障害のある50代の子に財産をどう残す?|5080問題で失敗しない相続設計の考え方
親が70代・80代、障害のある子が40代・50代になってくると、 「自分の財産をできるだけ多くこの子へ残したい」 と考える親御さんは少なくありません。
しかし、親亡き後の相続設計で本当に重要なのは、 財産を多く残すことではなく、本人がその財産を使って長く安定した生活を続けられる状態を作ること です。
現金、不動産、生命保険、遺言、家族信託、成年後見などには、それぞれ役割と注意点があります。
「この子には全部残す」「きょうだいに管理を頼む」といった一つの考えだけで決めず、生活費・住まい・管理方法・きょうだいとの関係まで含めて設計することが大切です。
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障害のある50代の子への相続では、次の5つをセットで考えます。
- 本人に毎月いくら必要なのか
- 本人にいくら残すのか
- 現金・不動産など、何を残すのか
- 受け取った財産を誰がどう管理するのか
- 本人が亡くなった後、残った財産をどうするのか
「誰に何を相続させるか」だけでは、親亡き後の相続設計は完成しません。
いわゆる8050問題では、高齢の親と中高年の子の生活課題が重なることが問題になります。 検索上「5080問題」と表現されることもあります。
障害のある子がいる家庭では、さらに相続・財産管理の問題が重なります。
- 本人は障害年金だけで生活できるのか
- 実家を残すべきか、現金を残すべきか
- 1,000万円、2,000万円と残して本人が管理できるのか
- きょうだいへ多めに残して本人の支援を頼むべきか
- 家族信託を使えば安心なのか
- 成年後見を利用した方がよいのか
- 生活保護を将来利用する可能性がある場合、財産をどう考えるのか
- 本人死亡後に財産が誰へ相続されるのか
こうした問題は、財産額だけを見ても答えが出ません。
本人の残りの人生に必要な生活費と、財産を管理する力・支援体制を先に確認する 必要があります。
- 障害のある50代の子へ財産を残すときの基本的な考え方
- 「多く残せば安心」とは限らない理由
- 本人へ必要な財産額の計算方法
- 預貯金・不動産・生命保険の違い
- 遺言書が必要になりやすい家庭
- 家族信託でできる財産管理
- 成年後見が必要となる可能性がある場面
- きょうだいとの財産配分で注意すること
- 本人死亡後まで考えた相続設計
- 親が元気なうちに行う1年ロードマップ
- ① 50代の障害のある子への相続は何が違う?
- ② 最初に「本人にいくら必要か」を計算する
- ③ 障害年金・給与・親の援助を分けて考える
- ④ 現金を多く残せば安心とは限らない
- ⑤ 実家を残す?現金を残す?不動産相続の注意点
- ⑥ きょうだいと不動産を共有させるのは慎重に
- ⑦ 遺言書|誰に何を残すかを親が決めておく
- ⑧ 家族信託|一括で渡さず管理する選択肢
- ⑨ 成年後見|本人が相続した財産の管理に必要?
- ⑩ 生命保険をどう組み合わせる?
- ⑪ きょうだいへ多く残して本人の世話を頼む方法は安全?
- ⑫ 本人が相続人になる遺産分割で注意すること
- ⑬ 本人が亡くなった後の「二次相続」まで考える
- ⑭ 生活保護の可能性がある場合の相続財産
- ⑮ 相続後の生活支援を誰が担うか決める
- ⑯ よくある失敗例
- ⑰ 親が元気なうちに進める1年ロードマップ
- ⑱ 保存版|相続設計チェックリスト
- ⑲ 関連記事・公的資料
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① 50代の障害のある子への相続は何が違う?
