【保存版】親が亡くなった後に必要な手続き|障害のある子がいる家庭の1週間・1か月・1年ロードマップ
親が亡くなった後は、死亡届、葬儀、年金、健康保険、銀行、相続など、多くの手続きが同時に発生します。
障害のある子がいる家庭では、それに加えて、 住まい・食事・服薬・通院・福祉サービス・障害年金・毎月の支払い を止めないための対応が必要です。
最初からすべてを完璧に進める必要はありません。
まずは、 障害のある子の今日の生活を守ること から始め、その後に期限のある相続手続きを進めていきましょう。
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親が亡くなった直後は、悲しみや混乱の中で多くの判断を求められます。
しかし、障害のある子がいる家庭で最初に優先するべきなのは、銀行口座の解約や不動産の名義変更ではありません。
最優先するのは、
- 本人が今夜どこで過ごすか
- 食事・服薬・通院を誰が支えるか
- 福祉サービスや通所を継続できるか
- 家賃・光熱費・通信費などの支払いが止まらないか
- 困ったときに連絡できる支援者がいるか
という本人の生活の継続です。
一般的な相続手続きの記事では、死亡届、銀行口座、相続税、不動産登記などが中心に説明されます。
もちろん、これらの手続きも重要です。
しかし、障害のある子がいる家庭では、親が亡くなったその日から、
- 親が準備していた薬が分からない
- 通所先や相談支援専門員の連絡先が分からない
- 本人の生活費が親名義の口座から引き落とされている
- 実家の名義が親のままで、今後住み続けられるか分からない
- 本人が相続人になるものの、遺産分割協議を理解できるか不安
- きょうだいが突然、生活支援と相続手続きを任される
といった問題が重なります。
そのため、本記事では、 「親が亡くなった後の相続手続き」だけではなく、「親が亡くなった後も障害のある子の生活を止めないための手続き」 を、時系列で整理します。
- 親が亡くなった当日から1週間以内に行うこと
- 死亡後1か月以内に確認する役所・年金・保険・銀行手続き
- 3か月・4か月・10か月の重要な期限
- 障害のある子の住まい・医療・福祉サービスの引継ぎ
- 親名義で支払っていた生活費の確認方法
- 障害のある子が相続人になる場合の注意点
- 成年後見・特別代理人などを検討する場面
- 死亡後1年間で整えたい生活・相続・支援体制
- ① まず結論|最優先は「相続」より本人の生活を止めないこと
- ② 親が亡くなった当日に確認すること
- ③ 死亡後1週間以内に行う手続き
- ④ 死亡後2週間から1か月以内に行う手続き
- ⑤ 3か月以内|相続放棄・限定承認を判断する
- ⑥ 4か月以内|準確定申告が必要か確認する
- ⑦ 10か月以内|相続税申告・納税を確認する
- ⑧ 1年以内|名義変更・生活支援・財産管理を整える
- ⑨ 障害のある子の住まいをどうする?
- ⑩ 障害年金・手当・福祉サービスはどうなる?
