親が認知症になる前にやること|障害のある子のための任意後見・家族信託・遺言の備え
親が認知症になると、預金の管理、不動産の売却、家族信託の契約、任意後見契約、遺言書の作成などが、希望どおりに進められなくなることがあります。
そのため、障害のある子の親亡き後対策は、 親の判断能力が十分なうちに、生活・財産・相続・支援者を整理すること が重要です。
ただし、任意後見・家族信託・遺言は役割が異なります。どれか一つを作ればすべて解決するわけではありません。
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「認知症と診断されたら、すべての契約や遺言ができない」というわけではありません。
重要なのは診断名だけではなく、契約や遺言の内容を理解し、その結果を認識したうえで、自分の意思を表明できるかどうかです。
一方で、判断能力が低下した後では、家族信託や任意後見契約を新しく結ぶことが難しくなり、遺言書の有効性を後から争われるリスクも高くなります。
「まだ元気だから大丈夫」ではなく、「元気だから今できる」 と考えることが大切です。
障害のある子どもを支えている親御さんにとって、自分の認知症は本人だけの問題ではありません。
親が判断や手続きをできなくなると、障害のある子の生活にも直接影響します。
- 親名義の預金から、子の生活費を出せなくなる
- 実家を売却してグループホーム費用を準備できなくなる
- 子に財産をどう残すか決められないまま相続を迎える
- 親が管理していた通帳・年金・受給者証の情報が分からなくなる
- 親が入院しても、子の支援者や連絡先が共有されていない
- きょうだいが突然、生活支援と財産管理の両方を背負う
こうした事態を避けるには、親自身の認知症対策と、障害のある子の親亡き後対策を別々に考えず、 一つの生活設計として組み立てること が必要です。
- 親が認知症になる前に急いで確認したいこと
- 任意後見・家族信託・遺言の違い
- それぞれの制度でできること・できないこと
- 障害のある子のために制度を組み合わせる方法
- 親自身の任意後見と、子の任意後見の違い
- 認知症の兆候がある場合の注意点
- 今日から始める6か月ロードマップ
- ① なぜ「認知症になる前」の準備が必要なのか
- ② 最初に整理する5つのこと|生活・財産・住まい・支援者・相続
- ③ 任意後見とは|親自身の判断能力低下に備える契約
- ④ 障害のある子の任意後見は、親が勝手に契約できない
- ⑤ 家族信託とは|認知症後も親の財産を管理する仕組み
- ⑥ 遺言とは|親の死亡後の財産の承継方法を決める
- ⑦ 任意後見・家族信託・遺言の違いを一覧で比較
- ⑧ 障害のある子の家庭で考える制度の組み合わせ例
- ⑨ 親の認知症で起こりやすい財産凍結・不動産問題
- ⑩ 認知症の兆候がある場合に注意すること
- ⑪ 2026年成年後見制度改正との関係
- ⑫ 法律制度だけでなく生活支援も引き継ぐ
- ⑬ 家族会議で決めておきたいこと
- ⑭ よくある失敗例
- ⑮ 今日から始める6か月ロードマップ
- ⑯ 保存版チェックリスト
- ⑰ 関連記事(内部リンク)
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① なぜ「認知症になる前」の準備が必要なのか
任意後見契約、家族信託、遺言書は、どれも本人の意思に基づいて作るものです。
家族が親のためを思っていても、親本人が内容を理解し、意思を示せなければ、家族だけで自由に作ることはできません。
| 準備 | 判断能力が十分なうちに必要な理由 |
|---|---|
| 任意後見契約 | 将来任せる人と代理権の内容を、本人が理解して公正証書で契約する必要がある |
| 家族信託 | どの財産を誰に託し、どの目的で管理するかを本人が理解して契約する必要がある |
| 遺言書 | 誰に何を残すか、その結果を理解して本人の意思で作成する必要がある |
| 財産管理契約 | 誰にどの財産管理を任せるかを理解して契約する必要がある |
| 不動産の売却・贈与 | 売却・贈与の内容と結果を理解して意思表示する必要がある |
親名義の預金は、親本人の財産です。
