施設から“親亡き後の同意者”を求められた|任意後見・死後事務で対応した事例
施設から「親亡き後の同意者」を求められた|任意後見+家族会議で“止まらない体制”を作った解決事例
施設・病院・支援事業所から突然「今後の同意者(連絡先・契約者)は誰ですか?」と言われて、焦るご家庭は多いです。
この記事は、精神障害・知的障害のあるお子さまがいる家庭向けに、「同意者問題」を現実的に解決する手順を、事例ベースで分かりやすくまとめます。
結論|“同意者”は1人で背負わず、役割分担で設計する
施設が求める「同意者」は、実務的には①緊急連絡、②契約・更新、③支払い、④(ケースによって)医療・入退院に関する同意が混ざって語られていることが多いです。
ここを分解しないまま「きょうだいが同意者になる/ならない」で揉めると、手続きも支援も止まりがちです。
そこで、この記事の結論はシンプルです。
“同意者”を1人に押し付けず、「役割」を複数に分け、書面で見える化します。
- 役割1日常の連絡・見守り:相談支援専門員/事業所/家族の誰が窓口か
- 役割2契約・更新(施設利用契約、重要書類):任意後見や、状況により法定後見
- 役割3支払い:口座・引落の仕組み(必要なら信託・支援口座)
- 役割4死亡直後の事務:死後事務委任(遺言だけでは埋まらない空白を補う)
そもそも施設が求める「同意者」とは何か
施設職員さんの「同意者が必要です」は、法律用語というより現場の安全運用のための確認です。ここを誤解すると、家族は「法的に誰かを立てないと入れないの?」と不安になります。
ポイント:まずは施設に「何の同意が必要か」を具体的に聞き、同意の種類を分解してください。
| 分類 | 施設が求めがちな内容(例) | よくある誤解 | 現実的な解き方 |
|---|---|---|---|
| 連絡 | 緊急時の連絡先、家族連絡網、夜間対応の連絡順 | 「法定代理人が必要」 | 連絡順・判断者を家族会議で決め、施設に提出 |
| 契約 | 利用契約、更新、重要書類の署名、個人情報同意 | 「本人が署名できない=即後見」 | 本人の理解度に応じて、任意後見/法定後見/支援で対応 |
| 支払い | 利用料の引落口座、未払い対応、変更届 | 「親の口座のままでOK」 | 親名義凍結リスクを前提に、支払いルートを別設計 |
| 医療 | 入院・手術・精神科の入院形態に関する手続き | 「後見人なら何でも同意できる」 | 医療同意は論点が複雑。施設・病院の運用を確認し、意思決定支援を組む(同意の強要は避ける運用が示されています) |
「署名が難しい」=すぐ成年後見、ではありません
署名が難しい理由は、ひとつではありません。たとえば精神障害の場合、調子の波で「今は難しい」「来週なら落ち着いて判断できる」が起きます。 いきなり“重い制度”を当てる前に、いつ・どの書類が・どれだけ重要かを整理すると、選択肢が増えます。
解決事例|任意後見+家族会議で合意形成できた流れ
登場人物(モデルケース)
- 本人:30代、精神障害(症状の波あり)。基本は落ち着いて会話できるが、繁忙期に悪化しやすい。
- 親:同居の母。体力低下で将来が心配。
- きょうだい:遠方在住。「責任が重い役は無理」と消極的。
- 施設:グループホーム。更新手続き・緊急時対応の窓口を明確にしたい。
起きていた問題
- 施設から「今後の同意者・契約窓口は誰ですか?」と質問。