- ⑪ 親名義の口座・公共料金・生活費を確認する
- ⑫ 障害のある子が相続人になる場合の遺産分割
- ⑬ 成年後見・補助・特別代理人が必要になる場面
- ⑭ きょうだい・親族・支援者の役割分担
- ⑮ 親の死亡後に起こりやすい失敗例
- ⑯ 1週間・1か月・1年ロードマップ一覧
- ⑰ 保存版チェックリスト
- ⑱ 関連記事(内部リンク)
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① まず結論|最優先は「相続」より本人の生活を止めないこと
親が亡くなると、家族はすぐに葬儀、死亡届、相続財産、銀行口座などを考え始めます。
しかし、障害のある子がいる家庭では、 本人の生活支援を確保してから、期限のある手続きを順番に進める ことが重要です。
| 優先順位 | 確認すること |
|---|---|
| 第1優先 | 本人の住まい、食事、服薬、通院、日中活動、緊急連絡先 |
| 第2優先 | 死亡届、葬儀、健康保険、年金、勤務先などの死亡直後の手続き |
| 第3優先 | 親名義の支払い、公共料金、家賃、本人の生活費の確認 |
| 第4優先 | 遺言書、相続人、預貯金、不動産、保険、借金の調査 |
| 第5優先 | 相続放棄、遺産分割、準確定申告、相続税、名義変更 |
金融機関が口座名義人の死亡を知ると、原則として口座からの払戻しや引き落としが止まります。
親名義の口座から、
- 実家の家賃
- 電気・ガス・水道
- 携帯電話・インターネット
- 本人の医療費
- グループホームや施設費用
- 保険料
などを支払っていた場合は、早めに契約名義と引落口座を確認しましょう。
ただし、死亡後に故人のキャッシュカードや暗証番号を使って安易に引き出すと、相続人間のトラブルや相続放棄への影響が問題になることがあります。
② 親が亡くなった当日に確認すること
親が亡くなった当日は、すべての手続きを進める必要はありません。
まずは、死亡に関する初動と、障害のある子の生活確保を行います。
本人が今夜どこで過ごすかを決める
親と障害のある子が二人で暮らしていた場合、本人が一人で実家に残ることが安全かを確認します。
- 一人で食事・服薬・入浴・就寝ができるか
- 夜間に不安やパニックが起きる可能性があるか
- 火の元、戸締まり、金銭管理に不安がないか
- 緊急時に電話やメッセージで助けを求められるか
- 親族、短期入所、グループホームなどの支援が必要か
服薬・医療情報を確認する
薬を親が管理していた場合は、薬の名前、飲む時間、薬局、次回通院日を確認します。
- お薬手帳
- 現在飲んでいる薬
- 主治医・病院・薬局の連絡先
- アレルギーや副作用
- 不調やパニックが起きたときの対応
相談支援専門員・通所先へ連絡する
相談支援専門員、グループホーム、生活介護、就労先、訪問看護など、本人の生活を知っている支援者へ早めに連絡します。
親の死亡によって、本人の生活・送迎・支払い・住まいに影響が出ることを伝えましょう。
医師・葬儀社・親族への連絡
- 死亡診断書または死体検案書を受け取る
- 葬儀社へ連絡する
- 親族・勤務先・関係者へ連絡する
- 本人に死亡の事実をどう伝えるか支援者と相談する
本人の障害特性によっては、親の死亡を一度に理解することが難しい場合があります。
曖昧に「遠くへ行った」「眠っている」と伝えると、混乱が続くことがあります。
本人の理解力に合わせ、短い言葉、写真、予定表などを使いながら、信頼できる支援者と一緒に説明することが大切です。
③ 死亡後1週間以内に行う手続き
死亡後1週間以内は、死亡届や葬儀に関する手続きと、本人の生活を継続するための連絡を中心に行います。
| 手続き | 主な内容 | 障害のある子がいる場合の注意点 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 死亡の事実を知った日から原則7日以内に市区町村へ提出 | 通常は葬儀社が提出を代行することも多い |
| 火葬許可 | 死亡届と併せて申請することが多い | 本人が葬儀へ参加するか、支援者の同伴が必要か確認する |
| 葬儀・納骨 | 葬儀社、寺院、霊園等と調整 | 本人の特性に応じ、刺激や待ち時間への配慮を行う |
| 親族・関係者への連絡 | 家族、勤務先、福祉関係者などへ連絡 | 本人の生活支援に関わる人を優先して連絡する |