家族が生活費を管理してきた場合でも、親の判断能力が低下した後に、家族だからという理由だけで自由に引き出したり、不動産を売却したりできるわけではありません。
銀行や契約先から、本人確認、委任状、法定後見制度の利用などを求められることがあります。
障害のある子の生活費を親の預金や不動産に頼っている家庭ほど、親の判断能力低下が、子の生活に直結します。
そのため、 親の老後対策と、子の将来設計を同時に進める必要があります。
② 最初に整理する5つのこと|生活・財産・住まい・支援者・相続
制度を選ぶ前に、まず次の5つを整理します。
親がしている支援を全部書き出す
- 通院予約・同行・服薬確認
- 受給者証・手帳・医療証の更新
- 通帳・障害年金・家賃・公共料金の管理
- 相談支援専門員・通所先との連絡
- 食事・掃除・洗濯・買い物
- 緊急時や体調悪化時の対応
何を持っているか、誰が把握しているか
- 預貯金・証券口座
- 自宅・土地・賃貸不動産
- 生命保険・個人年金
- 借入れ・保証債務
- 毎月の収入・支出
- 障害のある子のために残したい財産
親が支えられなくなった後も暮らせるか
実家、グループホーム、一人暮らし、施設、親族との同居などを比較し、親の入院時と死亡後の両方を考えます。
親以外に本人の生活を知る人がいるか
きょうだいだけでなく、相談支援専門員、通所先、主治医、薬局、訪問看護、グループホーム、専門職などを役割ごとに整理します。
誰に何を残し、誰が管理するか
障害のある子に多く残すかどうかだけでなく、遺留分、不動産、遺言執行者、財産管理者、きょうだいとの関係まで考えます。
任意後見、家族信託、遺言は、それぞれ解決できる問題が異なります。
「家族信託がよいらしい」「公正証書遺言だけ作れば安心」と制度から入るのではなく、 家庭で起きる困りごとから必要な制度を選ぶこと が大切です。
③ 任意後見とは|親自身の判断能力低下に備える契約
任意後見とは、本人が十分な判断能力を有するうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備え、 誰に、どのような法律行為や財産管理を任せるかを公正証書で決めておく制度 です。
この記事のテーマでいう「親の任意後見」は、親自身が将来認知症になった場合に備える契約です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約する人 | 将来支援を受ける親本人 |
| 任せる相手 | 親族、専門職、法人など、親本人が選ぶ任意後見受任者 |
| 作成方法 | 公正証書による契約が必要 |
| 開始時期 | 親の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所の手続きを経て開始 |
| 主な内容 | 預貯金、年金、保険、不動産、介護・福祉・医療費の支払い、各種契約など |
- 親が認知症になっても、自宅や預金の管理を続けたい
- 親の施設入所や介護契約を支援してほしい
- 親が負担している子の生活費について、今後の方針を整理したい
- 親の財産管理を、信頼できる人に任せたい
- 親自身の生活・介護費を守りながら、子の将来準備を進めたい
現行制度では、任意後見契約を公正証書で作成しただけでは、任意後見人の代理権は発生しません。
親の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から、任意後見契約の効力が生じます。
また、任意後見人ができることは契約で定めた代理権の範囲に限られます。
親の任意後見人は、親本人のために動く人です。
障害のある子本人の預金管理や契約を、親の任意後見人が当然に代理できるわけではありません。
親の財産管理と、子本人の支援・財産管理は分けて設計する必要があります。
④ 障害のある子の任意後見は、親が勝手に契約できない
障害のある子の親亡き後対策として、「子の任意後見を親が用意したい」と考えることがあります。
しかし、子が成人している場合、任意後見契約の本人は障害のある子自身です。
親が本人に代わって、一方的に任意後見契約を作ることはできません。
子本人が、次の内容を理解して、自分の意思で契約することが必要です。
- 将来、どのようなときに支援を受けるのか