- 本人は調子が良いと理解できるが、波があるため「重要書類の署名は不安」と施設側。
- きょうだいは遠方で、平日対応や突発対応は難しい。
- 母は「全部きょうだいに頼むのは申し訳ない」と言い出せず、話が進まない。
解決の方針(ポイントは“役割分担”)
同意者=1人と考えるのをやめ、次の3点を分けました。
- 日常の連絡窓口:相談支援専門員+母(サブで施設に登録)
- 契約・更新の法的窓口:本人が元気なうちに任意後見契約を締結(受任者はきょうだい)
- 緊急時の判断ルール:家族会議で「連絡順」「判断の分担」「夜間の対応」を文書化
なぜ「任意後見」を選んだのか
任意後見は、本人が判断できるうちに「将来、判断が難しくなったときに支援してもらう人」を決めておく仕組みです。
公正証書で契約する必要があります。
また、任意後見は「契約しただけ」で直ちに動くわけではなく、判断能力が低下した段階で家庭裁判所が任意後見監督人を選任して、はじめて効力が生じる点が重要です。 これにより、“必要になるまで発動させない”設計ができます。
家族会議で合意形成できた理由
きょうだいが怖いのは、「同意者=全部背負う」状態です。そこで、家族会議では次を徹底しました。
- きょうだいが担うのは“法的な署名・契約の窓口”が中心(=毎日の世話ではない)
- 日常連絡は相談支援・施設・母が回す
- 夜間の駆けつけは、原則救急・施設判断→家族へ連絡(「まず誰が行く?」を決めない)
- 支払いは自動化(口座引落・ルール化)して、連絡が来ても慌てない
この事例の結果
- 施設へ「連絡順・窓口・更新手続きの体制」を提出し、同意者問題がいったん解消。
- 本人が安定している時期に任意後見契約を公正証書で作成(必要資料を準備してスムーズ化)。
- 本人の調子が悪い時期の契約対応が「止まらない」見通しが立ち、家族の不安が大きく減った。
成年後見・任意後見・家族信託・死後事務|役割の違い
「同意者」をめぐる相談では、制度が混ざりがちです。ここでは初心者向けに、役割だけを短く整理します。
| 制度 | ざっくり役割 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 法定後見 (成年後見等) |
判断が難しい状態の本人の財産管理・契約を法的に支える | すでに本人の判断が難しく、契約・解約が止まっている | 開始・運用は裁判所手続き。負担感が出やすい |
| 任意後見 | 判断できるうちに、将来の支援者(受任者)を決める | 症状の波があり、将来に備えて“止まらない窓口”を作りたい | 公正証書が必要 /監督人選任で発効 |
| 家族信託 | お金の管理・使い道を仕組みにする(生活費の支払い設計に強い) | 生活費・施設費など“毎月の支払い”を安定させたい | 契約設計が重要。信託だけで全て解決はしない |
| 死後事務委任 | 亡くなった直後の事務(施設精算・解約等)を任せる | 親亡き後、子に事務を背負わせたくない | 遺産分配そのものではない(相続とは別) |
大事な整理:施設が困るのは「連絡がつかない」「契約更新できない」「支払いが止まる」です。
だからこそ、制度は“同意の種類”ごとに使い分けると、最短で解決します。
手続きの流れ|誰が・いつ・何を・どの書類で進めるか
施設に確認する(最初の1週間)
- 誰が:親(または主たる支援者)+相談支援専門員
- 何を:「同意者が必要な場面」を具体化(契約?更新?医療?支払い?)