障害のある50代の子への相続でも、相続の基本的な法律が別になるわけではありません。
重要なのは、 相続した後の本人の生活期間がまだ長く続く可能性があること です。
例えば本人が50歳で、80歳まで生活するとすれば30年間あります。
その間には、
- 親の死亡
- 住まいの変更
- 本人の退職・就労終了
- 障害状態や身体機能の変化
- 医療費の増加
- グループホーム等への入居
- 実家の老朽化
- 本人自身の高齢化
などが起こる可能性があります。
| 一般的な相続設計 | 障害のある子がいる場合に追加したい視点 |
|---|---|
| 誰へ何を残すか | 本人が取得後に安全に管理できるか |
| 相続税はいくらか | 本人の長期生活費はいくら必要か |
| 不動産を誰にするか | 本人が将来住めなくなった後に処分できるか |
| 預貯金をどう分けるか | 日常生活費と長期資金をどう分けるか |
| きょうだいへどう分けるか | 本人の支援負担と財産承継をどう整理するか |
親が亡くなった直後だけではなく、 本人が60代・70代・80代になったときまで見据えて相続設計を行います。
② 最初に「本人にいくら必要か」を計算する
本人へ残す財産額を決める前に、 親亡き後の本人の毎月の不足額 を計算します。
ステップ1|本人の収入を確認
- 障害年金
- 給与・工賃
- 年金生活者支援給付金
- 自治体等の手当
- その他の継続的な収入
ステップ2|親亡き後の支出を確認
- 家賃・住居費
- 食費
- 光熱水費
- 通信費
- 医療費
- 福祉サービスに伴う実費
- 衣類・日用品
- 交通費
- 趣味・交際費
- 家電・引越し等の臨時費
ステップ3|不足額を長期で計算
例えば毎月3万円不足する場合、
- 1年間:36万円
- 10年間:360万円
- 20年間:720万円
- 30年間:1,080万円
となります。
実際には、物価・住まい・就労・医療・福祉制度の変化があるため、単純計算だけで決めるものではありません。
「子のために1,000万円残したい」と考えても、親自身に介護・入院・施設費が必要になる可能性があります。
子へ残す財産より先に、親自身が最後まで生活できる資金を確保する ことが重要です。
③ 障害年金・給与・親の援助を分けて考える
本人が障害年金を受給している場合、 「年金があるのでそれほど財産を残さなくても大丈夫」 と判断してしまうことがあります。
しかし、現在は実家で暮らし、親が多くの費用を負担している可能性があります。
| 現在 | 親亡き後 |
|---|---|
| 実家なので家賃がない | グループホーム・賃貸等で住居費が発生する可能性 |
| 食費を親が負担 | 本人負担へ移る |
| 親が通院送迎 | 交通・支援サービスが必要になる可能性 |
| 親が家事を担当 | 福祉・民間サービス等が必要になる可能性 |
| 親が家の修繕を負担 | 本人が実家を相続すれば本人の負担になる |
毎月親が負担している現金だけでなく、食事・掃除・送迎など、現在親が無償で行っていることも将来の生活設計に反映させます。
④ 現金を多く残せば安心とは限らない
現金や預貯金は、不動産より生活費として使いやすい財産です。
一方で、本人の金銭管理状況によっては、 多額の預金を一括取得すること自体がリスクになる場合 があります。
- 短期間で使ってしまう
- ゲーム・通販・課金等へ高額支出する
- 友人・知人へ貸してしまう
- 悪質商法・詐欺の被害に遭う
- 生活費と将来資金を分けられない
- 投資やローンの勧誘を理解しないまま契約する
だからといって、本人が管理できる財産まで家族が一方的に制限すべきではありません。
本人の能力に応じて、
| 資金 | 考え方 |
|---|---|
| 日常生活費 | 本人が自由に管理・使用する範囲 |
| 緊急資金 | 入院・家電・引越し等へ備える |
| 長期資金 | 将来の生活費として継続管理する |
のように分けて考える方法があります。
