親の預金が凍結、施設費の支払いが止まる|緊急対応で支払いルートを確保した事例
親の預金が凍結、施設費の支払いが止まる|緊急対応で支払いルートを確保した事例
親が急逝した直後、または重い病気で意思表示が難しくなった直後に起きやすいのが、「親名義口座の凍結」→「施設費の引落停止」です。
施設・グループホーム・入所施設の費用は、毎月の支払いが止まると生活の土台が揺れるため、相続手続きより先に“支払いルート”を確保する必要があります。
最初に結論(今日やることはこれだけ)
① 施設へ「支払いが止まる可能性」を先に共有(督促を止め、猶予と手段を相談)
② “代替の支払いルート”を作る(家族立替/子本人名義口座へ切替/仮払い等)
③ 次の1〜2週間で「凍結しても止まらない仕組み」に作り替える(支払い口座・予備費・連絡窓口)
大事な注意
本記事は一般的な実務の整理です。銀行・施設・自治体・ご家庭の事情で対応は変わります。
ただし、緊急時ほど“順番”が重要です。この記事の手順どおりに動くと、慌てる確率が下がります。
0. まず落ち着く:この状況で起きていること
「施設費の引落ができません」と言われたとき、多くのご家族は、相続や戸籍集めの話から考えがちです。
でも緊急時の最優先は、相続そのものではなく、“毎月の支払いが止まらない状態”を先に作ることです。
緊急時の優先順位(現場の鉄則)
- 最優先:施設費・家賃・光熱・医療など、生活の継続に直結する支払い
- 次:連絡窓口(きょうだい・親族・支援者)を一本化
- その次:相続手続き(凍結解除、遺産分割、名義変更など)
※相続手続きは大事ですが、通常は数週間〜数か月の時間がかかります。生活費は待ってくれません。
1. 解決事例:凍結で施設費が止まったが“支払いルート”を確保できた
ここからは、個人が特定されないよう調整した再現事例です。ポイントは「難しい手続き」より、正しい順番で、支払いの通り道を作ったことにあります。
状況
- 父が急逝。成人の子(精神・知的の特性あり)は、入所施設(またはグループホーム)を利用中
- 施設費の引落口座が父名義。振替日直前に銀行から「口座取引停止(凍結)」の扱いに
- 施設から「未払いになると手続きが必要」と連絡。家族はパニック状態
詰まりポイント(よくある)
- 相続手続きはすぐ終わらない
- 子本人の署名・契約が難しい場面があり、手続きが止まりやすい
- きょうだいが遠方で動けない/誰が払うか決まっていない
緊急対応でやったこと(ここが勝ち筋)
- 施設へ先に連絡:「支払いが一時的に止まる」ことを共有し、督促のタイミングと代替手段(振込/窓口支払い)を確認
- “今月分”は家族が立替:領収書・振込記録を残し、後日精算できる形にした
- 翌月以降の支払い口座を切替:子本人名義の生活口座を新設(または既存口座)し、施設の引落先を変更
- 予備費の置き場を確保:年金・手当の入金先と、引落口座(固定費用)を分け、最低2〜3か月分をプール
- 並行して、凍結口座の相続手続きに着手(時間がかかる前提で“生活”を先に固めた)
結果として、施設側の不安(未払いリスク)を早期に解消でき、本人の生活も継続。
家族も「相続手続きが終わるまでの間、どう回すか」が明確になり、話し合いが前向きに進みました。
2. 口座凍結の基本:いつ・なぜ止まり、何が止まる?
