障害のある子の“家計の見える化”|収入(年金・手当)と支出(住居・食費・医療)モデル

障害のある子の「家計の見える化」|収入(年金・手当)と支出(住居・食費・医療)モデル【保存版】

障害のある子の「家計の見える化」|収入(年金・手当)と支出(住居・食費・医療)モデル

障害のある子の「親亡き後」を考えるとき、住まい・支援者・医療と同じくらい大事なのが、家計の見える化です。

ただ、実際には「何となく赤字かも」「親が足りない分を補っている」「年金と手当で回るはずだけど、なぜか貯まらない」と感じながら、数字をきちんと並べないままになっているご家庭も少なくありません。

家計が見えにくくなる理由は、収入と支出が複雑だからです。収入は、障害年金、障害年金生活者支援給付金、自治体独自手当、就労収入、家族からの補助など複数あります。支出も、住居費、食費、医療費、通信費、日用品だけでなく、被服費、交通費、更新費、家電の買い替え、入院時の出費など、月ごとに揺れます。

結論からいうと、家計の見える化は 「毎月いくら入るか」だけでなく、「毎月必ず出るもの」「年に数回出るもの」「親が無意識に負担しているもの」 を分けて書くことがポイントです。これができると、「今の生活が続くのか」「グループホームや一人暮らしに移ったら何が足りないのか」が見えやすくなります。

この記事の結論

  • 家計の見える化は、収入を固定・変動に分けることから始めると整理しやすいです。
  • 支出は、固定費(住居・食費・通信など)と、変動費(医療・交通・日用品・余暇)に分けると実態がつかみやすいです。
  • 一番見落としやすいのは、年に数回の支出と、親の持ち出しです。
  • モデル家計は、親と同居グループホーム一人暮らしで大きく変わります。
  • 医療費は、自立支援医療や助成を前提に、実際の窓口負担+交通費で見ると現実に近づきます。
  • 家計表は、親亡き後の制度設計の土台です。成年後見や信託を考える前にも、先に数字を見える化する意味があります。

1|なぜ「家計の見える化」が必要なのか

障害のある子の生活設計で家計が大事なのは、単に「お金が足りるか」の問題ではありません。家計が見えていないと、次の判断が全部あいまいになりやすいからです。

  • グループホームへ移ると、毎月いくら必要か
  • 一人暮らしは現実的か
  • 親が今いくら負担しているか
  • 親亡き後に何が足りなくなるか
  • 就労収入が減った時にどのくらい持ちこたえられるか

逆に、数字が見えると、制度や支援の使い方も考えやすくなります。たとえば、「家賃が重すぎるから住まいを見直す」「医療費より交通費が重い」「食費より日用品費が膨らんでいる」「年1回の更新費で毎回赤字になる」など、打ち手が具体的になります。

家計の見える化は、節約のためだけではありません

住まい・医療・就労・支援制度を、現実に乗る形へ調整するための作業です。親亡き後を考えるなら、制度設計の前に、まず家計を数字で見る意味があります。

2|まず整理したい収入の全体像|年金・手当・就労収入

収入は、「毎月ほぼ固定で入るもの」と「月によって変わるもの」に分けると整理しやすいです。

固定収入になりやすいもの

収入の種類 メモ
障害年金 障害基礎年金、障害厚生年金 等級や初診日、加入歴で金額が変わる
年金生活者支援給付金 障害年金生活者支援給付金 要件に当てはまる場合に上乗せになる
国・自治体の手当 特別障害者手当、自治体独自手当 自治体差・所得制限・在宅要件などを確認
家族からの定額補助 毎月の仕送り、家賃補助 親の持ち出しとして別枠で見える化するとよい

変動収入になりやすいもの

  • 就労継続支援A型・B型の収入
  • 一般就労の給与
  • 賞与・一時金
  • 単発の家族援助

※ここで大切なのは、制度上もらえるはずの金額 と、実際に毎月家計へ入る金額 を分けることです。振込時期が2か月ごと、数か月ごとのものは、月割りに直して家計表へ入れると見やすくなります。