- 成果物:施設からの要望をメモに残す(口頭だけにしない)
施設への聞き方テンプレ(そのまま使えます)
- 「同意が必要なのは、どの書類ですか?(契約書名・更新書類名)」
- 「署名者は“本人”でなければいけませんか? 代理署名は想定していますか?」
- 「緊急時は“誰が最終判断者”である必要がありますか? 連絡順が分かれば足りますか?」
- 「支払いの窓口(請求書の宛先)は誰を希望しますか?」
家族会議を開き、役割を分ける(1〜4週間)
- 誰が:親・きょうだい(可能なら)・相談支援専門員(同席が現実的)
- 何を:連絡順、緊急時の判断、契約窓口、支払いルートを決める
- 書類:家族会議メモ(議事録形式がおすすめ)
「決めたことを1枚にまとめる」だけで、施設とのやり取りが驚くほどスムーズになります。
任意後見を検討する(本人が安定している時期に)
- 誰が:本人(委任者)+任意後見受任者(候補)+専門家+公証役場
- いつ:本人が落ち着いて意思確認できるタイミング(ここが最重要)
- 何を:代理権の範囲(施設契約、更新、支払い、行政手続など)を具体化
- どの書類で:任意後見契約公正証書(公正証書が必要)
任意後見は「契約したらすぐ動く」ではありません。判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて効力が生じます。
支払いルートを固める(並行して実施)
- 誰が:親+本人+支援者(必要に応じて)
- 何を:引落口座、請求先、未払い時の連絡先、緊急費の置き場
- コツ:支払いを「生活費」「小遣い」「予備費」に分けると管理しやすい
“親亡き後”の空白を埋める(死後事務委任など)
- 誰が:親(委任者)+受任者(家族・専門家等)
- 何を:施設精算、解約、行政手続、死亡連絡などを具体的に委任
- 注意:死後事務は「相続(遺産分配)」とは別物。役割を分けて設計します
チェックリスト|“同意者問題”の準備で最低限そろえるもの
まずはここから(優先度順)
- 施設が求める「同意」の内訳メモ(契約名・更新名・頻度)
- 緊急連絡先の「順番」シート(誰→誰→誰)
- 請求書の宛先・支払い口座の整理(凍結リスクを想定)
- 家族会議メモ(役割分担・揉めポイント・次回宿題)
- 任意後見を検討するなら:本人が安定して話せる時期の見立て
任意後見の準備資料(イメージ)
公正証書作成にあたり、本人確認資料のほか、委任者(本人)の戸籍・住民票等が必要になる案内があります(公証人の案内に従って準備します)。
注意点・よくある失敗
失敗例1|「同意者=きょうだい」にして話が終わった気になる
- 実際には、平日の更新・支払い・トラブル対応が発生して破綻。
- 対策:「連絡」「契約」「支払い」「緊急判断」を分解し、背負う範囲を限定する。
失敗例2|本人が不安定な時期に“急いで”任意後見を進めてしまう
- 任意後見は「本人が判断できるうち」に契約する制度です。タイミングを誤ると前に進みにくくなります。
- 対策:主治医・支援者の見立てを踏まえ、安定期を狙って段取りする。
失敗例3|医療同意を“後見人が全部できる”と思い込む
- 医療の同意は現場運用・意思決定支援が絡み、単純化が危険です。
- 対策:病院・施設の運用を確認し、意思決定支援のガイドライン等に沿って「強要しない」整理をする。
失敗例4|親名義口座のまま施設費を引落している
- 親が亡くなると口座凍結で、施設費・生活費の支払いが止まることがあります。
- 対策:支払いルートを別設計(本人名義口座・自動引落・予備費)し、緊急時の代替案も決める。
Q&A|よくある質問
Q1. 施設に「後見人をつけて」と言われたら、必ず成年後見が必要ですか?
まずは「何のために必要と言われたか」を確認してください。契約更新の署名だけが問題なら、本人の状態や契約の重要度により、任意後見・支援・手続きの組み替えで対応できる場合もあります。
“後見が必要な範囲”を切り分けるのが最初の一歩です。
Q2. 任意後見は、作っただけで施設の契約を代わりにできるようになりますか?
すぐには動きません。任意後見は、判断能力が低下した段階で、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて効力が生じます。
ただし、だからこそ「必要になるまで発動させない」設計ができます。
Q3. 任意後見契約はどうやって作りますか?
任意後見契約は公正証書で作成する必要があります。 準備資料として戸籍・住民票等が案内されています(詳細は公証役場・公証人の指示に従います)。
Q4. 「同意者」って、医療同意まで含まれますか?
施設によります。医療同意は、本人の意思決定支援や現場運用が絡むため、単純に「誰がサインするか」で片付かないことがあります。医療機関が後見人等に同意署名を強要しないよう注意する趣旨の資料も示されています。
まずは「何の同意書か」「誰の署名を求めているのか」を確認し、支援者と一緒に整理しましょう。
Q5. 親亡き後の事務(施設精算や解約)まで考えるなら、何を組み合わせると良い?
「死亡直後の空白」を埋めるには、死後事務委任が有効です。死後事務委任は相続(遺産分配)ではなく、死亡後の事務手続きを委任する仕組みとして整理されています。
施設費の精算・解約・行政手続など、子に背負わせたくない事務を具体的に書面化するのがコツです。
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