相続した財産を使い込まれそう|信託口座・支出ルールで“守る運用”にした事例

相続後の資産管理 使い込み防止 信託口座 支出ルール 親亡き後

相続した財産を使い込まれそう|信託口座・支出ルールで“守る運用”にした事例

親が亡くなり、障害のある子(成人も含む)に財産が残ったとき——一番怖いのは「手続き」より、相続後にお金が目減りしていくことです。
本人が衝動買いをしてしまう、周囲に頼られて貸してしまう、親族が“善意のつもり”で使ってしまう……。こうしたリスクは、性格の問題ではなく、お金の流れが無防備なことが原因です。
この記事では、信託口座(分別管理)支出ルールで「守りながら使う」運用に切り替えた実務事例をもとに、初心者でも行動できる形で解説します。

最初に結論
使い込みリスクの対策は、「誰を信じるか」より「仕組みで守る」が基本です。
具体的には、 口座を“生活費の出口”と“資産の金庫”に分ける(分別)
支出を「日常」「医療・福祉」「臨時」「重大」の4類型にし、承認ルールを決める
記録(いつ・何に・誰が)を残し、第三者チェックを入れる

※本記事はモデル事例です。実際の最適解は、本人の障害特性・家族関係・財産規模・地域支援体制で変わります。

0. 「使い込み」は誰でも起きる:よくある3つのパターン

使い込みは「悪意」だけで起きません。むしろ、悪意がないのに目減りすることが多いです。

  • パターン① 本人由来:衝動買い、ネット課金、断れずに貸す、詐欺・勧誘に引っかかる
  • パターン② 家族・親族由来:立替の精算が曖昧、生活費と家族の支出が混ざる、“一時的に借りる”が戻らない
  • パターン③ 支援者・周辺由来:金銭管理ルールがなく、現金やカードが流動化してしまう(管理が属人化)

どれも「人の性格」を責めても直りません。直すべきは仕組み(口座・権限・記録)です。

1. 解決事例:信託口座+支出ルールで“守る運用”にした

個人が特定されないよう調整したモデル事例です。相続後の財産が「いつの間にか減る」リスクに対し、運用を作り替えました。

状況

  • 本人:知的障害+精神症状の波。判断が不安定な時期がある
  • 相続財産:預金が中心(生活費の原資として重要)
  • 不安:本人の衝動買い、親族の“立替”が積み重なる、詐欺被害の心配
  • 家族の課題:誰が管理するかで揉めそう/透明性がないと不信感が出る

実務でやったこと(3点セット)

  1. 分別:資産(元本)を“金庫”に入れ、生活費は“出口口座”に必要分だけ流す
  2. 信託口座:分別した資産を信託口座で管理し、目的外支出をしにくくした
  3. 支出ルール:日常は定額、医療・福祉は証憑必須、臨時は上限、重大は合議(家族会議)

結果:本人の生活は守りつつ、元本が“ゆっくり確実に”使われる運用へ。家族も「見える化」で安心し、トラブルの芽が小さいうちに潰せるようになりました。

2. まずは整理:守るべきお金を2層に分ける(生活費の出口/資産の金庫)

いきなり信託の話に行く前に、家計の設計と同じで「箱」を分けます。これが一番効きます。

① 生活費の出口(使う口座)

  • 毎月の生活費(食費・日用品など)
  • 引落(家賃・通信・公共料金)
  • 本人の小遣い(上限付き)

ここは使う場所。だからこそ上限とルールが必要です。

② 資産の金庫(守る口座)

  • 相続した預金の元本
  • 将来の大きな支出(住まい、医療、葬儀等)
  • “もしも”の予備資金

ここは守る場所。日常の支出と混ぜないのが鉄則です。

ポイント
使い込みの多くは「金庫と出口が同じ」ことで起きます。2層化ができれば、対策の半分は成功です。

3. 信託口座とは?初心者向けに超やさしく(分別管理の考え方)

「信託口座=特別な口座」と聞くと難しそうですが、役割はシンプルです。
“そのお金は、本人のために、決めた目的で使う”という管理を、口座と契約で支える仕組みです。

信託口座で狙うこと(実務目線)

  • 分別:誰のお金か、何のためのお金かを明確にする
  • 権限:出金できる人・手順を設計して、勝手に動かしにくくする
  • 記録:支出の理由と証憑を残し、説明できる形にする

重要:信託は「悪い人をゼロにする魔法」ではありません。不正が起きにくい構造を作る道具です。

「後見」ではなく「信託」を使う場面(イメージ)

ざっくり言うと、本人の判断能力が日常的に大きく崩れているなら後見が合うことが多く、家族が一定の見守りを続けられ、ルール運用で守れそうなら信託が合うことが多いです。
ただし、両方を組み合わせるケースもあります(状況次第)。

4. 支出ルールの作り方:4類型×承認ライン×証憑

仕組みは「口座」だけだと崩れます。必ず支出ルールとセットにしてください。
ここでは“守る運用”として実務で使いやすいテンプレを紹介します。

支出を4つに分ける

類型 ルール(基本)
日常 日用品、食費、小遣い 月額上限で運用(超えたら翌月調整)
医療・福祉 通院、薬、サービス費、福祉用具 領収書・明細必須(証憑が出るもの中心)
臨時 家電、帰省、衣替え、イベント 1回上限+簡易申請(理由メモ)
重大 住まい変更、まとまった出金、契約 合議(家族会議)+記録(議事録)