2-1. 口座が止まるタイミング
口座凍結(取引停止)は、多くの場合銀行が死亡の事実を把握した時点で起こります。
「いつ銀行に伝わるか」はケースで違いますが、緊急対応では“止まる前提”で動くのが安全です。
2-2. 止まると困るもの(施設費だけじゃない)
凍結で影響が出やすい固定費
- 施設費・グループホーム費・家賃
- 電気・ガス・水道・携帯・ネット
- 医療費(口座振替・カード引落)
- 保険料
- 本人の小遣い・日用品費の引出
2-3. 「相続の凍結解除」と「生活費の確保」は別物
ここが一番の落とし穴です。凍結解除(相続手続きによる払戻し)は、相続人の確定・書類整備・合意が必要で、時間がかかります。
一方、施設費は毎月発生します。だから緊急時は、“凍結解除を待たずに払えるルート”を先に作る、という発想が重要です。
3. 緊急対応マニュアル:48時間でやる順番(誰が・何を)
「何から?」を迷わないための、実務順の手順です。上から順にやってください。
-
STEP 1
施設へ連絡(最優先)
誰が:家族の代表(連絡窓口になる人)
いつ:判明した当日(遅くとも翌日)
どこで:施設の相談員・事務担当
何を:「口座凍結で引落が止まる可能性」「今月分の支払い方法(振込/窓口)」「猶予の可否」「次月以降の引落変更の手続き」
ポイント:“未払い”になる前に相談すると、施設側も動きやすくなります。 -
STEP 2
今月分の支払いを確定(仮でもOK)
選択肢:家族立替/別口座からの振込/一時的に手渡し等(施設のルールに合わせる)
必須:領収書・振込記録・メモ(後で精算の根拠になります) -
STEP 3
支払いの“次月以降”を設計(これが本丸)
誰が:家族代表+施設事務(必要に応じて支援者)
何を:引落口座を「親名義」から「子本人名義(または継続可能な口座)」に切替/振込固定化/支払い代行の仕組み検討 -
STEP 4
銀行へ確認(“できること/できないこと”を整理)
確認すること:凍結の状況/必要書類の一覧/相続手続きの流れ/(ある場合)相続預金の一部払い戻し・仮払いの可否と要件
注意:電話口で情報が錯綜しやすいので、担当者名・日時・回答要旨をメモ。 -
STEP 5
家族内で「連絡窓口」と「支払い担当」を決める
「誰が電話する?」「誰が立替える?」が曖昧だと、施設も銀行も動けません。
窓口1人・実務2人(予備含む)くらいで役割を固定すると回りやすいです。
ここが分岐点
施設費が止まったとき、相続手続きに突入する前に、「支払いの回路」を作る。
“今月”と“来月以降”を分けて考えると、パニックになりにくくなります。
4. 支払いルートの選択肢:現場で使う7つの方法
ご家庭ごとに最適解は違います。ここでは、緊急対応で使われやすい「支払いルート」を、早い順(実装しやすい順)に整理します。
| 方法 | 中身 | 向いている | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 家族が一時立替(振込・窓口) | とにかく今月を止めたくない | 必ず記録と領収(後で揉めない) |
| 2 | 施設の引落先を子本人名義口座へ変更 | 本人の収入(年金・手当等)で回る | 口座新設・届出に時間がかかることがある |
| 3 | 子本人名義の「支払い専用口座」を作り、固定費を集約 | 再発防止も一緒にしたい | 財布(小遣い)と支払い口座を分離すると安定 |
| 4 | (ある場合)相続預金の一部払い戻し・仮払いの活用 | 立替が難しい/現金が足りない | 上限・要件あり。銀行ごとに運用差があるため要確認 |
| 5 | 死亡保険金の受取を生活費に充当 | 保険があり、受取人が明確 | 受取までの時間・税務の確認は必要(ただし比較的早いことが多い) |
| 6 | 預託金・立替用の“緊急資金”を先に用意(生前設計) | 今後の不安を減らしたい | どこに置くか(名義・管理者)設計が重要 |
| 7 | 信託などで「毎月支払う仕組み」を作る(生前設計) | 支払いの自動化・長期の安定 | 受託者の適任と監督(見える化)が必須 |