| 遺言書の確認 | 公正証書、自筆証書、法務局保管の有無を確認 | 家庭で保管された自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認が必要 |
| 生活費の確認 | 家賃、光熱費、食費、医療費等を確認 | 親名義口座からの引落しが止まる可能性に備える |
封印された自筆証書遺言を見つけた場合、家庭裁判所での検認前に勝手に開封しないよう注意します。
一方、公正証書遺言や法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた遺言書は、原則として検認が不要です。
- 本人が現在どこで暮らしているか
- 相談支援専門員・通所先・主治医の連絡先
- 本人の障害年金・給与・工賃
- 親が負担していた本人の費用
- 親名義の家賃・公共料金・通信契約
- 遺言書の有無
- 借金・保証・未払いの可能性
④ 死亡後2週間から1か月以内に行う手続き
葬儀後は、健康保険、年金、公共料金、銀行、保険などの手続きを少しずつ進めます。
一度に全部行おうとせず、 期限があるもの、本人の生活に影響するものから優先 しましょう。
| 分野 | 確認する手続き |
|---|---|
| 健康保険 | 資格喪失、保険証の返却、葬祭費・埋葬料の申請 |
| 年金 | 年金受給権者死亡届、未支給年金、遺族年金の対象確認 |
| 介護保険 | 介護保険被保険者証の返却、保険料の精算 |
| 勤務先 | 死亡退職金、給与、社会保険、会社の弔慰金等を確認 |
| 生命保険 | 死亡保険金の受取人・請求方法を確認 |
| 公共料金 | 電気、ガス、水道、通信、NHK等の名義・口座変更 |
| 金融機関 | 残高証明書、取引履歴、相続手続き書類を確認 |
| 不動産 | 固定資産税通知書、登記事項、住宅ローン、賃貸借契約を確認 |
| 相続人調査 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集する |
- 実家の電気・ガス・水道
- 本人が利用する携帯電話・インターネット
- 家賃・管理費
- グループホーム・施設費用
- 通院費・薬代
- 本人の食費・交通費
親名義の契約をそのままにすると、死亡後に突然利用停止や引落不能になることがあります。
生命保険金は、契約で指定された受取人が保険会社へ請求するのが基本です。
民法上の遺産とは別に扱われることが多い一方、相続税では「みなし相続財産」として課税対象になる場合があります。
また、受取額や他の相続財産との関係によっては、相続人間の公平や遺留分をめぐる問題が生じることもあるため、個別に確認しましょう。
⑤ 3か月以内|相続放棄・限定承認を判断する
相続放棄は、原則として、 自分のために相続が開始したことを知った時から3か月以内 に家庭裁判所へ申述する必要があります。
相続財産には、預貯金や不動産だけでなく、借金、未払金、保証債務などのマイナス財産も含まれます。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 単純承認 | プラス財産もマイナス財産もすべて承継する |
| 相続放棄 | 相続人としての地位を放棄し、原則として財産も負債も承継しない |
| 限定承認 | 相続によって得た財産の限度で債務を負担する |
相続放棄を検討している場合、故人の預金を自分のために使ったり、財産を売却・処分したりすると、単純承認をしたと扱われる可能性があります。
葬儀費用や保存行為などは個別事情によって判断が異なるため、借金や保証が疑われる場合は、財産に手を付ける前に専門家へ相談しましょう。
- 預貯金・証券口座
- 不動産・共有持分
- 生命保険・個人年金
- 住宅ローン・カードローン
- 税金・社会保険料の未払い
- 賃料・施設費・医療費の未払い
- 連帯保証・事業上の債務
- 個人間の借入れ
財産調査に時間がかかり、3か月以内に判断できない場合は、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てられることがあります。
⑥ 4か月以内|準確定申告が必要か確認する
親が年の途中で亡くなり、所得税の確定申告が必要な場合は、相続人が準確定申告を行います。
期限は原則として、 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内 です。
- 個人事業をしていた
- 不動産賃貸収入があった
- 複数の勤務先から給与を受けていた
- 一定額を超える年金収入やその他の所得があった