⑤ 実家を残す?現金を残す?不動産相続の注意点
障害のある子の親から非常に多いのが、 「この家だけは子に残したい」という希望です。
実家を残すことで住居費を抑えられる可能性があります。
一方で、 家を相続することは、維持管理の責任まで引き継ぐこと でもあります。
| 費用・手続き | 確認すること |
|---|---|
| 固定資産税 | 本人の収入から継続して支払えるか |
| 火災保険 | 契約・更新を誰が確認するか |
| 修繕 | 屋根、水回り、給湯器、エアコン等 |
| 庭・外構 | 維持管理を本人ができるか |
| 近隣対応 | 事故・災害・近隣トラブル時の支援者 |
| 将来の売却 | 本人がグループホーム等へ移った場合の処分方法 |
50代では実家暮らしが適していても、60代・70代になると、身体機能や医療ニーズの変化から住み替えが必要になる可能性があります。
実家を残す場合でも、 将来売却する可能性まで含めた管理方法 を考えておきましょう。
⑥ きょうだいと不動産を共有させるのは慎重に
「本人だけに家を残すと不公平だから、兄妹で2分の1ずつ」 という相続設計があります。
一見公平ですが、不動産共有には将来の課題があります。
| 将来の場面 | 問題になり得ること |
|---|---|
| 修繕する | 費用負担や工事内容の調整 |
| 本人が転居する | 空き家を売る・貸す・残す判断 |
| 不動産を売却する | 共有者それぞれの意思確認が必要 |
| きょうだいが先に死亡する | その持分がきょうだい側の相続人へ移る可能性 |
| 本人の判断能力が低下する | 売却等に法的支援が必要となる可能性 |
現金と不動産の価値を調整しながら、できるだけ将来の管理が複雑にならない配分を検討します。
⑦ 遺言書|誰に何を残すかを親が決めておく
障害のある子がいる家庭では、遺言書によって相続手続きを整理できる場合があります。
- 障害のある本人へどの財産を相続させるか
- 本人へ残す預貯金額
- 実家を誰へ相続させるか
- きょうだいへの財産配分
- 遺言執行者を誰にするか
- 遺留分への配慮
障害のある本人も法定相続人であれば、他の相続人と同じく相続人です。
障害があるという理由だけで、本人を遺産分割協議から外すことはできません。
本人が協議内容と結果を理解できるかを確認し、必要な場合には適切な法的支援を検討します。
遺言を書くだけではなく、親の死亡後に誰が遺言内容を実現するのかも重要です。
預貯金、不動産、相続人の状況が複雑な場合は、専門職等を遺言執行者として検討する方法もあります。
本人へ1,000万円を相続させる遺言を作っても、その1,000万円は相続後には本人の財産になります。
その後誰がどのように管理を支えるかは別に設計する必要があります。
⑧ 家族信託|一括で渡さず管理する選択肢
家族信託は、親の一定の財産を受託者へ託し、契約で定めた目的に従って管理する仕組みです。
障害のある子へ多額の財産を一度に渡すことが心配な家庭では、 親の死亡後も信託財産から本人の生活費等を給付する設計 を検討できる場合があります。
親の財産を本人の生活へ長期的に使う
親の一定の金銭を信託財産とし、親の生前は親のために管理し、親死亡後は障害のある子を受益者として、受託者が契約に従って生活費等を給付する設計を検討します。
- 信託した金銭の長期管理
- 信託した不動産の管理
- 本人への定期的な給付
- 一定の臨時費用の支払い
- 本人死亡後の残余財産の帰属先
親の家族信託だけで、成人した本人の障害年金、給与、本人がすでに所有する預貯金を当然に管理できるわけではありません。
また、本人の施設契約、福祉手続き、医療、日常生活の見守りを包括的に代理する制度でもありません。
委託者・受託者・受益者の組み合わせ、財産の移転時期、信託終了時の帰属によって税務上の検討が必要になります。
信託契約を作る際は、法律面だけでなく税理士等による確認も重要です。
⑨ 成年後見|本人が相続した財産の管理に必要?
