5080問題と親亡き後対策|障害のある子の生活を守る遺言書・家族信託・死後事務委任

📞 「自分が亡くなった後、この子の生活と手続きを誰が支えるのか」が心配な方へ

高齢の親と、知的障害・精神障害・発達障害などのある中高年の子が暮らす家庭では、 親亡き後に「財産を誰へ残すか」だけを考えても十分ではありません。

親が亡くなると、 相続、葬儀、行政手続き、住まい、生活費、通院、障害福祉サービス、金銭管理 が同時に動き始めます。

そこで重要になるのが、 遺言書・家族信託・死後事務委任をそれぞれの役割に応じて使い分けること です。

一つの制度ですべてを解決しようとせず、本人の生活を中心に、財産・死後手続き・福祉支援を組み合わせて準備します。

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最初に押さえたい結論

3つの制度の役割は、大きく分けると次のようになります。

制度 主な役割
遺言書 親の死亡後、誰にどの財産を承継させるかを決める
家族信託 親の一定の財産を、生前から死亡後まで契約に沿って管理する
死後事務委任 親自身の死亡後に必要となる葬儀・関係者への連絡・住居や施設に関する事務など、契約で定めた死後事務を委任する

ただし、 この3つを準備しても、障害のある本人の日常生活・医療・福祉・本人名義財産の管理が自動的に完成するわけではありません。

本人の住まい、相談支援、金銭管理、必要に応じた成年後見等も別に考える必要があります。

いわゆる「8050問題」では、80代前後の親と50代前後の子の生活課題が重なることが問題になります。 検索上「5080問題」と表現されることもありますが、障害のある子がいる家庭では、単なる年齢の問題ではありません。

特に注意したいのは、 本人の生活の大部分を、高齢になった親が今も支えていること です。

  • 本人の障害年金を親が管理している
  • 食事・洗濯・掃除を親が行っている
  • 病院への予約・同行を親が行っている
  • 相談支援専門員との連絡を親がしている
  • 施設・グループホームとの連絡窓口が親だけである
  • 本人の携帯料金や生活費を親名義口座から払っている
  • 本人が実家に住み続けることだけ決まっている
  • きょうだいには「将来よろしく」としか伝えていない

この状態で親が亡くなると、相続手続きだけでなく、本人の日常生活そのものが不安定になる可能性があります。

この記事で分かること
  • 5080・8050問題と親亡き後対策の関係
  • 遺言書でできること・できないこと
  • 家族信託で障害のある子へ生活資金を残す考え方
  • 死後事務委任で準備できる親自身の死後手続き
  • 3つの制度をどう組み合わせるか
  • 障害のある本人が相続人になる場合の注意点
  • 親の死亡直後の生活費をどう準備するか
  • 成年後見・任意後見との役割の違い
  • きょうだいへ負担を集中させない方法
  • 親が元気なうちに進める1年ロードマップ

① 5080問題で本当に備えるべき「親亡き後」とは

親亡き後対策というと、 「親が亡くなったら子にいくら財産を残すか」 という話になりがちです。

しかし実際には、お金だけでは解決できません。

親が現在担っている役割を分けてみると、次のようになります。

分野 親が現在担っていること
生活 食事、掃除、洗濯、買い物、生活リズム
医療 通院、服薬、主治医への説明
福祉 相談支援、受給者証、事業所との連絡
お金 障害年金、預金、生活費、支払い管理
法律・契約 施設、住居、携帯電話、相続等の確認
精神的支援 不安、パニック、対人トラブルへの対応
親亡き後対策の本当の目的