- 株式・不動産の売却所得があった
- 前年分の確定申告を提出する前に亡くなった
一方、給与や公的年金の状況によっては、準確定申告が不要なこともあります。
医療費控除や源泉徴収税額によって還付を受けられる場合もあるため、源泉徴収票、医療費、保険料、不動産収入などを確認しましょう。
準確定申告は、相続人が連署して提出する方法や、各相続人が別々に提出する方法があります。
障害のある子が相続人であり、申告内容の理解や意思表示に不安がある場合は、税務手続きの進め方について税理士等へ確認してください。
⑦ 10か月以内|相続税申告・納税を確認する
相続税の申告が必要な場合、原則として、 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内 に申告・納税します。
すべての家庭に相続税がかかるわけではありません。
まず、相続財産の合計が基礎控除を超えるかを確認します。
- 預貯金・現金
- 不動産
- 株式・投資信託
- 自動車・貴金属・貸付金
- 死亡保険金や死亡退職金
- 一定の生前贈与
- 借金・未払金・葬式費用
障害のある相続人が一定の要件を満たす場合、相続税の障害者控除を利用できることがあります。
控除額は、相続人の年齢、障害の区分、過去の控除利用状況などによって異なります。
本人の相続税額から引き切れない場合、一定の扶養義務者の相続税額から控除できることもあります。
相続税申告が必要かどうかも含め、早めに税理士へ確認しましょう。
相続人間の話し合いがまとまらなくても、相続税の申告期限は原則として10か月のままです。
未分割の状態で一度申告し、その後に修正申告や更正の請求を検討する場合があります。
障害のある相続人が参加する遺産分割では、本人の意思確認や代理の問題に時間がかかることがあるため、早めに整理することが重要です。
⑧ 1年以内|名義変更・生活支援・財産管理を整える
死亡後1年までには、相続財産の名義変更だけでなく、障害のある子の生活体制を安定させることを目指します。
| 分野 | 1年以内に進めたいこと |
|---|---|
| 不動産 | 遺産分割を行い、相続登記を進める |
| 預貯金・証券 | 解約・名義変更・相続人への分配 |
| 自動車 | 名義変更・売却・廃車 |
| 住まい | 実家継続、グループホーム、一人暮らしなどの方針を整える |
| 福祉 | サービス等利用計画、支給量、緊急時支援を見直す |
| 医療 | 通院・服薬を親以外の支援者へ引き継ぐ |
| お金 | 本人の収入・支出・支払方法・財産管理方法を整える |
| 支援者 | きょうだい、親族、相談支援、住まい、専門職の役割を決める |
不動産を相続したことを知った日から、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。
遺産分割がすぐにまとまらない場合は、相続人申告登記などを検討することがあります。
障害のある子に不動産を相続させる場合は、名義だけでなく、 固定資産税、修繕、管理、売却、本人の住まいとの関係 まで確認しましょう。
⑨ 障害のある子の住まいをどうする?
親が亡くなった後、最も大きな問題になりやすいのが住まいです。
本人が実家で暮らしている場合、自宅を相続すればそのまま安心して暮らせるとは限りません。
| 住まい | 確認すること |
|---|---|
| 実家で暮らす | 自宅の名義、固定資産税、修繕、食事、家事、服薬、見守り |
| グループホーム | 空き、夜間支援、金銭管理、通院、本人との相性、費用 |
| 一人暮らし | 家賃、保証、ヘルパー、訪問看護、緊急時対応、孤立防止 |
| 短期入所 | 急な住まい変更までの一時的な利用が可能か |
| 施設入所 | 必要な支援量、待機状況、医療対応、本人の希望 |
- 自宅は誰が相続するのか
- 本人が単独で相続するのか、共有になるのか
- 固定資産税を誰が支払うのか
- 修繕・火災保険・近隣対応を誰が行うのか
- 食事・掃除・洗濯・買い物を誰が支えるのか
- 将来売却が必要になった場合、誰が手続きを行うのか
障害のある子ときょうだいが実家を共有すると、将来の売却、修繕、費用負担、住み続ける期間などについて意見が分かれることがあります。
本人に判断支援が必要な場合、共有不動産の処分がさらに難しくなることもあります。
遺産分割では、「公平に共有する」ことが本当に本人の生活を守る方法かを慎重に検討しましょう。
⑩ 障害年金・手当・福祉サービスはどうなる?