承認ラインを決める(揉めないコツ)

承認は「誰が偉いか」ではなく、透明性のための手続きです。次のように段階を作ると回ります。

  • 日常:担当者が実行(上限内)→月1で報告
  • 医療・福祉:証憑があれば担当者が実行→月1で報告
  • 臨時:理由メモ+上限内なら事前承認(LINEでも可)
  • 重大:オンライン会議で合意→議事録→実行

承認の重さは“揉めやすさ”に比例させます。全部を重くすると運用が止まります。

証憑(しょうひょう)=「説明できる材料」を決める

証憑という言葉が難しければ、「後から説明できるメモや領収書」と思ってください。

  • 領収書/明細(医療・福祉は原則これ)
  • 理由メモ(臨時:何のために必要だったか)
  • 議事録(重大:誰が合意したか、選択肢と理由)

5. 手続きの流れ:誰が・いつ・どこで・何を・どの書類で

「守る運用」は、相続後の“お金の置き場所”と“使い方”をセットで作るプロジェクトです。最短で迷わない流れにします。

  1. STEP 1 相続財産の棚卸し(元本・用途・危険箇所を見える化)
    誰が:相続手続き担当者(家族)+必要なら専門家
    何を:預金額、毎月必要な生活費、将来の大きな支出、借入の有無
    書類:残高証明/通帳、支出一覧(家計)、施設費・家賃の資料
  2. STEP 2 2層化(出口口座と金庫を分ける)
    どこで:金融機関(口座の役割を整理)
    何を:毎月の引落は出口へ、元本は金庫へ、現金の上限設定
  3. STEP 3 信託を設計(目的・受託者・監督・口座)
    誰が:委託者(設計の主体)・受託者(運用担当)・受益者(本人)・必要に応じ監督者
    何を:信託財産の範囲、支出類型、承認ライン、報告の頻度、終了時の扱い
    書類:信託契約書(設計図)、本人情報、家族関係の資料(必要に応じ)
  4. STEP 4 支出ルールを文書化(運用マニュアル)
    何を:日常・医療福祉・臨時・重大のルール、上限、証憑、報告方法(テンプレでOK)
  5. STEP 5 運用開始(報告・点検・更新)
    何を:月1の支出報告、年1のルール見直し、緊急時の例外処理(後述)

6. 注意点:信託は万能ではない(後見・銀行実務・税務の落とし穴)

信託は強力ですが、設計を誤ると止まることがあります。次の注意点は最初から押さえてください。

  • 本人の状態によっては後見が必要になる:信託で全て解決しない場合がある(契約・同意・対外対応の領域)
  • 銀行実務:信託口座の開設・運用は金融機関ごとに運用が違うため、事前確認が重要
  • “生活費の出口”が詰まると危険:守りすぎて支払いが遅れると、生活が先に壊れる
  • 監督・チェックが弱いと属人化:受託者が良い人でも、疲弊や判断の偏りが起きる
  • 税務・相続との接続:内容次第で専門家の確認が必要(特に相続人が複数、財産が多い場合)

現実的な結論
信託は「守る運用」を作るための道具のひとつ。後見・見守り・家族会議と組み合わせて、家族に合う形に調整するのが実務です。

7. よくある失敗(設計だけして運用が崩れる)

  • 失敗①:口座を分けただけで安心し、支出ルールがない(結局混ざる)
  • 失敗②:承認を重くしすぎて、生活費の支払いが遅れる
  • 失敗③:証憑が集まらず、説明できない支出が増えて不信感が出る
  • 失敗④:受託者が疲弊して、報告が止まる(属人化)
  • 失敗⑤:本人の症状変動・環境変化にルールが追いつかない(更新されない)

運用が続く“最小セット”
①出口口座の上限②重大支出は合議③月1報告(簡易でOK)。完璧を目指すより「続く形」が勝ちます。

8. Q&A(親族が反対/本人が怒る/信託と後見の違い)

Q1. 親族から「信託なんて大げさ」と反対されます。

反対の背景は、「不信感」か「理解不足」か「費用への不安」が多いです。
まずは“信託ありき”ではなく、①2層化(口座分け)②支出ルールを見せて、「透明性を上げるため」と説明すると受け入れられやすいです。
それでも難しい場合は、第三者(専門家・支援者)同席の家族会議で合意形成を進めるのが安全です。

Q2. 本人が「お金を自由に使いたい」と怒りそうです。

“自由”をゼロにすると反発が強くなります。実務では、本人が自由に使える枠(小遣い・プリペイド枠)を明確に確保し、残りを金庫で守るのが現実的です。
ルールは「本人の生活を守るため」と伝え、本人の納得が得られる範囲から始めると継続しやすいです。

Q3. 信託と成年後見は何が違いますか?

とても大雑把に言うと、信託は“財産の使い方を設計して運用する道具”後見は“判断能力が不十分な人を法的に支える仕組み”です。
どちらが正しいではなく、本人の状態・家族の関与・必要な手続きの範囲で向き不向きがあります。併用することもあります。

Q4. 「信託口座」は作れば勝手に守られるのですか?

口座は強い味方ですが、支出ルールと報告がないと結局崩れます。
守る力は「口座」+「権限」+「記録」のセットで出ます。最初から“運用マニュアル”まで作るのがおすすめです。

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