親が60代になったら始めたい親亡き後対策|障害のある子の生活を守る準備ロードマップ

📞 親が60代になり、障害のある子の将来が気になり始めた方へ

親が60代になると、まだ元気で動ける一方で、 「この子の生活を、いつまで自分たちだけで支えられるのか」 という不安が少しずつ現実味を帯びてきます。

親亡き後対策は、親が亡くなる直前に始めるものではありません。 60代のうちに、住まい・お金・医療・福祉サービス・支援者・相続を整理しておくことで、将来の混乱を大きく減らせます。

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障害のある子どもを持つ親御さんにとって、60代は大きな節目です。

まだ仕事をしている方もいれば、定年退職が近づいている方、親自身の健康や介護が気になり始める方もいます。

一方で、障害のあるお子さまは成人し、就労先や通所先、グループホーム、通院、障害年金、福祉サービスなど、ある程度生活の形が見えてきている時期でもあります。

だからこそ、60代は親亡き後対策を始めるのに非常に重要な時期です。

この時期に必要なのは、いきなり成年後見や家族信託を決めることではありません。

まずは、 親が今していることを見える化し、親以外にも引き継げる形に変えていくこと です。

この記事では、親が60代になったら始めたい親亡き後対策について、障害のある子の生活を守るためのロードマップとして整理します。

この記事で分かること
  • 親が60代で親亡き後対策を始めるべき理由
  • 最初に整理するべき生活・お金・支援者の全体像
  • 住まい、医療、福祉サービスを止めない準備
  • 障害年金・手当・生活費・親の財産の整理方法
  • 遺言、家族信託、任意後見、成年後見を検討する順番
  • きょうだい・親族に負担を集中させない支援者チームの作り方
  • 60代のうちに始める1年ロードマップ

① 60代は親亡き後対策の「準備適齢期」

親亡き後対策というと、親が80代になってから、あるいは体調を崩してから考えるものだと思われがちです。

しかし、実務上は、 親が60代のうちに準備を始める家庭ほど、選択肢を広く持てます。

理由は大きく3つあります。

理由 内容
親がまだ動ける 見学、相談、書類整理、家族会議、専門家相談を進めやすい
本人の生活を試せる グループホーム見学、一人暮らし練習、支援者との関係づくりができる
制度設計を見直せる 遺言、家族信託、任意後見、財産管理などを急がず比較できる
親が倒れてからでは遅いことがあります

親が入院した、認知症が進んだ、急に介護が必要になった、という段階になると、時間的にも精神的にも余裕がなくなります。

その結果、住まいを急いで探したり、相続手続きが進まなかったり、障害のある子の生活費や通院が止まりそうになったりすることがあります。

60代は、まだ親自身が判断し、話し合い、行動できる可能性が高い時期です。

② まず確認する3つの柱|生活・お金・支援者

親亡き後対策では、制度を調べる前に、次の3つを整理することが大切です。

柱1|生活

本人は、親がいなくても日常生活を続けられるか

食事、洗濯、掃除、通院、服薬、移動、買い物、スマートフォン、困ったときの相談先など、日常生活に必要な支援を確認します。

柱2|お金

毎月の収入と支出は見えているか

障害年金、手当、給与、工賃、親からの援助、家賃、食費、医療費、福祉サービスの実費などを、月額で整理します。

柱3|支援者

親以外に、本人の生活を知っている人がいるか

きょうだい、親族、相談支援専門員、主治医、薬局、訪問看護、通所先、グループホーム、見守り先など、役割ごとに支援者を分けます。

制度は3つの柱を整理してから選ぶ

成年後見、任意後見、家族信託、遺言、財産管理契約、見守り契約などは重要です。

しかし、生活・お金・支援者が曖昧なまま制度だけを作っても、本人の生活は安定しません。

まずは、本人の暮らしを具体的に支える仕組みから考えましょう。

③ 親が今していることを全部書き出す

親亡き後対策の出発点は、親が今していることを見える化することです。

親にとっては当たり前のことでも、本人やきょうだい、支援者には分からないことが多くあります。

親がしていること 具体例
お金 通帳管理、年金確認、家賃・光熱費支払い、生活費の補填
医療 通院予約、同行、主治医への説明、薬の管理
福祉サービス 相談支援専門員との連絡、受給者証更新、事業所との調整
住まい 掃除、洗濯、食事、買い物、大家・管理会社対応
緊急時 体調不良、パニック、入院、施設からの連絡対応
家族間調整 きょうだいへの説明、親族との連絡、将来の話し合い