- 誰に支援を任せるのか
- どのような手続き・財産管理を任せるのか
- 契約によって何が変わるのか
任意後見契約ができるかどうかは、診断名や手帳の等級だけで決まりません。
説明方法を工夫し、本人が契約の内容と結果を理解して意思を示せるかを、個別に確認します。
一方で、本人が契約内容を理解することが難しい場合は、任意後見ではなく、必要に応じて法定後見制度や福祉サービス、日常生活自立支援事業などを検討します。
| 契約 | 守る対象 |
|---|---|
| 親自身の任意後見 | 認知症などで判断能力が低下した親本人の財産・契約 |
| 障害のある子の任意後見 | 将来判断能力が低下した子本人の財産・契約 |
それぞれ別の本人、別の契約です。
⑤ 家族信託とは|認知症後も親の財産を管理する仕組み
家族信託は、親が自分の財産を信頼できる家族などに託し、契約で決めた目的に従って管理・処分してもらう仕組みです。
たとえば、親を委託者兼当初受益者、子や親族を受託者とし、
- 親の生活費・介護費を支払う
- 必要になった場合に自宅を売却する
- 賃貸不動産を管理する
- 親の死亡後、障害のある子の生活費に充てる
といった目的を定めることがあります。
- 信託した財産を受託者が契約に従って管理する
- 親の判断能力が低下した後も、信託契約に沿った財産管理を継続できる
- 不動産や預貯金など、対象とする財産を選べる
- 親の死亡後も、一定の条件で財産管理を続ける設計ができる
家族信託で管理できるのは、原則として信託契約の対象にした財産です。
信託に入れていない預金・不動産・契約まで、受託者が自由に管理できるわけではありません。
また、家族信託では、次のようなことを当然に行えるわけではありません。
- 親の介護契約・施設入所契約をすべて代理すること
- 親の医療行為に一律に同意すること
- 障害のある子本人の財産を当然に管理すること
- 親の身上保護を包括的に行うこと
- 信託対象外の財産を処分すること
そのため、家族信託だけでは足りない場合に、任意後見や遺言、福祉サービスを組み合わせます。
受託者は、信託財産を自分の財産と分けて管理し、契約に従って支出・記録・報告を行います。
「長男だから」「きょうだいだから」と安易に決めず、年齢、住所、家族関係、事務能力、負担、後継者まで考える必要があります。
⑥ 遺言とは|親の死亡後の財産の承継方法を決める
遺言書は、親が亡くなった後に、誰にどの財産を承継させるかを決めるためのものです。
障害のある子がいる家庭では、 法定相続分どおりに分ければ安心とは限りません。
本人の金銭管理能力、きょうだいとの関係、不動産、遺留分、将来の住まいなどを踏まえて内容を考える必要があります。
| 遺言で決められる主なこと | 具体例 |
|---|---|
| 財産の承継先 | 預貯金、不動産、株式などを誰に承継させるか |
| 遺言執行者 | 預金解約・名義変更などを進める人 |
| 財産の配分 | 障害のある子に多めに残す、管理しやすい財産を残す |
| 付言事項 | 家族への希望や、財産をそのように分けた理由を伝える |
障害のある子に預貯金や不動産を相続させても、その後の管理・支払い・売却を誰が支援するかは別の問題です。
遺言書では「誰に残すか」を決められますが、 本人が受け取った後に、誰がどのように管理するか まで別途考える必要があります。
- 障害のある子に何を残すか
- 不動産を残しても維持・管理できるか
- きょうだいの遺留分に配慮しているか
- 遺言執行者を誰にするか
- 相続後の財産管理を誰が担うか
- 本人が遺産分割協議に参加する必要を減らせる内容か
高齢になってから遺言書を作る場合、作成時に内容を理解していたかが後から争われることがあります。
公正証書遺言にしただけで、遺言能力の問題が完全になくなるわけではありません。
早めに財産と家族関係を整理し、内容を専門家と検討したうえで作成することが大切です。
⑦ 任意後見・家族信託・遺言の違いを一覧で比較
| 比較項目 | 任意後見 | 家族信託 | 遺言 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 判断能力低下後の法律行為・財産管理 | 指定した財産の管理・処分・承継 | 死亡後の財産の承継先を決める |
