の1回目は「相続人確定」と「財産の棚卸し」だけ、分け方は後日
- 戸籍収集の担当と期限:誰が、どこまで、いつまでに。重複を防ぐ
- 財産の入口情報を回収:固定資産税通知、通帳、保険、郵便物など(捨てない)
注意
相続人が多いと「印鑑を集めれば終わり」と思われがちですが、実務は逆です。
まず“相続人が確定している”ことが前提で、確定前に協議書を作ると差し戻し・やり直しになりがちです。
3. 戸籍収集の実務:誰が・何を・どこで取る?
戸籍収集は「集めること」が目的ではなく、相続人の抜け漏れをゼロにすることが目的です。特に代襲(亡くなった子の子=孫、甥姪)が絡むと、数が一気に増えます。
3-1. 戸籍収集の基本セット(まずはここ)
- 被相続人:出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)
- 相続人全員:現在の戸籍(続柄確認用)
- 住所関係:住民票除票や戸籍の附票(必要になる場面がある)
※「どこまで必要か」はケースで増減します。代襲が出ると追加が出やすいので、最初から“追加が前提”で計画すると止まりません。
3-2. 相続人が多いときの“戸籍収集のコツ”
- コツ①:代表が一括で管理(取得担当が複数だと重複・抜け・紛失が増えます)
- コツ②:取得ログを残す(いつ・どこの役所で・何を取ったかのメモ)
- コツ③:相続人の“枝”ごとに束ねる(例:長男系/次男系/亡くなった長女系=代襲の枝)
- コツ④:共有は「写し」ベース(原本の回し合いは揉めの元。データ共有のルールを決める)
4. 相続関係説明図(&法定相続情報)で“全員が納得”を作る
相続人が多いとき、合意形成のカギは「誰が相続人か」を“感覚”ではなく“図で共有”することです。 このとき使えるのが、①相続関係説明図(自分たちの説明資料)と、②法務局で取れる法定相続情報(公的な一覧図)です。
| 項目 | 相続関係説明図 | 法定相続情報 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 家族・相続人に説明するための資料(実務の土台) | 法務局が認証する“相続人一覧の写し” |
| 強み | 説明しやすい/会議が進む/認識ズレを減らす | 金融機関・不動産・税務などで戸籍提出を減らせる |
| 相続人が多いとき | 全員が同じ地図を見る効果が大きい | 手続きが一気に軽くなる(原本回しが減る) |
この事例で効いたポイント
相続関係説明図を作ったうえで、全員に「この図で間違いないか」を確認してから、次の議題(財産・分け方)に進みました。
“誰が相続人か”で揉める余地を先にゼロにしたことで、調停に行きやすい「前提争い」を避けられました。
5. 調停回避の合意形成:家族会議の進め方(議題・言い方・議事メモ)
相続人が多い相続は、会議の設計で勝負が決まります。コツは、「全員同席=一発勝負」をやめることです。
5-1. まずは個別ヒアリング(全員に同じ質問をする)
代表(窓口)が、相続人それぞれに短時間でヒアリングします。
ポイントは、“説得”ではなく“情報収集”です。
- 今回、何を一番心配していますか?(不安の種類)
- 譲れない条件は何ですか?(絶対条件)
- 逆に、譲れる点はありますか?(妥協点)
- 連絡は何が一番やりやすいですか?(連絡手段)
- いつまでに決めたいですか?(期限感)
5-2. 全体会議は「議題」と「決め方」を固定する
会議の型(おすすめ)
- 第1回:前提の共有(相続関係説明図・財産一覧)+「決め方」合意(期限・役割・連絡ルール)
- 第2回:分け方の合意(案を複数提示→条件調整→合意→協議書の方向性)
“決め方”として先に合意しておくと強い項目
- 議題以外(過去の不満など)に逸れたら、いったん保留して別枠にする
- 感情が高ぶったら、休憩を入れる(時間を区切る)
- 話をまとめる司会役を置く(代表でも、第三者でもOK)
- 決まったことは、その場で短くメモにして共有(後で言った言わないを防ぐ)
5-3. 「議事メモ」は長文より“短く確実”が効く
調停に進むケースは、実は「内容」よりも“認識が揃っていない”ことが原因になりがちです。
だから議事メモは、次の5点だけでも十分に価値があります。
- 日時・参加者・欠席者
- 共有資料(相続関係説明図、財産一覧、査定など)
