障害のある子の「支援者リスト」作り方|連絡網・役割分担・引き継ぎのコツ

障害のある子の「支援者リスト」作り方|連絡網・役割分担・引き継ぎのコツ【保存版】

障害のある子の「支援者リスト」作り方|連絡網・役割分担・引き継ぎのコツ

親亡き後の備えというと、遺言、お金、住まい、成年後見が注目されがちです。もちろんどれも大切です。ですが、実際に親が支えられなくなったとき、真っ先に困るのは 「結局、誰に連絡すればいいのか」「誰が何をしてくれるのかが分からない」 という点です。

知的障害・精神障害のある子の暮らしは、親だけでなく、相談支援専門員、グループホーム、施設、病院、薬局、通所先、ヘルパー、訪問看護、就労先、親族、近所の見守り役など、複数の人の関わりで成り立っていることが少なくありません。ところが、多くの家庭では、その関係が親の頭の中だけに入っている状態です。

そこで必要になるのが、支援者リストです。ただの名簿ではありません。誰が・いつ・どんな場面で・何を担うのかを見える化した「親亡き後の引き継ぎ表」です。この記事では、はじめての方にも分かるように、支援者リストの作り方を、連絡網・役割分担・引き継ぎの順で整理します。

この記事の結論

  • 支援者リストは、家族の連絡先一覧では足りません。医療・福祉・住まい・就労・お金・緊急時の窓口まで入れて初めて使える資料になります。
  • 作るときは、人の名前中心ではなく「役割」中心で整理すると、担当者が変わっても使いやすくなります。
  • 連絡網は、一次連絡先・二次連絡先・不在時の代替先まで決めておくと、いざというときに止まりにくくなります。
  • 引き継ぎでは、本人の特性・苦手なこと・安心する対応まで言語化しておくと、支援の質が急に落ちにくくなります。
  • 完成したら終わりではなく、年1回+変更があった時に更新するのが実務的です。

1|支援者リストはなぜ必要?|親亡き後に起きる“情報の空白”

障害のある子がいる家庭では、毎日の生活が「たくさんの小さな支援」の積み重ねで成り立っています。薬を飲む時間を声かけする人、体調変化に気づく人、病院へ付き添う人、施設へ連絡する人、受給者証の更新時期を覚えている人、本人が不安定になったときに落ち着かせる人――こうした役割は、一つひとつは小さく見えても、生活の土台です。

ところが、現実にはそれらの情報が、親のスマホや手帳、あるいは親自身の記憶の中だけに入っていることが少なくありません。そのため、親が急病で倒れたり、入院したり、亡くなったりすると、支援者がいるはずなのに「誰に何を頼めばいいか分からない」という状態になります。

支援者リストがないと起きやすいこと

  • 相談支援専門員や主治医の名前は聞いたことがあるが、電話番号が分からない
  • グループホームや施設の担当者が変わっていて、今の窓口が分からない
  • 本人が苦手な対応を、初対面の支援者がやってしまい不安定になる
  • 親族の中で「誰が引き継ぐのか」が決まらず、全員が様子見になる
  • 金銭管理・契約・医療の窓口が別々なのに、全部まとめて考えて混乱する

支援者リストを作る目的は、完璧な計画書を作ることではありません。いざというときに、「まず誰に連絡し、次に何を引き継ぐか」が一目で分かる状態を作ることです。

2|まず決めること|「誰のためのリストか」をはっきりさせる

支援者リストを作るとき、多くの方が最初から項目を埋めようとして手が止まります。そこで最初にやるべきことは、このリストを誰が使うのかを決めることです。

主な使い手の例

使う人 目的 リストに必要な濃さ
親自身 今の支援体制を整理する 全体を見渡せる一覧が必要
きょうだい・親族 親の代わりに引き継ぐ 連絡先、役割、優先順位が必要
相談支援専門員・支援機関 支援体制の見直し 生活上の課題、本人特性、家族状況が必要
医療機関・施設 緊急時対応や連携 連絡網と緊急情報が中心
成年後見人・専門家候補 法的支援や金銭管理の見通し 契約・財産・生活支援の整理が必要