障害のある子へ財産を残す話になると、 「成年後見人を付けて管理してもらえばよいのでは?」 という質問がよくあります。
成年後見制度は重要な選択肢ですが、 障害があることだけで当然に必要になる制度ではありません。
| 本人の状況 | 検討する支援 |
|---|---|
| 自分で預金管理できる | 本人自身の管理を基本とする |
| 定期的な確認があれば管理できる | 見守り、自動化、日常的金銭管理支援等を検討 |
| 本人が契約を理解し支援者を選べる | 財産管理契約・任意後見等を検討 |
| 重要な財産管理・契約に法的代理が必要 | 成年後見制度等を検討 |
現行の成年後見制度は、相続手続きが一度終われば当然に終了する制度ではありません。
本人の日常生活・今後の財産管理まで含めて、本当に継続的な法的支援が必要なのか確認します。
成年後見人等は財産管理・法律行為を支援しますが、毎日の食事、掃除、介護、常時の見守りを直接行う制度ではありません。
また、あらゆる医療行為について包括的に本人へ代わって同意できる権限があるわけではありません。
⑩ 生命保険をどう組み合わせる?
生命保険は、親の死亡後に一定の資金を準備する方法の一つです。
預貯金の相続手続きとは異なる仕組みで受取人へ保険金が支払われるため、 死亡直後の資金確保 という面で役立つ場合があります。
- 誰を受取人にするか
- 本人が保険金を受け取った後に管理できるか
- 必要な生活費と保険金額が合っているか
- 相続税上の取扱いを確認する
- 遺言・信託との財産配分が偏っていないか
保険金を本人が受け取れば、その後は本人の財産となります。
多額の保険金を本人が一括取得する場合は、預貯金と同様に、取得後の金銭管理まで考えておきます。
⑪ きょうだいへ多く残して本人の世話を頼む方法は安全?
親からよく聞かれるのが、
「妹に財産を多く残す代わりに、兄の面倒を見てもらいたい」
という考えです。
気持ちは理解できますが、 財産を多く相続することと、障害のある本人を生涯支援することは別の問題 です。
例えば、きょうだい自身が、
- 病気になる
- 転居する
- 高齢になる
- 経済的に苦しくなる
- 本人より先に亡くなる
可能性があります。
| 役割 | 担い手の例 |
|---|---|
| 日常生活 | グループホーム、福祉サービス |
| 福祉調整 | 相談支援専門員 |
| 医療 | 主治医、訪問看護、薬局 |
| 相続手続き | 遺言執行者、専門職等 |
| 財産管理 | 本人、信託受託者、必要に応じた後見人等 |
| 家族としてのつながり | きょうだい |
きょうだいには家族として無理なく続けられる部分をお願いし、専門的な役割は制度・支援者へ分散する方が長期的には安定しやすくなります。
⑫ 本人が相続人になる遺産分割で注意すること
遺言書がなく、相続人間で財産を分ける場合には、障害のある本人も遺産分割協議へ参加します。
ここで重要なのは、 障害名ではなく、その遺産分割の内容と結果を本人が理解できるか です。
| 確認すること | 具体例 |
|---|---|
| 本人が取得する財産 | 預金500万円、自宅など |
| 取得しない財産 | 他の相続人が取得する不動産・預金等 |
| 協議の結果 | 署名すると誰が何を取得するのか |
| 本人への影響 | 住まい・生活費・財産管理への影響 |
成人した本人について、親族であるという理由だけで本人の遺産分割を包括的に代理する権限はありません。
法的代理が必要な場合は、成年後見制度等を含めた個別の確認が必要です。
例えば母が障害のある子の成年後見人であり、父の死亡によって母と子の双方が相続人となる場合、遺産分割では利益相反が生じる可能性があります。
その場合、特別代理人や成年後見監督人等による対応が必要になることがあります。
⑬ 本人が亡くなった後の「二次相続」まで考える
50代の障害のある子への相続では、 親から子への相続だけでなく、将来その子が亡くなったときの財産承継 も考えておく価値があります。
父母が亡くなり、障害のある長男が実家と2,000万円を相続したとします。
長男が未婚で子もおらず、その後死亡した場合、長男自身の相続人が誰になるかによって、残った財産の承継先が決まります。