親亡き後対策とは、 「財産を残すこと」だけではなく、

親がいなくなっても、本人の住まい・生活費・医療・福祉・財産管理が途切れない状態を作ること です。

② 親の死亡後に同時発生する5つの問題

親が亡くなると、本人の生活とは別に、多くの手続きが一度に発生します。

1|相続

預貯金・不動産・証券などの承継

遺言の有無、相続人、財産、負債を確認し、必要な相続手続きを進めます。

2|親自身の死後事務

葬儀・関係者連絡・住居等の整理

葬儀、納骨、病院・施設への対応、契約終了、関係者への連絡などが必要になります。

3|本人の生活費

明日からの食事・家賃・施設費

親の相続が終わるまで本人の生活を待つことはできません。

4|本人の支援

福祉・通院・住まいの連絡先変更

親が唯一の連絡先になっている場合、新しい支援体制が必要です。

5|財産管理

本人が取得した相続財産をどう守るか

多額の預金や不動産を取得する場合には、その後の管理方法も考えます。

だから一つの契約だけでは足りません

遺言書は相続には強い制度ですが、葬儀や本人の日常生活まですべて行うものではありません。

家族信託は財産管理に利用できますが、医療や福祉の代理制度ではありません。

死後事務委任も、相続財産を好きなように分配する制度ではありません。

役割ごとに仕組みを分ける必要があります。

③ 遺言書|障害のある子への財産承継を決める

障害のある子がいる家庭では、遺言書の重要性が高くなる場合があります。

遺言によって、 親の死亡後に、誰へどの財産を承継させるのか をあらかじめ定めることができます。

遺言で検討する内容
  • 障害のある本人へ預貯金をどの程度残すか
  • 実家を本人へ残すか
  • きょうだいへ何を残すか
  • 生命保険をどう組み合わせるか
  • 遺言執行者を誰にするか
  • 遺留分への配慮が必要か
「本人に全部残す」が必ず最適とは限りません

本人の生活を心配して、財産の大部分を障害のある子へ残したいと考える親もいます。

しかし、多額の現金や管理の難しい不動産を本人が取得した場合、 本人が安全に管理できるかという次の問題が生じます。

「いくら残すか」と「残した後どう管理するか」はセットで考える ことが重要です。

④ 遺言がないと何が起きる?遺産分割の問題

遺言がなく、法定相続分と異なる財産配分を希望する場合などには、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。

障害のある本人も法定相続人であれば、当然に相続人です。

障害があるという理由で本人を遺産分割から外すことはできません

家族が 「この子には難しいから、他のきょうだいで決めておこう」 と考えても、本人を無視して遺産分割を成立させることはできません。

本人が協議内容とその結果を理解して意思を示せるかを個別に確認します。

本人の状態 考え方
説明すれば理解できる 本人へ分かりやすく説明し、本人自身が意思を示す
支援を受ければ理解できる 説明方法・支援者を工夫して意思決定を支援する
法律行為の理解が難しい 成年後見制度等による法的代理が必要か個別に検討する
遺言を作る意味

遺言によって財産の承継方法を具体的に定めておけば、 親の死後に一から財産配分を話し合う必要性を減らせる場合があります。

特に、不動産がある家庭、きょうだいが複数いる家庭、本人の判断能力に不安がある家庭では、早めに検討する価値があります。

⑤ 家族信託|親の財産を長期的に管理する

家族信託は、親の一定の財産を受託者へ託し、信託契約で決めた目的に従って管理してもらう仕組みです。

障害のある子の親亡き後対策では、 親が元気な間から、親の死亡後まで財産管理をつなげられる可能性 がある点が特徴です。

例えば考えられる設計

親を当初の受益者とし、親の死亡後には障害のある子を次の受益者として、 受託者が信託契約に従って生活費等を給付する設計を検討することがあります。

具体的な受益者・給付方法・終了時期・残余財産の帰属は、家族構成や財産によって設計します。

信託で検討できること
親の不動産管理 修繕・賃貸・売却等について受託者の権限を定める
親の一定の金銭管理 生活・介護等に必要な資金を管理する
親死亡後の給付 障害のある子へ毎月一定額を給付する設計
次の承継先 本人死亡後に残る財産の帰属を設計する
「本人へ一括で渡さない」設計を検討できることがポイント