親が亡くなったからといって、障害のある子本人の障害年金が当然に停止するわけではありません。
ただし、親の死亡によって世帯状況、扶養関係、健康保険、住民票、所得、住まいなどが変わると、確認や届出が必要になる場合があります。
| 制度 | 確認すること |
|---|---|
| 障害年金 | 振込口座、更新時期、診断書、住所変更、連絡先 |
| 健康保険 | 親の扶養に入っていた場合の保険切替 |
| 医療費助成 | 保険変更・住所変更による届出、医療証更新 |
| 障害福祉サービス | 受給者証、支給量、利用者負担上限、サービス等利用計画 |
| 各種手当 | 所得・世帯・扶養状況の変更による届出 |
| 生活保護 | 親の援助がなくなり生活費が不足する場合の相談 |
- 親が亡くなったこと
- 本人の住まいや生活支援が変わる可能性
- 親が行っていた通院・服薬・金銭管理
- 緊急連絡先が変わること
- 短期入所・グループホーム・居宅介護等の必要性
- 現在の支給量では足りない可能性
地域生活支援拠点等は、障害の重度化・高齢化や親亡き後を見据え、緊急時対応などを担う地域の体制です。
実際に利用できる機能や連絡先は市区町村・地域によって異なるため、自治体の障害福祉窓口や相談支援専門員へ確認しましょう。
⑪ 親名義の口座・公共料金・生活費を確認する
親が生前、障害のある子の生活費を負担していた場合、その援助がなくなると本人の生活が急に不安定になることがあります。
まず、本人の生活に必要なお金を、 親名義の支払い・本人名義の支払い・現金での援助 に分けて整理します。
| 確認項目 | 具体例 |
|---|---|
| 親名義の契約 | 家賃、電気、ガス、水道、携帯、インターネット、保険 |
| 本人名義の契約 | 携帯、家賃、福祉サービス、医療費、サブスク |
| 親が現金で負担 | 食費、交通費、衣類、趣味、通院費 |
| 本人の収入 | 障害年金、給与、工賃、手当 |
| 今後の不足額 | 親の援助がなくなった後の月額不足 |
- 毎月の障害年金・給与・工賃
- 家賃・住居費
- 食費・日用品費
- 光熱費・通信費
- 通院・薬・交通費
- 福祉サービスの実費
- 趣味・交際費
- 年間の臨時費
相続財産を本人の生活に充てる場合は、一括で渡すだけでなく、本人が安全に管理できるか、誰が支払いを支援するかも考えます。
障害年金、本人の給与・工賃、本人名義の預金は本人の財産です。
親の相続財産とは別に管理する必要があります。
きょうだいや親族が支払いを代行する場合も、入出金記録や領収書を残し、本人のために使ったことを確認できる状態にしましょう。
⑫ 障害のある子が相続人になる場合の遺産分割
障害のある子が相続人であっても、障害があるという理由だけで遺産分割協議に参加できないわけではありません。
重要なのは、本人が遺産分割の内容と結果をどの程度理解し、自分の意思を表明できるかです。
- どのような財産があるか
- 本人が受け取る財産は何か
- 不動産を取得した場合の負担
- 現金を取得した場合の管理方法
- 他の相続人が取得する財産との違い
- 協議に同意すると、後から自由に変更できないこと
難しい説明だけでは理解できない場合でも、写真、図、一覧表、短い文章を使い、時間をかけることで意思を確認できることがあります。
障害名や手帳の等級だけで「協議できない」と決めつけない ことが大切です。
「きょうだいが今後面倒を見るから」「本人はお金を使わないから」という理由だけで、障害のある本人の取得分を極端に少なくすることは、本人の権利保護の観点から問題になることがあります。
