遺言が“無効リスク”と言われた|方式・証人・内容を修正して作り直した事例

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遺言が“無効リスク”と言われた|方式・証人・内容を修正して作り直した事例

「その遺言、無効になるかもしれません」——そう言われると不安になりますよね。
でも大丈夫です。遺言は、“正しい方式”“争点が出にくい内容”に整えれば、やり直しがききます。

最初に結論(この記事で分かること)
① 無効リスクは「方式のミス」と「内容の穴」の2種類
② 自筆で不安があるなら、公正証書で“証人設計”まで含めて固める
③ 障害のある子がいる家庭は、相続後の実務(管理・支払い)まで書けると強い

※本記事はモデル事例です。遺言はご家庭の状況で最適解が変わります(相続人関係、遺留分、財産の種類、障害福祉サービス利用状況など)。

0. 「無効リスク」と言われる原因は大きく2つ

遺言の「無効リスク」と言われるものは、実務では次の2種類に分かれます。
ここを分けて理解すると、何を直せば良いかが一気に明確になります。

分類 中身 代表例
方式のミス 法律で決まった“形式”を満たしていない 日付がない/署名がない/本文が自筆でない(自筆証書)など
内容の穴 無効ではないが、解釈争い・実行不能で揉める 財産の特定が曖昧/受遺者の氏名誤り/遺留分を無視/遺言執行者不在 など

この記事では、両方を“チェック→修正→作り直し”の流れに落とします。

1. 解決事例:自筆遺言のリスクを洗い出し→公正証書で作り直した

個人が特定されないよう調整したモデルケースです。
重点は「無効にならない」だけでなく、相続後に“実行できる遺言”にしたことです。

状況

  • 親(作成者)が自筆遺言を作っていたが、家族が「これ大丈夫?」と不安
  • 相続人に障害のある子がいるため、相続後の管理(生活費・支援者)も心配
  • 不動産と預貯金が複数あり、分け方が複雑になりやすい

指摘された“無効・揉め”ポイント

  • 方式面:日付の書き方が曖昧/署名が不明瞭/訂正方法が危うい
  • 内容面:財産の書き方が曖昧で、どの口座か特定できない恐れ
  • 実行面:遺言執行者が決まっておらず、相続後の手続きが止まりそう
  • 家族面:きょうだい間に「不公平感」が出そう(遺留分を踏まえた説明が必要)

やったこと(作り直しの設計)

  1. まず、既存遺言を「方式ミス」と「内容の穴」に分解してチェック
  2. 方式は公正証書遺言へ切替(形式リスクを大幅に低減)
  3. 証人は利害関係がない人で設計(後で揉めない配置に)
  4. 財産は「特定できる書き方」に統一(不動産は地番・登記、預金は支店・口座等)
  5. 遺言執行者を明記し、実行担当を固定
  6. 障害のある子については、受取り方・管理の仕方も含めた実務設計(必要に応じて信託等も検討)

結果:「無効になるかも」不安が消え、相続後に“誰が何をするか”まで見える状態になりました。

2. まず確認:あなたの遺言はどの方式?(自筆/公正証書/秘密証書)

方式 特徴 無効リスク 向いている
自筆証書 自分で書ける。費用が抑えやすい 形式ミスが出やすい/紛失・改ざんリスク 財産が単純/緊急で作りたい/その後に公正証書へ移行予定
公正証書 公証人が作成。原本が公証役場に保管 形式ミスは起きにくい(ただし内容設計は重要) 相続人が多い/揉めそう/障害のある子がいる/財産が複雑
秘密証書 内容は秘密にできるが、実務で使われることは少なめ 手順の理解が難しく、メリットが活かしにくい 事情が特殊な場合(専門家と設計するケース)

「無効リスク」と言われたら、まずは方式をどこに置くか(自筆のまま補強/公正証書へ切替)を決めるのが近道です。

3. 無効になりやすい「方式ミス」チェックリスト

ここでは特に自筆証書で起きやすいポイントを、初心者でも確認できる形にまとめます。 1つでも不安があれば、作り直し(公正証書)を検討する価値があります。

  • 日付が明確か:年月日が特定できる形になっているか(曖昧な日付は危険)
  • 署名があるか:本人が誰か分かる署名になっているか
  • 押印があるか:印鑑の有無・種類でトラブルになることがある
  • 本文が要件を満たしているか:パソコン印字、他人の代筆などは危うい(どこまで自筆が必要か要確認)
  • 訂正の仕方が適切か:二重線や修正が多い場合、訂正方法が問題になりやすい
  • 保管方法が安全か:紛失・改ざん・発見されないリスクがないか

ここが現場の本音
自筆遺言は「形式を完璧にできる人」ほど強い一方、少しでも自信がないなら公正証書へ切り替えるだけでリスクが激減します。
“作ったこと”より、“確実に効くこと”が大切です。

4. 争いになりやすい「内容の穴」チェックリスト(無効ではなく“揉める”)