書き出すときのコツ

  • 毎日していること
  • 毎週していること
  • 毎月していること
  • 年に数回していること
  • 緊急時だけしていること

この5つに分けると、抜け漏れを減らせます。

親しか知らない情報が一番危険

通帳の場所、薬の内容、相談支援専門員の連絡先、受給者証の更新時期、本人が落ち着く声かけなどを、親だけが知っている状態は危険です。

親が急に入院しただけで、本人の生活が止まってしまう可能性があります。

④ 住まいを考える|実家・グループホーム・一人暮らし

親亡き後対策で最も大きなテーマの一つが住まいです。

親が60代のうちは、まだ実家での生活が安定していることも多いでしょう。

しかし、 「今は大丈夫」でも、「親が入院した後」「親が亡くなった後」も同じ生活が続けられるとは限りません。

住まい 向いているケース 注意点
実家で暮らす 本人が住み慣れた環境で安定している 親の死亡後の管理、固定資産税、修繕、相続、生活支援
グループホーム 地域で暮らしながら、生活支援や見守りを受けたい 空き状況、本人との相性、夜間支援、金銭管理、通院対応
一人暮らし 本人に希望があり、必要な支援を組み合わせられる 家賃、支払い、孤立、服薬、緊急時対応、保証人問題
親族同居 親族との関係が安定し、支援の継続性がある きょうだい・親族に負担が集中しやすい
施設入所 常時の支援や医療的・介護的な支援が必要 待機状況、本人の希望、地域とのつながり、費用
60代のうちに始めたい住まい準備
  • 実家以外の住まいの選択肢を知る
  • グループホームを見学する
  • ショートステイや短期入所を必要に応じて体験する
  • 実家での生活を続ける場合の支援体制を確認する
  • 住まいが変わった場合の生活費を試算する
  • 相談支援専門員に地域資源を確認する

⑤ お金を整理する|障害年金・生活費・親の援助

親が60代になったら、まず本人の毎月のお金の流れを整理しましょう。

相続でいくら残すかを考える前に、 今の生活で毎月いくら必要で、親がどの費用を負担しているのか を確認することが重要です。

収入 確認すること
障害年金 受給額、更新時期、診断書、口座、所得確認
給与・工賃 月ごとの変動、体調不良時の収入減、交通費
手当・助成 対象要件、所得制限、更新・届出の必要性
親からの援助 家賃、食費、医療費、通信費、趣味費など何を負担しているか
支出 具体例
生活費 食費、日用品、衣類、交通費、通信費
住居費 家賃、固定資産税、管理費、光熱費、修繕費
医療費 通院、薬、診断書、自立支援医療、入院時費用
福祉サービス関連 食費、日用品費、送迎、利用に伴う実費
臨時費 引越し、家電、入院、冠婚葬祭、更新手続き
親の援助を「見えない収入」にしない

親が毎月、何となく食費や医療費を出している場合、その支援がなくなった後に生活費が不足することがあります。

親が負担している金額を一度書き出し、 親がいなくなった後も支払いが続けられるか を確認しましょう。

⑥ 財産管理を考える|本人のお金と親の財産を分ける

親亡き後対策では、本人のお金と親の財産を分けて考えることが大切です。

本人の障害年金や給与、工賃は本人のお金です。 親の預貯金、不動産、保険、投資資産は親の財産です。

この2つを曖昧にしたままにすると、相続時や財産管理の場面でトラブルになりやすくなります。

お金の種類 考えること
本人の日常生活のお金 年金、給与、工賃、生活費、支払い、通帳管理
本人の将来資金 医療費、引越し費用、家電、臨時費、予備費
親の現在の財産 親自身の老後資金、介護費、医療費、生活費
相続で残す財産 誰に何を残すか、誰が管理するか、何に使うか
親の財産を考える順番
  • まず親自身の老後資金・介護費を確保する
  • 次に障害のある子の生活費不足を確認する
  • きょうだい・相続人との公平感を整理する
  • 遺言・家族信託・保険・財産管理の必要性を検討する
  • 財産を「渡す」だけでなく、「管理する人」を決める
多く残せば安心、とは限りません

障害のある子に多額の財産を残しても、本人が管理できない場合や、詐欺・使いすぎ・親族間トラブルのリスクがある場合があります。

大切なのは、 いくら残すかではなく、本人の生活のために誰がどう管理し、どう使うか です。

⑦ 支援者チームを作る|きょうだい一人に背負わせない

親亡き後対策でよくある誤解が、 「将来はきょうだいにお願いすればよい」 という考え方です。

もちろん、きょうだいが重要な支援者になることはあります。

しかし、日常生活、通院、金銭管理、福祉サービス、緊急時対応、相続手続きまでを一人に背負わせると、長く続かない可能性があります。

役割 担い手の例
日常生活 グループホーム、ヘルパー、生活介護、就労先、通所先
福祉サービス 相談支援専門員、自治体窓口、事業所
医療・服薬 主治医、薬局、訪問看護、家族代表
お金・支払い 本人、家族、財産管理の仕組み、必要に応じた専門職
緊急時対応 きょうだい、親族、住まいの支援者、見守り先
相続・法律 行政書士、司法書士、税理士、弁護士など必要に応じた専門家
支援者リストに入れる内容
  • 氏名・所属・連絡先
  • 本人との関係
  • 担当している役割
  • 緊急時に連絡する順番
  • 本人が安心する対応・苦手な対応
  • 親が不在のときにお願いしたいこと