| 効力が働く時期 | 判断能力低下後、家庭裁判所の手続きを経て開始 | 契約で定めた時期から | 本人の死亡後 |
| 作成時の判断能力 | 契約内容を理解できることが必要 | 信託内容を理解できることが必要 | 遺言内容と結果を理解できることが必要 |
| 対象 | 契約で定めた法律行為・財産管理 | 信託した財産 | 死亡時に残っている遺産 |
| 家庭裁判所 | 開始・監督等に関与 | 通常は直接関与しない | 公正証書遺言では作成時に家庭裁判所は関与しない |
| 認知症後の不動産売却 | 代理権の範囲や裁判所の手続きに従う | 信託不動産で、契約上権限があれば受託者が対応可能 | 生前の売却には対応しない |
| 死亡後の財産承継 | 親の死亡後は相続・遺言の問題となる | 信託契約で一定の承継設計が可能 | 中心的な役割 |
| 生活支援・介護 | 契約締結等は可能でも、実際の介護を行う制度ではない | 原則として財産管理の制度 | 生活支援を行う制度ではない |
任意後見・家族信託・遺言は競合する制度ではなく、役割が異なる制度です。
家庭の状況によっては、
- 家族信託で親の不動産・預金を管理する
- 任意後見で信託対象外の契約や親の生活を支える
- 遺言で残りの財産の承継先を決める
という組み合わせを検討します。
⑧ 障害のある子の家庭で考える制度の組み合わせ例
ケース1|親名義の自宅を将来売却する可能性がある
親が認知症になった後、実家を売却して親の介護費や障害のある子の住まい準備に充てたい家庭です。
- 自宅を家族信託の対象にするか検討する
- 親の生活・介護契約には任意後見を検討する
- 信託対象外の財産について遺言を作る
- 障害のある子の住まいを先に確認する
ケース2|親の死亡後、子に定期的に生活費を届けたい
障害のある子に一括で多額の現金を残すことに不安がある家庭です。
- 子の毎月の生活費不足を試算する
- 遺言で財産の承継先を整理する
- 家族信託・福祉型信託・特定贈与信託などを比較する
- 財産を管理する人と、生活を見守る人を分ける
- 本人の財産管理に法的支援が必要か確認する
ケース3|きょうだいにすべて任せたくない
きょうだいは連絡窓口にはなれるものの、日常生活や財産管理をすべて担うことは難しい家庭です。
- 相談支援専門員・グループホーム・医療との支援者チームを作る
- 遺言執行者や財産管理者に専門職・法人を検討する
- きょうだいの役割を緊急連絡・家族判断などに限定する
- 財産管理と日常生活支援を別の担い手に分ける
ケース4|親自身の認知症が目前で、急いでいる
物忘れや判断力低下が目立ち始めている場合です。
- 医療機関を受診し、本人の状態を確認する
- 本人の意思を確認しながら財産一覧を作る
- 任意後見・家族信託・遺言が可能か早急に専門家へ相談する
- 契約を無理に急がず、意思能力の確認記録を残す
- 契約が難しい場合は法定後見制度や現行の支援策を検討する
⑨ 親の認知症で起こりやすい財産凍結・不動産問題
親の判断能力が低下したとき、家族が特に困りやすいのが預金と不動産です。
| 問題 | 起こり得ること |
|---|---|
| 預金 | 本人確認ができず、家族による引出しや解約が難しくなる |
| 定期預金・証券 | 解約・売却・運用変更を家族だけで行えない |
| 自宅 | 施設入所費用のために売却したくても、契約が進められない |
| 賃貸不動産 | 修繕、賃貸借契約、売却などの判断が滞る |
| 保険 | 解約・契約変更・給付請求に本人の意思確認が必要になる |
本人の意思確認が必要な契約を、家族が本人名義で署名したり、事実と異なる委任状を作ったりしてはいけません。
後から契約の無効、不正利用、相続人間の紛争、損害賠償などの問題につながるおそれがあります。
- どの財産を将来使う可能性があるか
- 不動産を売る可能性があるか
- 親の介護費と子の生活費をどう分けるか
- 家族信託の対象にする財産は何か
- 信託対象外の契約を誰が支援するか
- 法定後見が必要になった場合の申立人候補は誰か
⑩ 認知症の兆候がある場合に注意すること