緊急時に“やりがち”だけど危ない対応
「親のキャッシュカードで引き出して払う」は、状況によって深刻なトラブルになります。
まずは施設と相談し、正規の支払い手段(振込・窓口・口座変更)で通しましょう。
5. 手続きの流れ:1週間〜1か月で“止まらない体制”にする
緊急対応(今月を払う)で呼吸ができたら、次は「来月以降も止まらない体制」に作り替えます。
ここでは、生活の支払いを安定させることに絞って、やる順番を示します。
5-1. 1週間以内:支払いの“窓口”を固定する
- 施設の連絡窓口を1人に固定(電話・メール・緊急連絡先)
- 支払い方法を「当面これでいく」と決める(振込/窓口/新口座引落)
- 本人の収入の入金先(年金・手当)と、固定費の引落口座を整理する
- 支払いの予備費(最低2〜3か月分)をどこに置くか決める
5-2. 2〜4週間:支払い口座を“本人中心”に組み替える
-
STEP 1
支払い専用口座を決める(原則:子本人名義)
固定費(施設費・家賃・光熱)をこの口座に集約。小遣いの出入口と分けると、未払い事故が減ります。 -
STEP 2
施設へ口座変更届(必要書類を確認)
引落の反映はタイムラグがあるため、「いつから新口座になるか」を必ず確認し、移行月は二重払い・未払いに注意。 -
STEP 3
入金(年金・手当・就労収入)を“月次計画”に合わせる
2か月に1回入金のものもあるため、月割りで資金繰りを組むと安心です。 -
STEP 4
相続手続きは並行で進める(生活は止めない)
相続人の確定・書類収集・合意形成に時間がかかるケース(本人が署名困難等)では、後見・日常生活自立支援・信託などの検討が必要になることがあります。
参考:相続手続きが止まりやすい「意思能力・署名」の論点がある場合は、先に“判断と手続きの担い手”を整理しておくと、生活費の不安も減ります。
(関連記事は後半で紹介します)
6. チェックリスト:施設・銀行・家族で確認すること
6-1. 施設に伝えること(テンプレ感覚でOK)
- 事実:保護者が亡くなった/意思表示が難しくなった(状況に応じて)
- 連絡窓口:氏名・続柄・電話・メール(緊急連絡先も)
- 支払い:現行の引落が止まる可能性/当面の支払い手段(振込・窓口)
- 次月以降:口座変更の相談(必要書類・締切日・反映時期)
- 本人の生活:不安定化を防ぐための配慮(面会・連絡・支援体制の確認)
6-2. 銀行に聞くこと(電話でも窓口でも)
- 凍結の状況:いつから・どの取引が停止か(引落・振込・カード等)
- 必要書類一覧:相続手続きに必要な書類(戸籍・印鑑・遺言の有無など)
- 一部払い戻し・仮払い:制度の有無、要件、上限、必要書類(運用差あり)
- 相続窓口:専用部署・予約の要否・郵送対応の可否
- 確認事項の記録:担当者名・日時・回答の要旨をメモ(後で話がズレにくい)
6-3. 家族内で決めること(ここが曖昧だと止まります)
| 役割 | 担当 | 内容 |
|---|---|---|
| 窓口 | 1名 | 施設・銀行・支援者への連絡を一本化 |
| 支払い | 1〜2名 | 今月分の立替/振込/口座変更の実務 |
| 記録 | 1名 | 領収書、振込控え、メモ、提出書類の控えを保管 |
| 予備 | 1名 | 担当が倒れた時のバックアップ(遠方でも可) |
7. 注意点:やってはいけないこと/揉めない記録の残し方
7-1. やってはいけないこと(後で“揉める火種”)
緊急時ほど、次の行為は避けてください
- 親の死亡後に、親のキャッシュカード・暗証番号で勝手に引き出す
- 家族の口座で支払ったのに、領収書・振込記録を残さない
- 施設との合意なく「払うから待って」と口約束だけで進める
- 誰が窓口か決めず、施設に別々の人が電話して情報が混乱する
意図が善意でも、相続の場面では「使い込み」「不透明なお金」と誤解されやすく、きょうだい間の不信につながります。
7-2. 立替を“安全に”する3点セット