本人の生活費、住まい、財産管理、他の相続人との関係を踏まえ、本人にとって利益となる分割を検討しましょう。
⑬ 成年後見・補助・特別代理人が必要になる場面
本人が遺産分割の内容を理解して意思を示すことが難しい場合、法的な代理・支援が必要になることがあります。
ただし、 障害があるから必ず成年後見が必要になるわけではありません。
本人の判断能力、遺産分割の内容、既存の支援制度、利益相反の有無を個別に確認します。
| 状況 | 検討すること |
|---|---|
| 本人が遺産分割の内容を理解できる | 本人が自ら協議へ参加する |
| 説明方法を工夫すれば意思確認できる | 意思決定支援を行い、本人の意向を確認する |
| 重要な契約・遺産分割の判断が難しい | 成年後見・保佐・補助等の現行制度を含めて検討する |
| 本人と後見人が共同相続人 | 利益相反となる場合、特別代理人等が必要になることがある |
| 未成年者と親権者が共同相続人 | 利益相反となる場合、家庭裁判所で特別代理人を選任する |
現行制度では、相続手続きのために成年後見を開始しても、遺産分割が終わっただけで当然に終了するわけではありません。
2026年に成立した改正成年後見制度は、必要な支援を必要な範囲・期間で利用できる方向への見直しを含みますが、主要部分はまだ施行前です。
現在の相続手続きは、現行制度に基づいて判断する必要があります。
⑭ きょうだい・親族・支援者の役割分担
親が亡くなった後、きょうだいの一人が、葬儀、相続、通院、住まい、金銭管理をすべて抱えてしまうことがあります。
しかし、長期間にわたり一人ですべてを担うことは大きな負担です。
| 役割 | 担い手の例 |
|---|---|
| 本人の日常生活 | グループホーム、ヘルパー、生活介護、通所先 |
| 相談・福祉調整 | 相談支援専門員、自治体障害福祉窓口 |
| 医療・服薬 | 主治医、薬局、訪問看護、家族代表 |
| 緊急連絡 | きょうだい、親族、住まいの支援者 |
| 相続手続き | 相続人、遺言執行者、行政書士、司法書士等 |
| 税務 | 税理士 |
| 紛争・法的代理 | 弁護士、家庭裁判所で選任された代理人等 |
| 本人の財産管理 | 本人、家族、必要に応じた契約・後見制度等 |
- 緊急連絡先になることは可能か
- 定期的な見守りは可能か
- 通院・役所手続きへ同行できるか
- 財産管理や支払い確認を担えるか
- 実家の管理を担えるか
- 専門職や福祉サービスへ任せたい役割は何か
きょうだいは支援チームの一員であり、 親の代わりを一人で完全に引き受ける存在ではありません。
⑮ 親の死亡後に起こりやすい失敗例
- 相続手続きを優先し、本人の住まい・服薬・通所が後回しになる
- 親名義の口座から本人の生活費が引き落とされていたことに気付かない
- 借金を調べる前に故人の財産を処分する
- 相続放棄の3か月を過ぎてしまう
- 遺産分割が終わらず、相続税申告期限を迎える
- 障害のある本人を協議から外し、家族だけで財産を分ける
- 本人に自宅を相続させれば安心だと考える
- きょうだい一人へ生活支援と財産管理を集中させる
- 受給者証・医療証・障害年金の情報を誰も把握していない
- 親が行っていた金銭援助額を把握していない
- 成年後見を付ければ、日常生活のすべてを支援してもらえると思う
- 生命保険金は相続・税金と無関係だと思い込む
これらの失敗を防ぐためには、 生活・福祉・医療・お金・相続を別々に考えないこと が重要です。
⑯ 1週間・1か月・1年ロードマップ一覧
| 時期 | 本人の生活 | 死亡・相続手続き |
