障害のある子が遺産を受け取ると生活保護が心配|資産の持ち方・使い方を設計した事例
障害のある子が遺産を受け取ると生活保護が心配|資産の持ち方・使い方を設計した事例
「親が亡くなったら、子どもに遺産を残したい。でも、生活保護を受けていた(または将来必要になるかもしれない)から、相続したら止まってしまうのでは?」
この不安はとても現実的です。生活保護は“最後のセーフティネット”なので、資産があるなら先にそれを生活に使うのが原則です。
ただし、ここで大事なのは「相続=即アウト」ではなく、申告・使い方・管理の仕組み次第で、生活を崩さずに進められる場面が多いということ。
この記事では、制度の説明で終わらせず、実務の現場で使えるように「何を・どんな順番で・どこへ・どの書類で」動けばよいかを、事例ベースで整理します。
生活保護 相続・遺産 資産の持ち方 使い方のルール 親亡き後 仕組み化 障害のある子 申告
結論|「申告」+「使い道の優先順位」+「管理ルール」で不安を減らせる
生活保護が心配な相続で、最も大切なのは次の3点です。
- ① 隠さず申告する:働いて得た収入以外(相続を含む)も申告が必要です。申告がないまま後から発覚すると不正受給扱いになることがあります。自治体も「申告がないまま後日発覚した場合は不正受給」と明記しています。(例:奈良市の案内)
- ② 使い道の優先順位を決める:生活保護は“資産の活用が前提”です。生活維持に必要な支出(住まい・医療・介護・生活の基盤)へ計画的に充当する発想が鍵です。厚生労働省の実務資料でも、土地家屋・自動車・預貯金の扱いなど「原則」と「例外(容認)」が整理されています。(生活保護の基本的な実務)
- ③ 管理ルールを作る:本人(障害のある子)の特性によっては、浪費・詐欺・衝動買いが起きやすく、せっかくの資産が短期間で消えることがあります。口座の分け方・支払いの仕組み・相談先を固定し、運用の安定を先に作るのが最短です。
ここまでを押さえたうえで、遺言・信託・後見・支援者体制などの「道具」を当てはめると、迷いが減り、家族が動ける計画になります。
解決事例|相続後に生活が崩れないよう“資産の設計図”を作った
モデルケース(よくある状況)
- 本人:知的障害(または精神障害)のある成人のお子さま。金銭管理が苦手で、契約・解約・支払いの手続きが不安
- 生活:福祉サービスを利用。将来、生活保護が必要になる可能性がある(または現在受給中)
- 家族:親が急逝。遺産は主に預金と少額の不動産(または持家)
- 課題:相続手続きを進めると、生活保護が止まるのでは?/止まったら生活が回らないのでは?/本人が浪費しないか
「相続=即打ち切り」ではなく、現実は“調整が必要”だった
実務では、相続があった場合でも、ただちに一律で“全部終わり”という形にはなりません。
ただし、資産が増えた事実は申告し、生活に必要な範囲で資産を活用するのが原則です。
ここを飛ばして「内緒で持つ」方向に進むと、後で発覚して返還・打ち切りなど大きなリスクになります。自治体も申告の重要性を強く示しています。(例)
解決のポイント:資産を「置き場」と「使い方」に分けて設計
このケースで行ったのは、資産を“まとめて持つ”のではなく、目的別に分けて管理することでした。
- 生活を守る支出:家賃・施設費・光熱・通信・通所交通費・医療費など「毎月必要」な支出を優先
- 将来の大きな支出:住まいの修繕、福祉用具、引越し費用、入院時の備えなど「年に数回」ある支出を枠で確保
- 本人が触れるお金:少額の“自由に使える範囲”を決め、トラブル予防(使いすぎ・詐欺)
- 管理者の設定:家族・支援者・専門家で「誰が何を管理するか」を固定
結果として、相続は“怖いイベント”から、生活の安定を作る材料に変わりました。
なぜ生活保護が心配になる?|原則と、誤解されやすいポイント
生活保護は、資産・能力・他制度の活用を前提にした制度です。厚生労働省の実務資料でも、土地・家屋・自動車・預貯金などについて「原則は処分・収入認定」「ただし例外として保有容認があり得る」という整理がされています。(生活保護の基本的な実務)
- 誤解1:「少しでも相続したら生活保護は即終了」→ 現実には状況に応じた判断・調整があり得ます(ただし申告と資産活用は前提)
- 誤解2:「相続は黙っていれば大丈夫」→ 申告義務があり、後で発覚すると不正受給扱いになる可能性があります。(例)
- 誤解3:「制度の正解は1つ」→ 家庭の状況(障害特性、支援者、住まい、財産の種類)で最適解は変わります
最初に押さえる3原則|隠さない・急がない・一気に決めない
隠さない(申告が前提)
相続は「働いたことによらない収入」にあたり、申告が求められます。自治体も、申告がないまま後日発覚すると不正受給となる旨を示しています。(例)