一枚のリストで全部をまかなおうとすると、情報が多すぎて使いにくくなります。おすすめは、基本版詳細版の二段階です。

おすすめの分け方

  • 基本版: 連絡先、役割、緊急時の順番をまとめた1〜2枚
  • 詳細版: 医療情報、契約、本人の特性、支援履歴、更新時期まで入れた保管用資料

まずは基本版から作ると、途中で止まりにくくなります。

3|支援者リストに入れるべき人|家族・医療・福祉・住まい・お金

支援者リストに入れる人は、家族だけではありません。親亡き後に本当に困るのは、「日常生活を支える人」と「制度や契約を動かす人」が別だという点です。

最低限入れたい5つのグループ

① 家族・親族

  • きょうだい
  • 叔父叔母、いとこなど実際に動ける親族
  • 緊急時の一次窓口になる人

② 医療関係

  • 主治医
  • 通院先の病院・クリニック
  • 薬局
  • 訪問看護
  • 精神科デイケア等

③ 福祉・相談支援関係

  • 相談支援専門員
  • サービス管理責任者
  • ヘルパー事業所
  • 訪問系・通所系の支援事業所
  • 基幹相談支援センターや自治体相談窓口

④ 住まい・日中活動・就労関係

  • グループホーム管理者
  • 施設担当者
  • 家主・管理会社
  • 就労継続支援事業所、作業所、勤務先
  • 地域の見守り役や近隣協力者

⑤ お金・契約・法律関係

  • 成年後見人・保佐人・補助人がいればその連絡先
  • 任意後見や見守り契約の受任者候補
  • 家族信託、死後事務委任、遺言に関与する専門家
  • 金銭管理を手伝う人

ここで大切なのは、「今関わっている人」だけでなく、「今後、窓口になる可能性がある人」も入れておくことです。親亡き後は、今の担当者だけでは支えきれず、後から別の支援者が加わることが多いからです。

4|基本の作り方|最初に用意したい10項目

支援者リストは、最初から凝った表を作らなくても大丈夫です。まずは次の10項目を埋めるだけでも、かなり使いやすくなります。

項目 書く内容 コツ
分類 家族、医療、福祉、住まい、就労、お金など 色分けすると見やすい
氏名・事業所名 個人名と法人名の両方 担当者変更に備える
役割 何をしている人か 「母の妹」ではなく「通院付き添い役」など役割で書く
連絡先 電話、メール、住所 携帯と代表番号を分ける
連絡してよい時間帯 平日昼、夜間不可など 緊急時の迷いを減らす
優先順位 一次・二次・代替 不在時の次点も書く
具体的な担当 薬、家賃、病院予約、役所など 抽象語を避ける
共有してよい情報 病名、薬、家計、障害特性など 何を共有してよいかを明確にする
引き継ぎメモ 注意点、苦手、安心材料 短く具体的に
最終更新日 いつ更新したか 古い情報の混在を防ぐ

最初からパソコンできれいに作らなくても大丈夫です。手書きでも、スプレッドシートでも、ノートでも構いません。大事なのは、親しか知らない情報を、他の人が読める形に変えることです。

5|連絡網の作り方|緊急時に止まらない順番を決める

連絡網の失敗で一番多いのは、「全員の連絡先はあるのに、誰から電話するか決まっていない」ことです。緊急時は、情報量より順番が重要です。

連絡網は3段階で作る

一次連絡先

親が倒れた、本人が不安定、入院が必要、事故が起きたなど、まず最初に電話する相手です。多くの家庭では、きょうだい、相談支援専門員、グループホーム管理者、主治医が候補になります。

二次連絡先

一次連絡先と連携して、生活を整えるために必要な相手です。就労先、通所先、薬局、ヘルパー事業所などが入ります。

代替先

一次・二次の担当者が不在のとき、次に連絡する先です。ここがないと、休日や夜間に止まりやすくなります。

連絡網に必ず入れたい情報

  • 緊急時に最初に連絡する順番
  • 平日昼・夜間・休日で連絡先が変わるか
  • 本人の前で話してよい内容か、別で話すべき内容か
  • 電話がつながらないときの次の相手