⑧ 医療・服薬・緊急時対応を親だけの仕事にしない

親亡き後対策では、相続やお金に目が向きやすいですが、実際に困りやすいのは医療と緊急時対応です。

親が毎回通院に付き添い、薬を管理し、主治医へ状況を説明している場合、親が急に動けなくなると医療支援が止まる可能性があります。

整理する情報 具体例
医療機関 病院名、診療科、主治医、診察券、予約日
薬の名前、飲む時間、薬局、一包化、副作用
体調変化 不調のサイン、悪化しやすい状況、落ち着く対応
通院支援 一人受診、家族同行、ヘルパー、訪問看護
緊急時 救急時の連絡先、入院時の持ち物、支援者への連絡順
医療同意は後見制度だけで解決しません

成年後見、任意後見、見守り契約などを準備しても、すべての医療行為について当然に同意できるわけではありません。

実務では、本人の希望、家族の連絡先、主治医、医療機関、支援者との情報共有が非常に重要です。

⑨ 福祉サービス・受給者証・相談支援を見直す

60代の親亡き後対策では、現在使っている福祉サービスが将来も続けられるかを確認する必要があります。

本人の障害特性や生活状況は変わらなくても、親の高齢化、住まいの変更、通院頻度、就労状況によって必要な支援量は変わることがあります。

確認すること ポイント
受給者証 有効期限、支給量、自己負担上限、サービス種別
相談支援専門員 親亡き後を見据えた支援計画になっているか
日中活動 就労先、B型、生活介護、自立訓練などが本人に合っているか
住まい支援 グループホーム、居宅介護、短期入所、見守りの可能性
緊急時支援 親が入院した場合に、本人を一時的に支える体制があるか
相談支援専門員に聞いておきたいこと
  • 親が急に入院した場合、どこへ相談すればよいか
  • 短期入所や緊急時の受け入れ先はあるか
  • グループホームの見学や体験利用は可能か
  • 本人の支給量は今の生活に合っているか
  • 親亡き後を見据えたサービス等利用計画になっているか

⑩ 遺言・家族信託・任意後見・成年後見の検討順序

親が60代になると、法律制度の準備も現実的になります。

ただし、いきなり「成年後見が必要か」「家族信託をするべきか」と制度名から考えると、かえって迷いやすくなります。

おすすめは、次の順番で考えることです。

順番 考えること
1.生活 本人はどこで、誰に支えられて暮らすのか
2.お金 毎月いくら必要で、どの収入でまかなうのか
3.親の財産 親自身の老後資金を確保したうえで、何を残せるのか
4.管理者 残した財産を、誰が管理し、何に使うのか
5.制度 遺言、家族信託、任意後見、成年後見、財産管理契約を比較する
制度 主な役割 注意点
遺言書 親が亡くなった後、誰に何を残すかを決める 財産を残した後、誰が管理するかも考える
家族信託 親の財産を、本人の生活費などに使う管理ルールを作る 生活支援や医療同意をすべて代替する制度ではない
任意後見 本人や親が元気なうちに、将来の代理人を契約で決める 公正証書が必要。本人の判断能力があるうちに検討する
成年後見・補助 本人の契約・財産管理に法的支援が必要な場合に検討 障害があるだけで自動的に必要になる制度ではない
死後事務委任 親の死亡後の葬儀・役所・施設・支払いなどを依頼する 相続や財産承継とは別に考える必要がある
2026年改正後も、制度だけで生活は完成しません

成年後見制度は、今後、本人に必要な支援を必要な範囲・期間で使う方向へ見直されます。

しかし、制度改正後も、食事、掃除、通院、服薬、見守り、住まいの支援は別途必要です。

法律制度と福祉サービスを切り離さず、生活全体で設計することが大切です。

⑪ 家族会議で決めておきたいこと

親が60代のうちに、きょうだい・親族と少しずつ話し合っておくことも大切です。

ただし、最初からすべてを決めようとすると、重い話になり、話し合いが進まないことがあります。

まずは、次のようなテーマから始めましょう。

テーマ 話し合う内容
本人の生活 今の生活、困っていること、本人の希望
親の役割 親が毎日・毎月していること
きょうだいの関わり 緊急連絡、見守り、手続き、財産管理をどこまで担えるか
住まい 実家、グループホーム、一人暮らし、施設の候補
お金 生活費、親の援助、相続財産、管理方法
親の希望 本人にどのように暮らしてほしいか、財産を何に使ってほしいか
「将来はお願いね」だけでは足りません