不安があるほど、先に福祉事務所へ相談し、「どう扱うか(保護の調整の仕方)」を一緒に確認するのが安全です。
急がない(まず“生活が回る最短ルート”を作る)
相続手続き・遺産分割・名義変更を一気に完璧にしようとすると、家族が疲弊します。
先に決めるべきは、「今月の支払いが止まらないこと」と、支援者の連絡体制です。
一気に決めない(資産を分けて、ルールを作って、運用して見直す)
障害特性によって、金銭管理の難しさは変わります。最初から完璧な制度に飛びつくより、小さく設計→運用→見直しの方が失敗が少なくなります。
設計の考え方|「持つ資産」と「使う支出」を分けて考える
「生活保護が心配」と感じるとき、多くのご家庭が“資産(遺産)”だけを見てしまいます。実務でうまくいくのは、支出(何に使うか)から逆算する設計です。
| 区分 | 例 | 設計のポイント |
|---|---|---|
| 毎月 | 家賃・施設費・光熱・通信・食費・通所交通費 | 支払いが途切れると生活が崩れる。引落口座と支払担当を固定する |
| 年に数回 | 医療費の自己負担、服薬、福祉用具、引越し、更新費 | 「積立枠」を決め、使途を明確にして管理 |
| 突発 | 入院、緊急転居、家電故障、詐欺被害対応 | 少額の緊急枠を確保し、連絡ルートを決める |
| 長期 | 親亡き後の住まい、見守り、支援者体制 | 遺言・信託・後見などの道具はここに当てはめる |
重要:生活保護の観点では「資産を持ち続ける」より、生活の維持に必要な支出へ計画的に充当する方が説明しやすいことが多いです。
そのためにも、支出の見える化(家計表)と、支払ルールが効きます。
資産の持ち方・使い方の選択肢|向き・不向き比較
ここでは、よく使う“選択肢”を、極端に断定せずに比較します(どれが正解というより、家庭の状況で向き不向きが変わります)。
| 選択肢 | 向いているケース | 注意点(落とし穴) |
|---|---|---|
| (A)福祉事務所に申告し、資産を生活費に充当 | 資産が大きくない/家族が管理できる/生活の立て直しを優先 | “黙って保有”はNG。申告と説明が前提(申告がないと不正受給扱いのリスク)。(例) |
| (B)口座を分け、支出ルールで守る運用 | 浪費・詐欺が心配/毎月の支払いを安定させたい | 運用者(誰が管理?)が曖昧だと破綻。ルールを文書化して共有する |
| (C)家族信託で「毎月の支払い」を仕組みにする | 家族が受託者になれる/お金の使途を明確にしたい/長期運用したい | 信託は万能ではない。身上面(入院・施設契約など)は別設計が必要な場合あり |
| (D)成年後見(法定/任意)を検討 | 本人の意思能力が不安/契約や財産管理を法的に支える必要が強い | 負担(手続・監督)があるため、必要性の見極めが重要 |
| (E)福祉サービス・相談支援と連携し「運用」を支える | 家族だけで回せない/支援者が関与できる | 制度の申請漏れ・更新漏れが起きやすいので、タスク管理が鍵 |
上の表は「制度の名前」を並べただけではありません。
生活保護が心配な相続では、(A)申告と説明を土台にしつつ、(B)(C)(D)(E)のどれをどの順で重ねるか、が実務の肝になります。
手続きの流れ|誰が・いつ・どこで・何を・どの書類で
ここでは「相続が起きた/起きそう」なときの、現場で動ける標準手順を示します。
相続の事実を整理(まず“一覧”)
- 誰が:家族の主担当(1人決める)
- いつ:落ち着いたタイミングで早めに
- 何を:遺産の種類(預金/保険/不動産/負債)を一覧化(正確な金額は後でOK)
- 書類:通帳・保険証券・固定資産税通知など、手元にあるものでよい
福祉事務所へ申告・相談(ここが最重要)
- どこで:担当ケースワーカー/福祉事務所
- 何を:相続があった(見込み)こと、資産の種類、当面の生活見通し
- ポイント:申告がないまま後日発覚すると不正受給となる旨が自治体で案内されています。(例)
- ゴール:保護の調整の見通し(どう扱うか、何の資料が必要か)を“先に”確認
「生活が回る支払い」を先に確保(相続手続きの前でもOK)
- 何を:家賃・施設費・光熱・通信の支払いが止まらないよう、引落口座と担当を固定
- ポイント:相続の完了より先に、毎月の支払いの運用を整えると崩れにくい
相続手続き(戸籍→遺産分割→名義)を“止まらない順番”で
- どこで:市区町村(戸籍)/金融機関/法務局(不動産)
- 何を:相続関係の確定、遺産分割、口座解約・名義変更
- 注意:本人の署名・意思能力が不安な場合、後見等の検討が必要になることがあります
資産の「持ち方・使い方」を確定(ルールと体制)
- 何を:目的別口座/支出ルール/領収管理/支援者の連絡体制
- 選択:必要なら信託・任意後見・見守り契約などを組み合わせる