本人が多額の財産管理を苦手としている場合、 親死亡時に全額を一度に本人へ渡すのではなく、信託契約に従った給付を検討できる場合があります。

ただし、税務・遺留分・信託期間・受託者の負担等も確認する必要があります。

⑥ 家族信託でできないことも理解する

家族信託は非常に有効な財産管理手段になり得ますが、万能な制度ではありません。

家族信託でできる可能性があること 家族信託だけでは解決しないこと
信託した親の財産管理 本人名義の障害年金の管理
信託不動産の管理・処分 本人の福祉サービス契約の包括代理
本人への生活費給付 毎日の介護・見守り
財産の将来承継 医療行為への包括的な同意
親の信託契約だけで本人の財産を管理することはできません

成人した本人の障害年金、給与、すでに本人が所有している預貯金は本人の財産です。

親が自分の財産について家族信託を締結しても、それだけで本人自身の財産を管理できるようになるわけではありません。

家族信託があれば成年後見が絶対に不要になるわけではありません

本人自身の契約や財産管理に法的代理が必要であれば、別途成年後見制度等を検討することがあります。

⑦ 死後事務委任|親自身の死亡後の手続きを任せる

死後事務委任は、本人が生前に、 自分が亡くなった後に必要となる一定の事務を、あらかじめ第三者へ依頼しておく契約 です。

障害のある子がいる家庭では、親の死後事務を子へ任せることが難しい場合があります。

そのため、親自身の死後手続きを家族以外へ任せる方法として検討することがあります。

死後事務として契約内容に検討される例
  • 関係者への死亡連絡
  • 葬儀・火葬に関する事務
  • 納骨・供養に関する事務
  • 病院・高齢者施設等への連絡や精算に関する事務
  • 住居の明渡しに関する事務
  • 電気・ガス・水道・通信等の解約に関する事務
  • 家財・遺品整理に関する事務
  • 行政その他の手続きのうち、委任により対応可能な事務
何でも死後事務委任でできるわけではありません

実際に受任者ができる事務は、契約内容、個別の法律、各行政機関・事業者の手続きによって異なります。

特に行政上の届出などには、届出人となれる人が法律で定められているものもあります。

「死後事務委任契約に書けば何でも代理できる」とは考えず、予定している事務ごとに実行可能性を確認します。

⑧ 死後事務委任では相続財産を自由に分けられない

死後事務委任と遺言は、目的が異なります。

項目 遺言 死後事務委任
財産を誰へ承継させるか 原則として遺言・相続の領域
遺言執行 遺言執行者を指定可能 別制度
葬儀・納骨 希望を記載することはある 契約で具体的な実行事務を定める
住居・施設の退去等 主目的ではない 契約内容に応じて検討
死後事務委任で「財産を子へ渡して」と頼むだけでは相続対策になりません

親の財産を誰へ取得させるかは、遺言・相続・信託などのルールに従って整理する必要があります。

財産承継は遺言・信託、親自身の死後手続きは死後事務委任 というように、目的を分けて考えます。

⑨ 遺言・信託・死後事務委任をどう組み合わせる?

3つの制度は競合するものではなく、家庭によっては役割分担して組み合わせることがあります。

遺言書

相続財産の行き先を決める

例えば、本人へ一定の預金を相続させ、他の財産をきょうだいへ相続させるなど、親の財産承継を定めます。

家族信託

長期管理したい財産を仕組み化する

親の一定の財産について、受託者が管理し、親死亡後に本人へ必要な生活資金を給付する設計等を検討します。

死後事務委任

親自身の死亡後に残る事務を担ってもらう

葬儀、納骨、関係者への連絡、住居・施設に関する事務などを契約で具体化します。

課題 検討する仕組み
誰へ財産を残すか 遺言
親の財産を長期管理したい 家族信託
親の葬儀・納骨等を頼みたい 死後事務委任
本人自身の契約・財産管理 本人の能力に応じ、財産管理契約・任意後見・成年後見等
本人の日常生活 障害福祉サービス・相談支援・住まい・医療
重要なのは制度の数ではなく「役割の空白」をなくすこと