きょうだいに支援をお願いする場合も、何を、どの頻度で、どこまでお願いするのかを具体化する必要があります。

きょうだいは支援チームの一員であり、本人の生活をすべて背負う存在にしないことが大切です。

⑫ 60代から始める1年ロードマップ

最初の1か月|現状を見える化する

  • 親が本人のためにしていることを書き出す
  • 本人の収入・支出・口座・支払いを一覧にする
  • 医療・福祉・通所・住まいの連絡先を集める
  • 本人ができること・支援があればできることを整理する
  • 重要書類の保管場所を家族で共有する

3か月以内|支援者と住まいを確認する

  • 相談支援専門員と親亡き後の不安を共有する
  • グループホームや住まいの選択肢を調べる
  • 通院・服薬・緊急時対応を親以外にも共有する
  • 支援者リストと緊急連絡網を作り始める
  • きょうだい・親族と最初の家族会議を行う

6か月以内|お金と財産を整理する

  • 住まい別の生活費を試算する
  • 親が現在負担している費用を確認する
  • 親自身の老後資金・介護費を整理する
  • 本人に残せる財産と、管理方法を考える
  • 遺言・家族信託・任意後見・財産管理の必要性を相談する

1年以内|実際の仕組みにする

  • 必要に応じて遺言書を作成する
  • 家族信託や任意後見を具体的に検討する
  • 支援者リスト・支援者ノートを完成させる
  • 親が入院した場合の初動対応を決める
  • 年1回、生活費・住まい・支援者・制度を見直す日を決める
1年後の目標

1年で親亡き後対策をすべて完成させる必要はありません。

まずは、 親が急に支えられなくなっても、本人の生活がすぐ止まらない状態 を作ることが目標です。

⑬ よくある失敗例

  • 親が60代でも「まだ早い」と考え、何も整理しない
  • 通帳・薬・受給者証・連絡先を親だけが管理している
  • 実家で暮らし続ける前提で、親の入院後を考えていない
  • きょうだいに将来すべて任せるつもりでいる
  • 障害年金だけで生活できるか確認していない
  • 親の財産をどのように残すか決めていない
  • 遺言書だけ作り、財産管理や生活支援を考えていない
  • 成年後見や家族信託だけで生活全体が解決すると考えている
  • 本人の希望を聞かず、家族だけで住まいや将来を決める

これらの失敗は、早めに情報を整理し、家族・福祉・医療・専門職とつながることで防ぎやすくなります。

⑭ 保存版チェックリスト

生活

  • 本人の1日の流れを説明できる
  • 本人ができること・支援が必要なことを整理した
  • 親がしている支援を一覧にした
  • 親が入院した場合の生活支援先を考えた

お金

  • 障害年金・手当・給与・工賃を一覧にした
  • 毎月の支出と臨時費を整理した
  • 親が負担している費用を書き出した
  • 親の老後資金と、本人に残せる財産を分けて考えた

住まい

  • 実家で暮らし続ける場合の課題を確認した
  • グループホームや一人暮らしの選択肢を調べた
  • 住まいが変わった場合の生活費を試算した
  • 相談支援専門員に地域資源を確認した

支援者・医療

  • 支援者リストを作成した
  • 主治医・薬局・通所先・相談支援専門員の連絡先をまとめた
  • 服薬内容・通院予定・緊急時対応を記録した
  • きょうだい・親族と役割分担を話し合った

法律・相続

  • 遺言書の必要性を検討した
  • 家族信託・任意後見・成年後見の違いを整理した
  • 財産を誰が管理するか考えた
  • 親の死後事務や相続手続きの担当を検討した

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まとめ

親が60代になったら、親亡き後対策は「いつか考えること」ではなく、 今から少しずつ整えること になります。

最初にやるべきことは、制度を選ぶことではありません。

本人の生活、お金、住まい、医療、福祉サービス、支援者を整理し、親が今担っている役割を少しずつ周囲に引き継げる形にしていくことです。

そのうえで、遺言、家族信託、任意後見、成年後見、死後事務委任などを、本人と家族の状況に合わせて組み合わせていきます。

親が元気な60代のうちに準備を始めることが、障害のある子の将来の安心につながります。


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