生活保護の実務資料でも、土地・家屋、自動車、預貯金の扱いについて「原則」と「容認」が整理されています。(生活保護の基本的な実務)
「何が絶対ダメ/絶対OK」と単純化せず、ケースワーカーと相談しながら、生活維持の観点で説明できる形に整えるのが現実的です。
チェックリスト|相続前/相続後にやること
相続前(親が元気なうちにできること)
- 本人の支出(毎月・年数回・突発)を見える化
- 福祉サービス/相談支援の連絡先を1枚にまとめる
- 家族内で「主担当」と「連絡担当」を決める
- 遺言・信託・後見の必要性を、生活のゴール(住まい・お金・支援者)から検討
相続後(もしもが起きた直後にやること)
- 福祉事務所へ申告・相談(相続の事実/見込みを共有)(例)
- 遺産の種類を一覧化(預金・保険・不動産・負債)
- 支払いが止まる項目(家賃・施設費・光熱・通信)を優先的に確保
- 本人が触れるお金を“上限付き”にし、詐欺・浪費を予防
- 相続手続きを「止まらない順番」で進める(戸籍→金融→不動産)
注意点・よくある失敗
失敗1|相続を黙って進め、後で発覚して大問題に
- 申告がないまま後日の調査で発覚した場合は不正受給となる旨を自治体が示しています。(例)
- 対策:まず福祉事務所へ相談し、必要資料と扱い方(調整の見通し)を確認する
失敗2|「生活保護が怖い」→相続放棄で、別のリスクが出る
- 相続放棄は“万能な逃げ道”ではありません。負債がある可能性があるなら検討価値はありますが、生活の安定資金まで手放すことになる場合もあります
- 対策:負債の有無を調査し、必要なら限定承認も含めて専門家に整理してもらう
失敗3|本人が一括で大金を持ち、浪費・詐欺で短期消失
- 「善意の相続」が、数か月で消えるケースがあります
- 対策:目的別に分け、本人が触れる範囲を小さく固定。支払いは自動化し、領収管理と相談先を決める
失敗4|制度(信託・後見)だけ先に入れて、運用が回らない
- 制度は道具です。日々の支払い・連絡ルートがないと、現場が止まります
- 対策:先に「住まい×お金×支援者」の運用を作り、必要な制度を後から当てはめる
Q&A
Q1. 相続したら、生活保護は必ず廃止になりますか?
必ず一律にそうなる、とは言い切れません。ただし、生活保護は資産活用が前提なので、相続で資産が増えた場合は申告したうえで、生活維持に必要な支出へ充当する方向で調整が行われることが多いです。
まず福祉事務所に相談し、必要資料と扱い方(調整の見通し)を確認するのが安全です。申告がないまま後日発覚すると不正受給扱いになり得る旨を自治体が案内しています。(例)
Q2. 生活保護が心配なので、相続放棄した方がいいですか?
「借金があるかもしれない」場合は相続放棄の検討価値がありますが、生活の安定資金まで手放す結果になることもあります。
先に負債の調査を行い、必要なら限定承認も含めて整理するのが現実的です。“怖いから放棄”は、後で後悔につながりやすいので要注意です。
Q3. 申告すると不利になりそうで怖いです…
気持ちはよく分かります。ただ、申告しない方がリスクが大きいです。自治体でも、申告がないまま後日発覚した場合は不正受給となる旨を示しています。(例)
申告は「罰を受けるため」ではなく、どう調整すれば生活が守れるかを一緒に決めるためのスタート地点と考えると進めやすくなります。
Q4. 本人が通帳を持つと不安です。どう管理すればいい?
よく効くのは、目的別に口座を分けることと、本人が触れるお金を「少額の範囲」に固定することです。
さらに、家族・支援者・専門家のうち、誰が支払いを担い、誰が連絡窓口かを決めておくと、浪費・詐欺の被害が減りやすくなります。
Q5. 生活保護のルールは自治体で違いますか?
運用の細部(書類の様式や確認の仕方)は自治体で差が出ることがあります。だからこそ、最初に福祉事務所で「あなたのケースで必要な資料」「調整の見通し」を確認するのが最短です。
大枠の考え方(資産活用が前提、原則と例外の整理)は、厚労省の実務資料でも確認できます。(生活保護の基本的な実務)
関連記事(内部リンク)
生活保護の不安は「お金の運用」と「制度の組み合わせ」で小さくできます
- 家計が回らない|年金・手当・負担上限を整理して月次資金計画を作った事例
- 相続した財産を使い込まれそう|信託口座・支出ルールで“守る運用”にした事例
- 障害のある子に遺産を「安全に残す」方法|遺言・家族信託・成年後見の違い
- 【チェックリスト付き】親亡き後の備えは大丈夫?セルフチェック
- 親亡き後・相続・福祉制度の記事一覧
📞 ご相談はこちら
☎ 0120-905-336
「相続すると生活保護がどうなるか不安」「申告のしかたが分からない」「本人が使い込まない運用にしたい」など、状況に合わせて“現場で回る設計図”を一緒に作れます。