契約を3つ作ったとしても、親亡き後に本人の通院を誰も支援できなければ生活は困ります。

反対に、すべての家庭で3制度すべてが必要とも限りません。

その家庭に残る課題から逆算して制度を選びます。

⑩ 親の死亡直後に本人の生活費を止めない

親亡き後対策で見落としやすいのが、 相続手続きが終わる前の本人の生活資金 です。

親が亡くなったとしても、本人には翌日から、

  • 食費
  • 家賃・グループホーム費
  • 医療費
  • 携帯電話料金
  • 交通費
  • 日用品費

が必要です。

今から確認すること
  • 障害年金は本人名義口座へ振り込まれているか
  • 本人名義の生活費口座があるか
  • 本人の固定費はどの口座から引き落とされているか
  • 親名義口座から払っている本人の費用は何か
  • 本人名義で数か月分の生活資金を確保できているか
  • 本人が一人で管理できない場合の支援方法があるか
本人のお金と親のお金を混ぜない

成人した本人の障害年金・給与・預貯金は本人の財産です。

親名義口座へ本人の資金を混ぜていると、親の死亡後に金融機関が死亡を把握して取引を制限した際、本人の生活資金まで使いにくくなることがあります。

⑪ 実家を障害のある子へ残す場合の注意点

「家だけはこの子へ残したい」 という希望は非常に多くあります。

しかし、 不動産を所有することと、安心して住み続けられることは同じではありません。

将来必要になること 確認点
固定資産税 本人の収入から支払えるか
修繕 屋根・給湯器・水回りなどの費用をどう確保するか
火災保険 更新手続きを誰が支援するか
生活支援 食事・掃除・見守りを誰が担うか
住み替え グループホーム等へ移った後、実家をどうするか
売却 将来売却が必要になった場合、誰が手続きを支えるか
きょうだいとの共有も慎重に

「公平に半分ずつ」と実家を共有させると、将来の売却・修繕・建替えなどで共有者間の調整が必要になります。

本人の判断能力、将来の住み替え、きょうだいの負担まで考えて決めましょう。

⑫ 本人が相続した財産を誰が管理する?

遺言によって障害のある本人へ財産を相続させた場合、その財産は本人自身の財産になります。

そこで、 相続前ではなく、相続後の管理まで考えること が必要です。

本人の状況 検討する支援例
本人自身で管理できる 本人名義口座、自動引落し、家計管理
日常的な確認があれば管理できる 家族の見守り、日常生活自立支援事業等
本人が契約内容を理解して受任者を選べる 財産管理契約・任意後見等
重要な法律行為・財産管理に代理が必要 成年後見制度等
きょうだいだから自由に本人の通帳を管理できるわけではありません

成人した本人の財産について、きょうだいや親族であることだけを理由に、包括的な代理権が生じるわけではありません。

本人の能力と必要な支援に応じて、適切な方法を検討します。

⑬ 成年後見・任意後見との違いを整理する

親亡き後対策では、遺言・家族信託だけでなく、成年後見や任意後見について質問されることがあります。

制度 対象 主な役割
遺言 親の財産 死亡後の承継方法を決める
家族信託 信託した財産 契約に従って財産を管理する
死後事務委任 委任者自身の死後事務 契約で定めた死後事務を行う
任意後見 契約した本人 将来判断能力が低下した場合の法律行為等を支援する
成年後見等 判断能力が不十分な本人 財産管理・法律行為を法的に支援する
障害があるだけで成年後見が必要になるわけではありません