遺言が無効にならなくても、内容が曖昧だと「結局、調停」ということが起こります。
次の項目は、作り直しで一気に改善しやすいポイントです。

  • 財産の特定ができるか:不動産(登記情報)/預金(銀行・支店・口座)/証券(会社・口座)
  • 受取人(受遺者)を特定できるか:氏名・続柄・住所が曖昧だと後で揉める
  • 遺留分を意識しているか:「全てを一人に」は争いの火種になりやすい
  • 遺言執行者がいるか:相続後の“実行担当”がいないと止まりやすい
  • 相続人が多い・不仲:説明文(付言事項)で“なぜそうしたか”を残すと揉めにくい
  • 障害のある子の“受取り方”:一括で渡すのか、管理者を置くのか、支払いを仕組みにするのか

5. 作り直しの手続き:誰が・いつ・どこで・何を・どの書類で

遺言の作り直しは、手順を固定すればシンプルです。
ここでは「公正証書遺言で作り直す」王道ルートでまとめます。

  1. STEP 1 現状の遺言を棚卸し(方式ミス/内容の穴)
    誰が:本人+信頼できる家族(可能なら専門家)
    やること:リスク洗い出し、修正方針を決める
  2. STEP 2 財産資料を集めて「特定できる書き方」に整える
    何を:登記情報、通帳、残高、証券口座、保険、借入など
  3. STEP 3 遺言の設計(分け方+付言事項+遺言執行者)
    ポイント:遺留分・不公平感・障害のある子の生活設計まで視野に入れる
  4. STEP 4 公証役場と調整(日時・証人・原案)
    どこで:公証役場
    何を:必要書類の確認、証人の手配、当日の段取り
  5. STEP 5 作成・完成(公正証書遺言)
    結果:形式面の不安が大きく減り、実行の設計が明確になる

準備書類の目安(公正証書遺言)

  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 印鑑(実印・認印はケースで)
  • 戸籍(推定相続人との関係確認用)
  • 不動産資料(登記事項証明書など)
  • 預金・証券・保険などの資料(口座情報が分かるもの)
  • 証人の本人確認資料(証人を自分で用意する場合)

※必要書類は内容によって変わります。事前に公証役場とすり合わせると当日がスムーズです。

6. 証人の選び方(公正証書遺言)|NG・安全な設計

公正証書遺言では証人が必要です。ここは「誰でもいい」と思われがちですが、後で揉めないために重要です。

安全な方向(基本)

  • 利害関係がない人(遺言で財産をもらう人や、その近い親族は避ける)
  • 当日確実に来られ、本人確認ができる人
  • 話を聞いても口外しない人(プライバシー配慮)

よくあるNG(揉めの火種になりやすい)

  • 受け取る側(受遺者)や、その配偶者・近い親族を証人にする
  • 証人が当日不安定で、手続きが崩れる(体調・本人確認)
  • 「証人=内容に同意している人」と誤解して、家族関係がこじれる

証人は「内容に賛成する役」ではなく、遺言の作成手続きに立ち会う役です。設計を間違えないことが大切です。

7. 障害のある子がいる家庭の“遺言の書き方”実務ポイント

障害のある子がいる家庭では、「誰に何を残すか」だけでなく、相続後の管理・支払い・支援者まで書けると、実務が止まりにくくなります。

実務で効く3点セット

  • 遺言執行者を置く(相続手続きを動かす“担当者”)
  • 受取り方の設計(一括/段階/管理者を置く等)
  • 付言事項で“想いと理由”を残す(きょうだいの不公平感を減らす)

さらに踏み込むなら、信託や後見(任意後見)を組み合わせて、生活費の支払いを“仕組み”にする方法もあります。

8. よくある失敗例(作り直したのに危ない)

  • 失敗①:方式だけ直して、内容の曖昧さを残した(結局揉める)
  • 失敗②:受遺者の氏名・財産特定が不十分で実行できない
  • 失敗③:遺留分を無視して“全振り”し、争いが激化
  • 失敗④:証人の選定が甘く、後で家族関係がこじれる
  • 失敗⑤:障害のある子の受取り・管理が設計されず、結局後見・信託を後追いで検討する

9. Q&A(古い遺言はどうなる?/複数ある/遺留分は?)

Q1. 作り直したら、古い遺言はどうなりますか?

原則として、後の遺言が前の遺言と矛盾する部分は後の遺言が優先します。
ただし、内容次第で解釈問題が出ることもあるため、作り直すときは「前の遺言との関係」を整理しておくのが安全です。

Q2. 遺留分が心配です。どう考える?

遺留分は、一定の相続人に保障された最低限の取り分です。無視すると、相続後に請求が起きやすくなります。
「全部を特定の人へ」など強い内容にする場合は、遺留分を踏まえた設計(バランス、代償、付言事項の工夫)が重要です。

Q3. 自筆で作り直すのはダメ?

ダメではありません。形式を正確に満たし、内容も特定でき、保管も安全なら有効に機能します。
ただ「無効リスク」と言われる状況では、公正証書へ切替が、最短で不安を減らす選択肢になりやすいです。

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