- ① 記録:いつ・いくら・誰が・何のために(施設費○月分)
- ② 証拠:領収書/振込控え/明細(スクショでも可)
- ③ 合意:家族内で「立替は後で精算する」方針をメモ(短文でOK)
7-3. 本人が署名できない場合の“詰まり”は先に想定
施設費の支払い変更や、相続手続きの途中で、本人の署名・同意が求められる場面があります。
そのときに止まらないよう、「判断と手続きの担い手」(家族・支援者・後見等)を早めに整理しておくと、支払いの不安も減ります。
8. よくある失敗例(緊急時ほど起きがち)
- 失敗①:施設に連絡せず未払い → 事務手続きが増え、本人も不安定に
- 失敗②:今月分だけ払って安心 → 次月以降の口座変更が間に合わず、また止まる
- 失敗③:立替の証拠がなく、きょうだい間で「誰がいくら払った?」が揉める
- 失敗④:本人の収入(年金・手当)の入金先が親口座のままで、宙に浮く
- 失敗⑤:相続手続きに突入して疲弊 → 生活の支払いが後回しになり、優先順位が逆転
失敗を防ぐ合言葉
「施設へ先に共有」→「今月を払う」→「来月以降の口座を作る」
この3段階を分ければ、緊急時でも整理して動けます。
9. Q&A(親御さんが止まりやすいポイント)
Q1. 施設に「払えない」と言うのが怖いです…
「払えない」と言う必要はありません。言うべきは、“支払い方法が一時的に変わる”という事実です。
施設は未払いを一番嫌います。だから「当面は振込に切替」「口座変更を進める」など、支払いの見通しを示せると、話がスムーズになります。
Q2. 子本人名義の口座に切替えるのが不安です(管理できない)
その不安は自然です。ポイントは、「支払い専用口座」と「日常の財布(小遣い)」を分けることです。
支払い専用口座は固定費だけを扱い、カードや引出のルールを絞ると、事故が減ります。必要に応じて、支援者・家族・制度(後見等)の活用も検討します。
Q3. 相続手続きが進まず、凍結解除の見通しが立ちません
だからこそ、生活費は「凍結解除を待たずに回す」設計が必要です。
相続手続きが止まる理由が、本人の署名困難・きょうだいの不一致などの場合、合意形成(家族会議)や、制度の使い分け(後見・日常生活自立支援等)を整理すると進みやすくなります。
Q4. 立替をしたら、後で返してもらえますか?
返してもらえる可能性はありますが、「当然に返る」と思うと揉めます。
立替は、記録・証拠・家族内の合意があると、精算がスムーズになります。相続財産から精算する場合は、相続人間での整理も必要です。
Q5. 親の口座が凍結しても、引落は続くことがありますか?
状況によっては“たまたま続く”こともありますが、続く前提で設計するのは危険です。
緊急時は「止まる前提」で支払いルートを作り替えた方が、結果的に安心です。
10. 再発防止:凍結しても支払いが止まらない設計
今回の経験は、つらい出来事ですが、ここから先の不安を減らすきっかけにもできます。
再発防止は「制度の知識」より、支払いの仕組みづくりが中心です。
止まらない設計の5点セット(実務で効く)
- ① 支払い専用口座:固定費はここ(本人の財布と分ける)
- ② 予備費:最低2〜3か月分をプール(施設費・医療費の優先)
- ③ 連絡窓口:施設・相談支援・家族の連絡先を一本化(緊急連絡カード化)
- ④ 月次資金計画:年金・手当など入金タイミングを月割りで整える
- ⑤ 仕組みの検討:必要なら信託・後見・死後事務などを組み合わせる
“完璧な制度設計”より、“止まらない支払い”を先に作る方が、家族の安心に直結します。
11. 関連記事(内部リンク)
📞 ご相談はこちら
「施設費が止まりそう」「口座変更が間に合わない」「本人名義口座の運用が不安」「相続手続きが止まって凍結が長引いている」など、
“緊急の支払い”と“止まらない仕組み”を分けて、最短で立て直すお手伝いをします。
☎ 0120-905-336
相談時にあるとスムーズ:施設の請求書/引落口座情報/本人の年金・手当の入金先/家族の連絡先メモ/今月分の支払い状況