成年後見制度の必要性は、診断名や障害者手帳等級ではなく、本人が具体的な法律行為をどこまで理解し、どの程度の支援が必要かによって個別に考えます。

親が成人した子の任意後見契約を一方的に作ることはできません

任意後見は本人自身が公正証書で契約する制度です。

現行制度では、本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから任意後見契約の効力が生じます。

2026年の成年後見制度改正は主要部分がまだ施行前です

成年後見制度等の見直しを含む改正法は2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されました。

成年後見制度の見直しに関する主要部分は、公布の日から2年6か月以内で政令により定める日に施行される予定です。

2026年8月時点では主要部分は未施行であり、現在利用中の後見・保佐等が自動的に終了したり、新制度へ自動的に切り替わったりするものではありません。

⑭ 福祉・医療・住まいは法律書類だけでは引き継げない

遺言書、家族信託、死後事務委任をきれいに作成しても、 本人の生活を知っている人が誰もいなければ、親亡き後の生活は安定しません。

分野 平時からつながっておきたい人・機関
福祉 相談支援専門員、基幹相談支援センター等
住まい グループホーム、居宅介護等
医療 主治医、薬局、訪問看護
就労・日中活動 勤務先、生活介護、就労支援等
緊急時 地域生活支援拠点等、短期入所等
本人情報ファイルを作る
  • 障害特性
  • 本人の希望
  • 意思表示の方法
  • 苦手な対応・安心する対応
  • 主治医・薬局・薬
  • 相談支援・福祉事業所
  • 生活リズム
  • 障害年金・支払い方法
  • 緊急連絡先

厚生労働省の地域生活支援拠点等も、障害のある方の高齢化・重度化や「親亡き後」を見据え、相談、緊急時の受入れ・対応、体験の機会などを地域で整える仕組みとされています。

実際の窓口・利用方法は地域により異なるため、自治体や相談支援専門員へ確認しておきましょう。

⑮ きょうだいにすべてを背負わせない設計

親が高齢になると、 「自分がいなくなったら妹に全部お願いしたい」 「兄に本人のお金を管理してほしい」 と考えることがあります。

しかし、きょうだいにも仕事・家庭・健康・老後があります。

一人のきょうだいを親の完全な代わりにする設計は避ける ことが重要です。

役割 担い手の例
日常生活 グループホーム、福祉サービス
相談調整 相談支援専門員
医療 主治医、訪問看護、薬局
親の死後事務 死後事務受任者等
相続手続き 遺言執行者、相続人、専門職
親の信託財産 受託者
本人自身の財産管理 本人、適切な支援者、必要に応じ後見人等
家族としての関係 きょうだい・親族
きょうだいには「家族にしかできない部分」を残す方法もある
  • 時々本人へ連絡する
  • 年に何回か会う
  • 本人の昔からの好みや生活歴を支援者へ伝える
  • 重要な支援会議へ可能な範囲で参加する

財産管理・相続・24時間の緊急対応まで全部任せるのではなく、家族として無理なく続けられる関係を残すことも重要です。

⑯ よくある失敗例

  • 遺言書だけ作れば親亡き後対策は終わると思う
  • 家族信託だけで本人の財産・医療・福祉まで管理できると思う
  • 死後事務委任で相続財産の分配まで自由に決められると思う
  • 本人へ多額の現金を一括で残せば安心だと思う
  • 実家を本人へ残せば住まいの問題は解決すると思う
  • 本人ときょうだいで不動産を共有させる
  • 本人の障害年金を親名義口座で管理する
  • 本人が相続した後の財産管理方法を決めていない
  • 障害があるため当然に成年後見が必要だと思う
  • 親が成人した本人を当然に代理できると思う
  • 福祉・医療の情報を親しか把握していない
  • 親が亡くなった後にグループホームを探せばよいと思う
  • きょうだいへ「全部よろしく」とだけ頼む

特に避けたいのは、 「書類は完成しているのに、本人の生活を支える仕組みが完成していない状態」 です。

⑰ 親が元気なうちに進める1年ロードマップ

最初の1か月|家族と財産の現状を見える化する

  • 親が本人へしている支援を書き出す
  • 本人の障害年金・給与・預貯金を確認する
  • 親の預貯金・不動産・証券・保険・負債を一覧にする
  • 本人と親のお金を分ける
  • 本人の主治医・福祉サービス・相談先を一覧にする

3か月以内|親が突然動けなくなった場合を準備する

  • 親が入院した場合の本人の住まいを確認する
  • 短期入所・緊急時相談先を確認する
  • 相談支援専門員へ親の高齢化を伝える
  • 緊急時ファイルを作る
  • 本人名義で生活費を確保する

6か月以内|財産承継の方向性を決める

  • 本人へ毎月いくら必要か計算する
  • 本人へ残す財産額を試算する
  • 実家を本人へ残すか検討する
  • きょうだいとの財産配分を検討する
  • 家族信託が必要な財産があるか確認する