おすすめは、「平常時の連絡先」と「緊急時の連絡先」を分けることです。普段は相談支援専門員へ連絡すれば足りても、夜間や休日には別の窓口が必要になることがあります。

6|役割分担の作り方|“誰が何をやるか”を曖昧にしない

支援者リストがあっても、役割分担が曖昧だと実際には動きません。「きょうだいで協力する」「施設と連携する」といった表現だけでは、現場では止まります。

役割は“行為”で書く

悪い例 良い例
兄がサポートする 兄が通帳確認と家賃支払い確認を担当する
施設が対応する 施設は体調変化の初動連絡を担当し、医療判断は家族と主治医が行う
みんなで見守る 平日はヘルパー、夜間はグループホーム、土日は姉が電話確認する

最低限、分けておきたい役割

  • 緊急連絡の窓口
  • 医療の窓口
  • 生活費・家賃など支払い確認の窓口
  • 役所・受給者証・更新関係の窓口
  • 住まい・施設・就労先との調整窓口
  • 親亡き後の家族内連絡の窓口

ここで気をつけたいのは、一人に全部集めないことです。善意で「私が全部やる」と引き受けた人ほど、後で燃え尽きやすくなります。支援者リストは、誰か一人を縛るためではなく、分担して支えるための地図として使うのが理想です。

7|引き継ぎのコツ|支援者が変わっても困らない情報の残し方

支援者リストを作っても、引き継ぎメモがないと「連絡先は分かるけれど、どう関わればいいか分からない」状態になります。特に知的障害・精神障害のある方は、同じ支援でも、声かけの順番やタイミングで落ち着き方が大きく変わることがあります。

引き継ぎメモに残したいこと

  • 本人が安心しやすい人・言葉・対応
  • 逆に不安定になりやすい対応
  • 体調不良や不穏のサイン
  • 服薬で気をつけること
  • 病院や施設で本人が嫌がりやすいこと
  • 金銭管理でトラブルになりやすいポイント
  • 特に大切にしている日課や習慣

引き継ぎメモの例

・初対面の人に急に質問されると黙り込みやすい
・薬の話は夕食後に落ち着いて確認すると通りやすい
・予定変更は前日から紙に書いて伝えると安心しやすい
・お金の話は本人の前で長時間しない方が不安定になりにくい

こうした情報は、法律や制度の資料には出てきません。しかし、親亡き後の支援の質を左右するのは、むしろこうした生活情報です。「制度情報」と「本人の暮らし情報」を一緒に残すことが、引き継ぎのコツです。

8|本人情報のまとめ方|苦手・安心材料・配慮事項を残す

支援者リストには、連絡先や役割だけでなく、本人の基本情報も最低限入れておくと使いやすくなります。

項目 入れたい内容
基本プロフィール 氏名、生年月日、住まい、通所先・就労先
医療 主な診断、通院先、薬局、服薬のポイント
コミュニケーション 理解しやすい伝え方、苦手な言い方、補助ツールの有無
日常生活 食事、睡眠、入浴、金銭、外出で支援が必要な点
緊急時 発作、パニック、希死念慮、不穏時の対応
安心材料 好きな物、落ち着く場所、信頼している人

ポイントは、本人を評価するような書き方にしないことです。「問題行動がある」ではなく、「大きな音で不安定になりやすい」「予定変更は紙で説明すると通りやすい」など、支援に役立つ形で書くと伝わりやすくなります。

9|お金・契約・法的支援の欄はどう入れる?

支援者リストは生活支援中心でよいですが、お金や契約の入口も空白にしない方が安全です。特に親亡き後は、生活支援の人お金や法的手続の人が別になることがよくあります。

最低限入れたい項目

  • 年金・手当の振込先の把握者
  • 家賃や施設利用料の支払い確認者
  • 成年後見人等がいればその連絡先
  • 見守り契約、任意後見、信託、死後事務委任などがあれば窓口
  • 通帳・印鑑・重要書類の保管場所を知っている人

ここで大切なのは、支援者リストに通帳番号や暗証番号をベタ書きしないことです。誰が管理し、どこに保管し、誰へ確認すればよいかを整理するだけでも実務的には十分役立ちます。

書いておくと便利な一文

「金銭管理・契約関係は、○○が一次確認。法的手続が必要な場合は△△へ相談。」

これだけでも、生活支援者が抱え込みすぎずに済みます。

10|個人情報の扱いで気をつけたいこと

支援者リストは便利ですが、医療情報や生活情報が入るため、扱い方には注意が必要です。実務では、「誰に、どこまで共有してよいか」を先に決めておくと混乱しにくくなります。