物忘れが増えた、同じ話を繰り返す、通帳を紛失する、支払いを忘れる、詐欺的な契約を結ぶなどの兆候がある場合は、準備を急ぐ必要があります。
ただし、急ぐあまり、本人の意思を無視して契約を進めてはいけません。
- 本人に十分説明せず、家族だけで契約内容を決める
- 本人が理解していないのに署名・押印だけ求める
- 家族信託・遺言・贈与を同日に大量に進める
- 特定の相続人だけが本人を囲い込む
- 本人の判断能力に疑問があるのに記録を残さない
- 財産を急いで家族名義へ移す
- 本人の体調が安定している時間帯に説明する
- 一度に多くの内容を説明しない
- 図・財産一覧・家族関係図などを使う
- 本人の希望を自分の言葉で話してもらう
- 必要に応じて医師・公証人・専門家と連携する
- 相談・説明・判断の経緯を記録する
認知症の診断があるかどうかだけで結論を出さず、その時点の本人の理解力と意思を丁寧に確認します。
⑪ 2026年成年後見制度改正との関係
2026年6月に成立・公布された改正法では、現行の法定後見制度について、後見・保佐を廃止し、補助を中心とした制度へ一元化する見直しが予定されています。
本人に必要な支援を必要な範囲で設定し、必要性がなくなった場合には審判を見直せる仕組みへ変わる方向です。
任意後見についても、契約内容の変更、一部解除、法定の補助との関係などが見直されます。
成年後見制度の見直しに関する主要部分は、2026年6月24日の公布から2年6か月以内の政令で定める日に施行される予定です。
そのため、今すぐ親の判断能力低下、財産管理、相続、不動産売却への対応が必要な場合は、 新制度を待つだけではなく、現行制度で可能な対策を検討する必要があります。
- 親の財産・負債・保険を整理する
- 親が元気なうちに遺言書を作成する
- 任意後見・家族信託の必要性を検討する
- 障害のある子の住まい・生活費を確認する
- 支援者リスト・緊急連絡網を作る
- きょうだい・親族と役割を話し合う
⑫ 法律制度だけでなく生活支援も引き継ぐ
親が認知症になる前の備えというと、任意後見・家族信託・遺言に目が向きます。
しかし、障害のある子の生活を守るには、法律制度だけでは足りません。
| 分野 | 引き継ぐ内容 | 担い手の例 |
|---|---|---|
| 日常生活 | 食事、掃除、洗濯、買い物、移動 | グループホーム、ヘルパー、通所先、家族 |
| 医療 | 主治医、薬、通院、体調悪化時の対応 | 主治医、薬局、訪問看護、家族代表 |
| 福祉 | 受給者証、支給量、更新、サービス調整 | 相談支援専門員、自治体、事業所 |
| お金 | 障害年金、家賃、生活費、支払い | 本人、家族、財産管理の仕組み、専門職 |
| 住まい | 実家、グループホーム、一人暮らし、緊急時の居場所 | 相談支援、住まいの支援者、親族 |
| 法律・相続 | 契約、遺言執行、信託、後見、相続手続き | 受託者、任意後見人、遺言執行者、専門家 |
- 本人が安心する声かけ
- 苦手な環境・パニックの原因
- 主治医・薬局・服薬内容
- 支援者・事業所の連絡先
- 障害年金・受給者証・手帳の情報
- 通帳・毎月の支払い・住まいの契約
この情報を支援者ノートや生活情報ファイルにまとめ、信頼できる家族・支援者と保管場所を共有します。
⑬ 家族会議で決めておきたいこと
親の認知症対策と子の親亡き後対策を進める際は、家族会議が重要です。
ただし、「将来はきょうだいにお願いする」と曖昧に頼むだけでは、実際の負担が見えません。
| 議題 | 確認すること |
|---|---|
| 親の生活 | 介護、入院、施設、財産管理を誰が支えるか |
| 子の生活 | 住まい、通院、福祉サービス、緊急時対応 |
| 親の財産 | 親自身の老後資金と、子のために残す財産 |
| 遺言 | 財産の配分、遺留分、遺言執行者 |
| 家族信託 | 受託者、信託財産、支出目的、後継受託者 |
| 任意後見 | 誰を任意後見受任者にし、どの権限を任せるか |
| きょうだい | 連絡、見守り、財産管理などをどこまで担えるか |
家族で話し合っていても、認知症や相続が発生した後に、記憶や理解が食い違うことがあります。
議事録、支援者ノート、財産一覧を残し、必要な内容は遺言・契約として正式に作成しましょう。