9か月以内|死後の役割を分ける

  • 遺言執行者を検討する
  • 家族信託の受託者候補を検討する
  • 死後事務を誰へ任せるか決める
  • きょうだいへお願いする役割を限定する
  • 本人自身の財産管理支援を検討する

1年以内|正式な書類・契約にする

  • 遺言書を作成する
  • 必要に応じ家族信託契約を作成する
  • 必要に応じ死後事務委任契約を作成する
  • 本人について任意後見・成年後見等の必要性を確認する
  • 親自身の認知症対策も確認する
  • 重要書類の保管場所を共有する
  • 年1回の見直し日を決める
1年後に目指したい状態
  • 親が突然入院しても本人の生活が止まらない
  • 本人と親のお金が明確に分かれている
  • 本人の将来の住まいが整理されている
  • 遺言による財産配分が決まっている
  • 長期管理が必要な財産への対策がある
  • 親自身の死後事務の担当が決まっている
  • 本人が相続した後の財産管理方法が決まっている
  • 福祉・医療の支援者が親以外にもいる
  • きょうだい一人へ負担が集中していない

⑱ 保存版チェックリスト

本人の生活

  • 親がしている支援をすべて書き出した
  • 本人が自分でできることを確認した
  • 親以外の相談先がある
  • 緊急時の住まい・受入先を確認した
  • 主治医・薬・福祉事業所を一覧化した

お金

  • 本人の障害年金を本人名義で管理している
  • 本人と親の預貯金を分けた
  • 親亡き後の月次生活費を計算した
  • 親の死亡直後の生活資金を確保した
  • 本人が相続した後の管理方法を検討した

遺言

  • 誰に何を承継させるか決めた
  • 本人へ残す財産額を検討した
  • 実家の承継方法を決めた
  • 遺留分を確認した
  • 遺言執行者を検討した

家族信託

  • 長期管理したい親の財産を確認した
  • 受託者候補を検討した
  • 本人への給付方法を検討した
  • 信託終了時の財産帰属を考えた
  • 税務・遺留分等を確認した

死後事務委任

  • 葬儀を誰へ任せるか決めた
  • 納骨・供養の希望を整理した
  • 病院・施設等への対応を確認した
  • 住居・ライフライン等の死後事務を整理した
  • 契約で実行可能な事務か個別に確認した

本人の支援・後見

  • 障害があるだけで成年後見が必要と判断していない
  • 本人がどの契約を理解できるか確認した
  • 任意後見契約を本人自身が理解できるか確認した
  • 本人の財産管理と親の信託財産を混同していない
  • 福祉・医療と法律上の財産管理を分けて考えた

きょうだい・支援者

  • きょうだいの意思を確認した
  • きょうだいへ頼む役割を具体化した
  • 24時間の支援をきょうだいだけに求めていない
  • 相談支援専門員へ親亡き後の不安を共有した
  • 一人の支援者が欠けても生活が止まらない体制を考えた
まとめ

5080問題・8050問題を抱える障害のある子の家庭では、 親が財産を残すだけでは、親亡き後の生活は完成しません。

遺言書は、親の死亡後に誰へどの財産を承継させるかを決めるための重要な手段です。

家族信託は、親の一定の財産を生前から管理し、設計によっては親死亡後も障害のある子の生活のために給付を続ける仕組みを検討できます。

死後事務委任は、親自身の葬儀・納骨・住居や施設に関する事務など、死亡後に残る仕事をあらかじめ第三者へ依頼するための方法です。

しかし、この3つにはそれぞれ役割の限界があります。

本人自身の障害年金・相続財産の管理、医療、福祉、日常生活、住まいまで自動的に解決するわけではありません。

そのため、

  • 本人の生活費
  • 住まい
  • 相談支援
  • 医療・服薬
  • 親から残す財産
  • 本人が取得した後の財産管理
  • 親自身の死後事務
  • きょうだい・専門職の役割

を一つの設計図にまとめることが重要です。

「誰に財産を残すか」「誰が管理するか」「誰が親の死後手続きを行うか」「誰が本人の生活を支えるか」をそれぞれ決めること が、障害のある子の生活を長期的に守る親亡き後対策です。


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