- 決まったこと(箇条書き)
- 保留事項(次回の議題)
- 次回日程・宿題(誰が何をいつまでに)
それでも揉めそうなとき
「調停=負け」ではありません。調停は、対立の道具ではなく整理の道具です。
ただ、本事例のように“前提の見える化”と“会議設計”で回避できるケースも多いので、まずはそこを整えましょう。
(深い対立がある場合の落としどころは、関連記事も参考にしてください)
6. 手続きの流れ:誰が・いつ・どこで・何を・どの書類で
「結局、何をどの順番で?」を、相続人が多いケース向けに、実務で回る形にまとめます。
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STEP 1
窓口(代表)決定+連絡ルール
誰が:相続人のうち1人(調整役)
いつ:最初の1週間
やること:連絡手段の統一/資料共有のルール/スケジュール -
STEP 2
戸籍収集(相続人確定)
どこで:市区町村役場(本籍地)など
書類:出生〜死亡の戸籍、相続人の戸籍 等 -
STEP 3
相続関係説明図(必要なら法定相続情報)作成
やること:全員に同じ資料を事前共有し、認識ズレを解消
効果:金融機関・不動産手続きの負担が減る -
STEP 4
財産調査→財産一覧化(同じフォーマット)
書類:固定資産税通知、登記簿、通帳、証券、保険、借入関係、郵便物 -
STEP 5
個別ヒアリング→全体会議(2回構成)
議題:第1回は“決め方”、第2回で分け方合意へ -
STEP 6
遺産分割協議書の作成→署名押印の段取り
注意:人数が多いほど、押印回収の物流が詰まります(郵送の順番・本人確認・印鑑証明の期限管理) -
STEP 7
名義変更・解約・分配(不動産・預金・証券など)
やること:手続きごとに「誰が窓口か」を固定し、同じ説明を何度もしない
7. よくある失敗例(調停に進みやすいパターン)
- 失敗①:相続人が確定しないまま“分け方”を話し始める(前提が崩れてやり直し)
- 失敗②:戸籍・資料を各自がバラバラに集めて不信感が生まれる
- 失敗③:全員同席の一発会議で決めようとして感情が爆発する
- 失敗④:財産一覧がない/評価が揃っていないまま話す(結局“印象”の争いになる)
- 失敗⑤:署名押印の回収が計画されておらず、途中で不備・差戻しが連発
- 失敗⑥:連絡が取れない相続人を放置し、後半で詰む(合意の人数が足りない)
8. Q&A(連絡がつかない相続人/遠方/障害のある相続人がいる場合)
Q1. 相続人の一部と連絡が取れません。どう進める?
まずは「相続人の確定」と「現住所の把握」を丁寧に行います(戸籍の附票などが手がかりになる場面があります)。
ただ、連絡がつかない状態で協議を成立させるのは難しいため、早い段階で“どこで詰まっているか”を特定して、打ち手を切り替えることが重要です。
調停は最後の手段ではなく、整理の手段として検討する価値があります。
Q2. 相続人が多すぎて会議ができません(遠方・日程が合わない)
本記事の事例と同じで、個別ヒアリング→全体合意の2段階にすると回りやすいです。
全体会議はオンラインでもOKですが、資料(相続関係説明図・財産一覧)を事前共有し、当日は「決めること」だけに絞るとまとまりやすくなります。
Q3. 相続人に知的障害・精神障害の方がいます。協議はどうなる?
障害があること自体で相続人から外れることはありません。ポイントはその時点で内容を理解して判断できるか(意思能力)です。
判断が難しい場合は、成年後見などの検討が必要になることがあります。早めに整理しておくと、手続きが後半で止まりにくくなります。
Q4. 未成年の相続人がいて、親も相続人です。どう進める?
親が未成年の代理をすると利益がぶつかる(利益相反)ケースがあり、特別代理人が必要になることがあります。
「なぜ必要か」「どんな場面か」を先に理解しておくと、協議が止まりにくいです。
9. 関連記事(内部リンク)
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「相続人が多くて連絡が回らない」「戸籍が集まらない」「このままだと調停になりそう」——この段階で一度、全体設計を整えるだけで進みやすくなります。
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