収入整理のコツ

収入は3段に分けると見やすいです

① 生活の土台になる固定収入
② 働けた月だけ増える変動収入
③ 親や家族の持ち出し

この3段に分けるだけで、「制度で回っている部分」と「家族が穴埋めしている部分」がかなり見えやすくなります。

3|支出の全体像|住居・食費・医療・日用品・年払い

支出は、まず 毎月必ず出るもの月によって変わるもの年に数回出るもの に分けましょう。

毎月の固定費

  • 家賃・グループホーム利用関係費
  • 食費
  • 通信費
  • 電気・ガス・水道
  • 通院の定期交通費
  • サブスク・見守りサービスなど

変動費

  • 医療費・薬代
  • 日用品
  • 被服費
  • 外出・余暇
  • 交際費
  • 急な移動費

年に数回の支出

  • 賃貸更新料
  • 家電の買い替え
  • 冠婚葬祭
  • 帰省費用
  • 入院や手術時の臨時出費
  • 障害福祉サービスの一時的な自己負担増

一番の落とし穴

月の家計だけ見て、年払い支出を見ていないことです。月次では黒字でも、更新料や家電の買い替えで一気に赤字になることがあります。

4|家計表はこう作る|固定費・変動費・親の持ち出しを分ける

家計表を作るときは、最初から細かくしすぎない方が続きます。おすすめは、次の順番です。

ステップ1 収入を全部並べる

年金、手当、給付金、就労収入、家族補助を月額に直して一覧化します。

ステップ2 毎月必ず払うものを並べる

住居、食費、通信、医療、交通などを先に固定費として置きます。

ステップ3 親の持ち出しを別枠で書く

親が代わりに払っている医療費、洋服代、交際費などを見える化します。

ステップ4 年払い支出を12で割って月換算する

更新料、家電、冠婚葬祭などを月割りで入れます。

これだけでも、かなり実態に近づきます。特に、親の持ち出しを別欄にすると、「今の生活が本人の収入だけで回っているのか」「親の支えが外れたら何が足りなくなるのか」が見やすくなります。

5|モデル① 親と同居の家計

まずは、親と同居しているケースです。家賃や光熱費を親世帯がまとめて負担していることも多く、本人の家計が見えにくい典型です。

※以下はモデル数字です。実際の受給額・自治体手当・家賃負担に置き換えて調整してください。

収入 モデル月額
障害基礎年金2級相当 69,000円
障害年金生活者支援給付金2級相当 5,600円
自治体独自手当(例) 15,000円
収入合計 89,600円
支出 モデル月額
家に入れる生活費 20,000円
食費(本人分の持ち出し) 12,000円
医療費・薬代・交通費 8,000円
通信費 5,000円
日用品・被服費 8,000円
余暇・交際費 10,000円
年払い支出の月換算 6,000円
支出合計 69,000円
差額 20,600円

このモデルでは黒字に見えますが、実は親が家賃・光熱費・家具家電・急な出費をかなり負担していることがあります。つまり、今の黒字は、親の持ち出しを含めた黒字ではない可能性があります。

6|モデル② グループホームの家計

グループホームへ移ると、親と同居時には見えなかった住居費や食費が、本人の家計に前面に出てきます。

※グループホームの費用構成は事業所ごとに大きく異なります。ここでは一般的な見え方のモデルです。

収入 モデル月額
障害基礎年金2級相当 69,000円
障害年金生活者支援給付金2級相当 5,600円
B型工賃等(例) 15,000円
収入合計 89,600円
支出 モデル月額
家賃 35,000円
食費 28,000円
光熱水費・共益費 12,000円
医療費・薬代・交通費 8,000円
通信費 5,000円
日用品・被服費 8,000円
余暇・交際費 8,000円
年払い支出の月換算 5,000円
支出合計 109,000円
差額 ▲19,400円

このモデルから分かるのは、「グループホームに入れば安心」でも、家計は自動で回らないことです。家賃補助、自治体手当、就労収入、家族補助、支出見直しのどこで埋めるかを考える必要があります。

グループホーム家計で見たいポイント

  • 家賃と食費が重すぎないか
  • 通院交通費を見落としていないか
  • 預り金や日用品費のルールが分かっているか
  • 赤字分を誰が、どの期間、どう補うのか決まっているか

7|モデル③ 一人暮らし+支援ありの家計

一人暮らしは自由度が高い一方で、家計も最もぶれやすいです。家賃、光熱費、食費、通信費、孤立対策の見守り費用などが積み上がるからです。

収入 モデル月額
障害基礎年金2級相当 69,000円
一般就労・短時間勤務の給与(例) 70,000円
収入合計 139,000円
支出 モデル月額
家賃 45,000円
食費 30,000円
電気・ガス・水道 12,000円
通信費 6,000円
医療費・薬代・交通費 10,000円
日用品・被服費 10,000円
見守り・緊急対応の関連費用(例) 5,000円
余暇・交際費 10,000円
年払い支出の月換算 8,000円
支出合計 136,000円
差額 3,000円

このモデルでは一見回っていますが、就労収入が下がるとすぐ厳しくなります。だから一人暮らしでは、就労が止まった月でも破綻しないか を必ず見ておく必要があります。

8|医療費の見方|通院・薬・自立支援医療・交通費

医療費は、家計の中で過小評価されやすい支出です。特に精神通院や継続的な服薬がある場合は、診察代だけでなく、薬代、交通費、場合によっては訪問看護や検査費も含めて見た方が実態に近づきます。

精神通院では、自立支援医療により自己負担が原則1割になり、所得区分に応じた月額上限が設定される仕組みがあります。ですので、家計表では 「制度がある前提の実支払額」 を入れると良いです。

医療費で入れたいもの

  • 受診の自己負担額
  • 薬代
  • 病院や薬局までの交通費
  • 訪問看護・デイケア等があればその負担
  • 年に数回の検査や入院準備費

医療費のコツ

「診察代はいくらか」ではなく、「病院へ行くために毎月いくらかかるか」で考えると、家計表が現実に近づきます。

9|就労収入をどう入れるか|A型・B型・一般就労の考え方

就労収入は、家計を支える重要な要素ですが、固定収入として見すぎると危険なことがあります。体調や就労状況で変動しやすいからです。

就労系障害福祉サービスには、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型、B型、就労定着支援があります。家計表では、「今の月平均」「悪い月の下限」 の2本で見ると安全です。