親が 「長男の生活に使った後、残った財産は妹や妹の家族へ戻したい」 と考えていても、親の通常の遺言だけで長男自身の全財産の相続を自由に指定できるわけではありません。
このような場合は、家族信託等を利用し、信託財産について本人死亡後の帰属先まで設計できる可能性があります。
家族信託で将来の帰属先を設計できるのは、基本的に信託財産についてです。
本人が自分で得た給与・障害年金・本人固有の預貯金まで親が自由に承継先を決めることはできません。
⑭ 生活保護の可能性がある場合の相続財産
本人が現在または将来、生活保護を利用する可能性がある家庭では、 「財産を本人へ残さない方がよいのでは?」 と考えることがあります。
しかし、この判断は慎重に行う必要があります。
生活保護は、利用できる資産・収入・他制度等を活用しても、最低生活を維持できない場合に不足分を補う制度です。
本人が預貯金やその他の財産を相続した場合、生活保護を利用しているのであれば福祉事務所への申告が必要です。
財産額・内容によって、保護費の変更、停止、廃止等につながる可能性があります。
取得した資産を適正に生活のためへ活用した後、再び最低生活を維持できなくなった場合には、改めて相談・申請することができます。
制度は将来変更される可能性もあります。
本人の生活、住まい、医療、財産管理、親の財産状況を総合して、本人へ残す財産を考えましょう。
⑮ 相続後の生活支援を誰が担うか決める
相続設計で最後に忘れてはいけないのが、 財産ではなく「人と支援」の引継ぎ です。
例えば、本人へ2,000万円を残しても、
- 誰が病院へ連絡するのか
- 誰が障害福祉サービスを調整するのか
- 誰がグループホームと連絡するのか
- 誰が本人の体調変化に気付くのか
- 誰が通帳管理を支援するのか
が決まっていなければ、本人の生活は安定しません。
| 分野 | 平時からつながる先 |
|---|---|
| 福祉 | 相談支援専門員、自治体、基幹相談支援センター等 |
| 住まい | グループホーム、居宅介護等 |
| 医療 | 主治医、訪問看護、薬局 |
| お金 | 本人、適切な金銭管理支援、必要に応じた専門職 |
| 家族 | きょうだい・親族 |
親の代わりを一人決めることではありません。
親が担っている役割を、複数の支援者・制度・専門職へ分けて引き継ぐこと です。
⑯ よくある失敗例
- 財産を多く残せば安心だと思う
- 本人の将来の月次生活費を計算していない
- 親自身の介護・老後資金を残さず生前贈与する
- 実家を残せば住まいは解決すると考える
- 公平だからという理由だけで不動産を共有させる
- 多額の預貯金を本人へ一括で残す
- 本人が相続した後の金銭管理を決めていない
- 遺言書だけ作れば親亡き後対策は完成すると思う
- 家族信託だけで本人の生活・医療・福祉まで支援できると思う
- 障害があるため当然に成年後見が必要だと思う
- きょうだいへ多く財産を渡して「一生よろしく」と頼む
- 本人が相続人なのに家族だけで遺産分割を決める
- 本人死亡後の財産承継を考えていない
- 財産ばかり考え、福祉・医療・住まいの支援者を作っていない
障害のある子への相続で最も避けたいのは、 「財産はあるのに、その財産を本人の生活へ安全に使う仕組みがない状態」 です。
⑰ 親が元気なうちに進める1年ロードマップ
最初の1か月|財産と生活費を見える化する
- 親の預貯金・不動産・証券・保険・負債を整理する
- 本人の障害年金・給与・預貯金を確認する
- 本人と親のお金を分ける
- 親が本人へ負担している費用を計算する
- 親亡き後の月次生活費を作る
3か月以内|住まいと財産管理を確認する
- 本人が実家へ住み続けられるか確認する
- グループホーム・一人暮らし等も比較する
- 本人が管理できる金額・できない金額を確認する
- 日常生活費と長期資金を分ける
- 相続後の金銭管理支援を検討する
6か月以内|財産配分を具体化する
- 本人へ必要な財産額を試算する
- 本人へ残す現金・不動産を決める
- きょうだいへの財産配分を検討する
- 共有不動産を避けられないか検討する
- 生命保険との組み合わせを確認する
9か月以内|制度を選ぶ
- 遺言書を作るか決める