最低限のルール

  • 全員に全情報を渡さない
  • 緊急対応に必要な情報と、詳細な生活情報を分ける
  • 本人に分かる形で、どの情報を誰と共有するかを説明する
  • 更新版と古い版を混ぜない
  • 紙で配るなら回収先、データなら保存場所を決める

とくに、本人が情報共有に不安を持ちやすい場合は、「この紙は、困ったときに○○さんと病院に見せるためのものだよ」と、本人に分かる言葉で説明しておくことが大切です。

11|更新タイミング|年1回見直すだけで大きく変わる

支援者リストは、一度作って終わりではありません。担当者は変わりますし、住まいも通院先も変わります。だからこそ、更新のルールまで決めておくと使いやすくなります。

見直しタイミングの目安

  • 年1回の定期見直し
  • 住まいが変わったとき
  • 通院先や薬が変わったとき
  • 相談支援専門員や施設担当者が変わったとき
  • 健康保険や受給者証が変わったとき
  • 親やきょうだいの健康状態が変わったとき

おすすめは、「更新日」と「次回見直し予定日」を書くことです。これだけでも、古い連絡先のまま放置されるリスクが大きく減ります。

12|よくある失敗10選

失敗1|家族の名前だけ並べて終わる

医療・福祉・住まい・お金の窓口が抜けると、実際には使いにくいです。

失敗2|役割を書かず、名前だけ書く

「この人は何をする人なのか」が分からないと、緊急時に機能しません。

失敗3|一人に全部任せる前提で作る

負担が集中し、結局続かなくなりやすいです。

失敗4|連絡網に順番がない

誰から電話するか決まっていないと、全員が様子見になります。

失敗5|本人の特性を書いていない

支援者が変わったときに、対応の質が急に落ちやすくなります。

失敗6|個人情報を全部まとめて渡す

必要な範囲での共有ができていないと、扱いづらくなります。

失敗7|支援者が変わっても更新しない

古い担当者名のままだと、いざというときにつながりません。

失敗8|通帳や重要書類の入口が書かれていない

生活支援と金銭管理が分断されて混乱しやすくなります。

失敗9|本人抜きで全部決める

本人の安心につながる情報が抜けやすくなります。

失敗10|完璧を目指して、結局作らない

まずは基本版1枚から始める方が、実際には前に進みます。

13|すぐ使えるチェックリスト

  • 家族・親族の連絡先が整理されている
  • 相談支援専門員の連絡先がある
  • 主治医・病院・薬局の連絡先がある
  • グループホーム・施設・通所先・就労先の窓口が分かる
  • 緊急時の一次連絡先・二次連絡先が決まっている
  • 誰が医療を担当し、誰が生活費確認を担当するか決まっている
  • 本人の苦手・安心材料・配慮事項が短くまとまっている
  • 受給者証・手帳・保険の保管場所を知っている人がいる
  • 金銭管理や契約の窓口が分かる
  • 最終更新日が書かれている

14|Q&A

Q1|支援者リストは家族の名前だけ書けば足りますか?

A|足りません。家族だけでなく、相談支援専門員、通院先、薬局、グループホームや施設、通所先、就労先、緊急時に動ける人、金銭管理や契約に関わる人まで整理した方が、親亡き後に実務で使いやすくなります。

Q2|連絡網と支援者リストは同じですか?

A|少し違います。連絡網は「誰に電話するか」の順番が中心です。支援者リストは、それに加えて「誰が何を担うか」「どこまで引き継ぐか」まで含めた一覧です。実務では両方をセットで作る方が役立ちます。

Q3|本人が手続や契約を理解しにくい場合でも、支援者リストは必要ですか?

A|むしろ必要です。支援者リストは契約書そのものではなく、生活や支援の引き継ぎを見える化する資料だからです。本人の理解しやすい表現に変えたり、家族や支援者向けに詳細版を分けたりすると使いやすくなります。

Q4|支援者リストは誰と一緒に作るのがよいですか?

A|親だけで作るより、本人、きょうだい、相談支援専門員、必要に応じて医療や住まいの関係者も交えて見直す方が実態に合いやすいです。全部を一度に集められなくても、少しずつ広げていけば大丈夫です。

Q5|更新はどのくらいの頻度で必要ですか?

A|少なくとも年1回、または住まい・通院先・支援者・保険や受給者証の内容が変わったタイミングでの見直しがおすすめです。

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