⑭ よくある失敗例
- 親が元気だからと、財産や相続の整理を先送りする
- 認知症の診断後に初めて家族信託を検討する
- 任意後見契約を作れば、直ちに家族が代理できると思っている
- 親の任意後見人が、子の財産も管理できると思っている
- 家族信託に入れていない財産まで管理できると思っている
- 遺言書だけで、子の財産管理まで解決すると考える
- 障害のある子に自宅を残せば安心だと考える
- きょうだい一人を受託者・後見人・遺言執行者・生活支援者に集中させる
- 本人の意思を確認せず、家族だけで契約を進める
- 医療・福祉・住まいの引き継ぎを行っていない
制度の名前を多く知ることより、 誰を守るために、どの財産を、いつ、誰が、どのように管理するのか を具体化することが重要です。
⑮ 今日から始める6か月ロードマップ
最初の1週間|緊急情報をまとめる
- 親と子の医療・福祉・緊急連絡先を集める
- 親が入院した場合の子の居場所を確認する
- 通帳・保険証券・不動産資料・遺言書の保管場所を確認する
- 親が子のためにしていることを書き出す
1か月以内|財産と生活費を整理する
- 親の預貯金・不動産・保険・負債を一覧にする
- 子の障害年金・給与・工賃・生活費を一覧にする
- 親が毎月負担している子の費用を確認する
- 実家を将来売るか、残すかを検討する
2か月以内|家族と支援者に共有する
- きょうだい・親族と家族会議を行う
- 相談支援専門員に親の高齢化・認知症不安を伝える
- 主治医・薬局・通所先の情報を共有する
- 支援者リストと緊急連絡網を作る
3か月以内|制度の比較相談を行う
- 親自身の任意後見が必要か確認する
- 家族信託に適した財産があるか確認する
- 遺言書の内容と遺留分を確認する
- 障害のある子の財産管理方法を整理する
- 税務・登記・紛争の可能性に応じて各専門家へ相談する
6か月以内|正式な書類・仕組みにする
- 必要に応じて公正証書遺言を作成する
- 家族信託契約を作成し、財産移転等の手続きを行う
- 任意後見契約・財産管理契約・見守り契約を検討する
- 住まい・短期入所・グループホームの候補を確認する
- 年1回の見直し日を決める
すべての制度を使うことが目標ではありません。
親の判断能力が低下しても、親自身の生活と障害のある子の生活がすぐに止まらない状態 を作ることが目標です。
⑯ 保存版チェックリスト
親自身の認知症対策
- 預貯金・不動産・保険・負債を整理した
- 将来の介護・施設・医療の希望を家族に伝えた
- 任意後見受任者の候補を考えた
- 家族信託の対象にしたい財産を確認した
- 遺言書の必要性を確認した
障害のある子の生活
- 本人の毎月の収入・支出を整理した
- 親が負担している費用を書き出した
- 住まいの候補を複数確認した
- 親が入院した場合の居場所を確認した
- 医療・服薬・福祉サービスの情報をまとめた
財産・相続
- 障害のある子に何を残すか考えた
- 不動産を残した後の管理方法を確認した
- 遺留分に配慮した
- 遺言執行者を検討した
- 財産を受け取った後の管理者を考えた
支援者・家族
- 支援者リストを作成した
- きょうだいの役割を具体化した
- 相談支援専門員に親の認知症不安を伝えた
- 親しか知らない情報を減らした
- 家族会議の内容を記録した
⑰ 関連記事(内部リンク)
親が認知症になる前に行うべきことは、任意後見・家族信託・遺言のどれか一つを急いで選ぶことではありません。
まずは、 親の財産、親自身の老後、障害のある子の生活費、住まい、支援者、相続 を整理することが出発点です。
任意後見は、親の判断能力低下後の法律行為・財産管理に備える制度です。
家族信託は、契約で指定した財産を、認知症後も管理・処分できる仕組みです。
遺言は、親が亡くなった後に、誰に何を承継させるかを決めるものです。
役割が異なるため、家庭の状況によっては複数の制度を組み合わせます。
「認知症になったら考える」のではなく、本人が自分の意思で選べるうちに考えること が、障害のある子の生活を守る最大の備えになります。
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