- 遺言執行者を検討する
- 家族信託が必要な財産を整理する
- 本人の成年後見等が必要な場面を確認する
- 本人死亡後の財産承継も検討する
1年以内|正式な設計へ落とし込む
- 遺言書を正式に作成する
- 必要に応じて家族信託契約を作成する
- 本人の生活費口座・支払い方法を整える
- 本人情報・医療情報を支援者と共有する
- きょうだいの役割を具体化する
- 重要書類の保管場所を共有する
- 年1回の見直し日を決める
- 本人の将来生活費が分かっている
- 本人へ残す財産額が決まっている
- 現金・不動産の配分方針が決まっている
- 本人が財産を受け取った後の管理方法がある
- 遺言書が作成されている
- 必要に応じ信託等の仕組みが整っている
- 本人死亡後の財産についても方向性がある
- きょうだいだけに支援を集中させていない
- 福祉・医療・住まいと相続設計がつながっている
⑱ 保存版|相続設計チェックリスト
本人の生活
- 本人の障害年金・給与を確認した
- 親亡き後の生活費を計算した
- 本人の将来の住まいを検討した
- 60代・70代になった後の生活も考えた
- 本人の希望を確認した
親の財産
- 預貯金を一覧化した
- 不動産を一覧化した
- 証券・保険を確認した
- 借金・保証債務を確認した
- 親自身の介護・老後資金を確保した
本人へ残す財産
- 必要な財産額を試算した
- 現金と不動産の割合を検討した
- 本人が管理できる金額を確認した
- 多額の現金を一括で残す必要があるか確認した
- 本人死亡後の財産承継を考えた
不動産
- 本人が実家へ住み続けるか確認した
- 固定資産税を計算した
- 修繕資金を確保した
- きょうだいとの共有を慎重に検討した
- 将来売却する方法を考えた
遺言・信託
- 遺言書の必要性を確認した
- 遺言執行者を検討した
- 遺留分を確認した
- 家族信託の必要性を確認した
- 信託受託者の負担・継続性を確認した
本人の財産管理
- 本人と親の口座を分けた
- 本人の障害年金を本人名義で管理している
- 本人が自分でできる金銭管理を確認した
- 必要な支援だけを検討した
- 障害があるだけで成年後見が必要と判断していない
きょうだい・支援者
- きょうだいへ相続方針を説明した
- きょうだいへ「全部よろしく」と頼んでいない
- 相談支援専門員と親亡き後を共有した
- 医療・福祉の支援者が親以外にもいる
- 財産管理と日常生活支援の担当を分けた
⑲ 関連記事・公的資料
障害のある50代の子へ財産を残すとき、 「できるだけ多く残すこと」が必ずしも最良の相続対策とは限りません。
まず確認するべきなのは、本人の障害年金・給与・生活費・住まいです。
そのうえで、親亡き後に毎月いくら不足するのかを計算し、本人の長期生活資金として必要な財産額を考えます。
実家を残す場合には、固定資産税・修繕・将来の売却まで考える必要があります。
預貯金を多く残す場合にも、本人が一括で安全に管理できるのかを確認します。
遺言書は財産の承継先を決めるうえで重要ですが、相続後の財産管理まで行う制度ではありません。
家族信託は親の信託財産を長期管理する方法として活用できる可能性がありますが、本人の障害年金・医療・福祉・生活すべてを管理する制度ではありません。
成年後見についても、障害があるという理由だけで利用するのではなく、本人がどの法律行為でどの程度の支援を必要としているのかを個別に考えます。
そして、財産を本人へ残すだけでなく、相談支援専門員、住まい、医療、専門職、きょうだいなどをつなぎ、 「財産を残す仕組み」と「本人がその財産を使って生活する仕組み」を同時に作ること が重要です。
障害のある50代の子への相続設計は、親から子への一回の相続だけを見るのではなく、本人の老後と、本人が亡くなった後の財産まで含めて考えることで、より長期的な安心につながります。
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障害のある50代のお子さまへ財産をどう残すかについて、預貯金・不動産・遺言・家族信託・財産管理だけを個別に考えるのではなく、本人の生活費・住まい・きょうだい・親亡き後の支援まで含めた相続設計を整理します。