就労収入の見方

働き方 家計表での見方
一般就労 給与の平均だけでなく、休職や勤務減の月も想定する
A型 雇用契約があるが、体調や利用状況で変動する前提で見る
B型 工賃は固定費の土台ではなく、上乗せ収入として見ると安全
就労移行中 収入増より、生活訓練期として支出管理重視で見る

特にB型工賃は、生活費の柱というより「足し算の収入」として見ておくと、家計が崩れにくくなります。

10|赤字になりやすい落とし穴|見落としやすい支出一覧

家計が赤字になる家庭では、単純に収入が少ないだけでなく、見落としている支出があることも多いです。

  • 更新料や保証料
  • エアコン・冷蔵庫・洗濯機などの買い替え
  • 布団、衣類、靴などの季節費
  • 付き添い交通費
  • 入院や急な受診の出費
  • プレゼント、帰省、冠婚葬祭
  • 親が立て替えていて家計表に入っていないお金

赤字を防ぐための見方

毎月の差額だけでなく、「1年でいくら残るか」 で見ましょう。年に12万円の更新費があるなら、月1万円の積立が必要です。ここを入れるだけで、見え方が大きく変わります。

11|そのまま使える家計テンプレ

家計見える化テンプレ

【収入】

障害年金:

年金生活者支援給付金:

自治体手当:

就労収入:

家族補助:

月収合計:

【毎月の固定費】

家賃・住居関係:

食費:

光熱水費:

通信費:

医療費・薬代:

交通費:

固定費合計:

【変動費】

日用品:

被服費:

余暇・交際費:

その他:

変動費合計:

【年に数回の支出】

更新料:

家電買替え:

冠婚葬祭:

入院・臨時支出:

年払い合計:

年払いの月換算:

【最終確認】

月収合計:

月支出合計(固定費+変動費+年払い月換算):

差額:

親の持ち出し:

見直したい項目:

最初は完璧に埋めなくて大丈夫です。むしろ、空欄がどこかが分かるだけでも前進です。空欄は、そのまま「今後確認する項目」になります。

12|よくある失敗10選

失敗1|年金額だけ見て安心する

手当、就労収入、家族補助、医療費を合わせて見ないと実態がつかめません。

失敗2|親の持ち出しを家計に入れない

親亡き後に急に足りなく見える原因になります。

失敗3|家賃だけで住居費を見てしまう

共益費、光熱水費、更新料まで含めて見る必要があります。

失敗4|医療費を診察代だけで見てしまう

薬代や交通費が抜けやすいです。

失敗5|B型工賃を固定収入の柱にする

変動しやすいため、上乗せ収入として見た方が安全です。

失敗6|年払い支出を無視する

月次黒字でも年次赤字になりやすいです。

失敗7|自治体独自手当を確認していない

地域差があるため、取りこぼしや見込み違いが起こります。

失敗8|一人暮らしモデルを親同居の感覚で作る

住居費・食費・見守り費用の差が大きいです。

失敗9|家計表を一度作って終わりにする

就労、住まい、医療の変化で見直しが必要です。

失敗10|数字だけ並べて、制度や支援に結びつけない

見える化した後に、住まい、就労、支援制度の見直しへつなげるのが大切です。

13|Q&A

Q1|障害のある子の生活費は、まず何から見える化すればいいですか?

A|最初は、収入を「毎月ほぼ固定で入るもの」と「変動するもの」に分け、支出を「必ず払う固定費」と「調整できる変動費」に分けることです。特に住居費、食費、医療費、通信費、日用品費を先に見える化すると全体像をつかみやすいです。

Q2|収入は障害年金だけで足りますか?

A|家庭や住まい方によって変わります。親と同居なのか、グループホームなのか、一人暮らしなのかで必要額は大きく違います。障害年金だけで足りるケースもあれば、自治体手当、就労収入、家族支援を組み合わせないと赤字になるケースもあります。

Q3|医療費は毎月どのくらい見ればいいですか?

A|通院頻度、薬の種類、訪問看護の有無で変わります。精神通院なら自立支援医療で自己負担が軽くなることもあるため、実際の窓口負担額と月額上限を確認したうえで、交通費も含めて家計表に入れると実態に近づきます。

Q4|親亡き後に一番危ない家計の落とし穴は何ですか?

A|月額の生活費だけ見て、更新費、家電買替え、入院時出費、被服費、冠婚葬祭、移動費などの「年に数回の支出」を見ていないことです。月次黒字でも、年単位では赤字になることがあります。

Q5|家計表は誰と一緒に作るといいですか?

A|親だけで抱えるより、本人、きょうだい、相談支援専門員、必要に応じて後見人や支援者と一緒に見る方が、親亡き後の引き継ぎに強い家計表になります。

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