|---|---|---|
| 当日 | 居場所、食事、服薬、支援者、緊急連絡を確保 | 死亡診断書、葬儀社、親族への連絡 |
| 1週間以内 | 相談支援・通所先・主治医へ連絡 | 死亡届、火葬、葬儀、遺言書確認 |
| 2週間以内 | 生活費・公共料金・健康保険を確認 | 年金、健康保険、介護保険、勤務先等の手続き |
| 1か月以内 | 住まい、通院、福祉サービスの継続体制を整える | 戸籍収集、相続人調査、財産・負債調査、保険請求 |
| 3か月以内 | 親の援助がなくなった後の生活費を確認 | 相続放棄・限定承認を判断 |
| 4か月以内 | 税務手続きに必要な本人支援を確認 | 準確定申告 |
| 10か月以内 | 相続財産を本人の生活にどう使うか整理 | 遺産分割、相続税申告・納税 |
| 1年以内 | 住まい、医療、福祉、金銭管理、支援者を安定させる | 預金・証券・自動車等の名義変更、相続登記準備 |
- 本人の住まいが安定している
- 親以外にも本人の生活を知る支援者がいる
- 通院・服薬が継続できている
- 障害年金・給与・生活費の流れが見えている
- 家賃・公共料金・通信費の支払方法が整っている
- 相続財産の管理方法が決まっている
- きょうだい一人に負担が集中していない
- 緊急時の連絡先と役割分担が共有されている
⑰ 保存版チェックリスト
死亡直後・1週間以内
- 本人の今夜の居場所を確保した
- 食事・服薬・通院の支援者を確認した
- 相談支援専門員・通所先へ連絡した
- 死亡診断書を受け取った
- 死亡届・葬儀の手続きを進めた
- 遺言書の有無を確認した
1か月以内
- 健康保険・年金・介護保険を確認した
- 葬祭費・埋葬料・未支給年金を確認した
- 本人の生活費と親名義の支払いを確認した
- 電気・ガス・水道・通信の名義を確認した
- 被相続人の戸籍収集を始めた
- 預貯金・不動産・保険・借金を調べた
3か月・4か月・10か月
- 相続放棄・限定承認の必要性を確認した
- 準確定申告が必要か確認した
- 相続税申告が必要か確認した
- 障害者控除の対象を確認した
- 遺産分割における本人の意思確認方法を整理した
- 成年後見等の法的支援が必要か確認した
1年以内
- 本人の住まいを安定させた
- 障害年金・手当・福祉サービスを確認した
- 生活費・支払い・口座管理を整えた
- 医療・服薬情報を支援者へ共有した
- 相続財産の名義変更を進めた
- 不動産の相続登記を確認した
- 支援者リストと緊急連絡網を作成した
- きょうだい・親族の役割を具体化した
⑱ 関連記事(内部リンク)
親が亡くなった後、障害のある子がいる家庭では、一般的な相続手続きだけでは足りません。
まず優先するべきなのは、 本人の住まい・食事・服薬・通院・福祉サービス・生活費を止めないこと です。
そのうえで、
- 1週間以内に死亡届・葬儀・支援者への連絡
- 1か月以内に年金・保険・公共料金・財産調査
- 3か月以内に相続放棄の判断
- 4か月以内に準確定申告の確認
- 10か月以内に相続税申告の確認
- 1年以内に住まい・財産管理・支援者体制の安定
を順番に進めます。
障害のある子が相続人になる場合も、障害名だけで手続きを決めるのではなく、本人の理解力、意思、生活上の利益を丁寧に確認することが大切です。
親の死後の手続きの本当の目的は、相続を終わらせることだけではなく、障害のある本人がその後も安心して暮らせる状態を作ること です。
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